猫の認知症の正しい知識【獣医師が解説】

猫の寿命はここ数十年で飛躍的に伸びてきております。

猫も高齢化の時代になり、それに伴って増えている病気がいくつかありますが、その一つが認知症。

猫が認知症になってしまうと、今までできたことができなくなるだけでなく、性格が変化してしまったり、どんどん弱ってしまうこともあります。

さまざまな病気によって起こる認知症の症状。

今高齢の猫を飼っている人も、これから愛猫が高齢になる人も、猫の老後に備えて認知症について知っておいてくださいね。

 

認知症とは

認知症とは、認知機能が落ちてしまう病気のことです。

認知症の症状

認知症では認知機能の低下により以下のような症状が起こることが多いです。

無駄鳴き

認知症になってしまった猫では、無目的にいつも以上に大きな声で鳴くことがあります。

特に夜中に無駄鳴きをしてしまい、飼い主さんが困ってしまうことが多いようです。

発情の鳴き声て間違えてしまうほど激しく鳴く猫もいます。

トイレを使わない

認知症に陥ると、それまでできていたトイレのしつけがうまくいかなくなることがあります。

膀胱炎や胃腸炎などの病気でもトイレがうまくいかなくなることがありますが、認知症でもトイレ以外の場所に粗相をしてしまうことが増えてきます。

昼夜逆転

認知症では、昼に寝ている時間が多くなり、夜に起きているという昼夜逆転現象もよく見られます。

角にはまり込む

角にはまってしまい、脱出できないというのも認知症の一つの症状です。

認知症の猫では、飼い主さんが家に帰ってきたら、部屋の過度に頭を付けてひたすら鳴いていたということが時々ありますので、注意が必要です。

周囲への興味の低下や反応の低下

認知症になると、今まで好きだったものに対して興味を失ったり反応が薄くなったりします。

昔なら好きだった遊びを全くしなくなったり、撫でても嫌がってどこかへ行ってしまうなどといったことも起こります。

異常に甘える

高齢になると、認知症でなくても甘えがひどくなるケースがありますが、異常な甘えも認知症の症状の一つです。

飼い主さんにずっと付きまとったり、かまってもらえるまで鳴きやまないなどといったこともあります。

食欲の低下や異常な食欲

認知症によって満腹中枢の機能に異常が起こると、食欲に異常が出て来ることがあります。

食欲は低下するケースが多いですが、時に異常に食欲が増して食べ過ぎてしまい、嘔吐や胃拡張を引き起こすこともあります。

認知症は突然起こることも徐々に悪化することもある

猫の認知症については、まだはっきりわかっていない部分が多いです。

また、認知症を起こす基礎疾患によってもその症状や進行具合は違ってきます。

また、症状は突然起こることも、老化とともに徐々に症状が現れることもあります。

また、いったん落ち着いたと思ったらまた再発するということもあり、その診断はなかなか難しいことも多いです。

 

認知症の原因

認知症には、以下のような原因があると考えられています。

老化

老化に伴い、脳の血管の変性などにより、脳の血流低下から認知症が引き起こされることがあります。

高血圧:心不全・腎不全・甲状腺機能亢進症など

猫には血圧が高くなる病気が多く存在します。

高血圧があると、脳血管の変性が進んだり、脳出血を起こしたりするため、認知症と同じような症状を起こすことがあります。

高齢の猫に多い心不全・腎不全・甲状腺機能亢進症などがあると、血圧が上がるってしまうことが多いため、認知症のリスクは高くなります。

脳腫瘍

脳腫瘍があっても認知機能に異常が起こり、認知症のような症状を発症します。

高齢の猫で認知症のような症状が出た場合には、脳腫瘍の可能性も考えておかないといけません。

脳腫瘍があると、数週間~数カ月かけて徐々に症状が重症化し、けいれんや突然死などを引き起こすこともあります。

老化による認知症に比べると、脳腫瘍による認知症の症状は急速に進むことが多くなります。

代謝性疾患

腎不全や肝不全などがあると、体の中に老廃物が溜まってしまい、脳神経の異常から認知症の症状が出て来ることがあります。

また、カルシウムやナトリウムなど神経伝達に関係するイオンバランスが崩れてしまっても認知症のような症状が起こります。

代謝性疾患があると、認知症の症状以外に元気や食欲が落ちてくることが多いです。

また、代謝性疾患があると、無治療の場合にはそのまま亡くなってしまうこともあります。

 

認知症の治療方法

認知症はその原因により治療方法が異なります。また、治療のためには動物病院だけでなく家での介護なども大切になります。

動物病院での治療

動物病院では以下のような治療を行います。

進行を防ぐためのサプリメントやビタミン剤

高齢に伴う老化現象の一つとして認知症が出てきてしまった場合には、根本的な治療を行うことは難しくなります。

そのため、脳の老化を防ぐようなサプリメントを飲ませることでそれ以上の進行を防いだり、脳神経にいいとされるビタミン剤を使っていくことが多くなります。

認知症の進行を防げる可能性があるのは、DHAやEPAなどオメガ3脂肪酸が含まれるサプリメントです。

これらの成分には、細胞の老化の原因とされる酸化を防ぐ効果が期待されており、脳細胞の老化により引き起こされる認知症の進行を抑えてくれる可能性があります。

また、ビタミン剤の中でもビタミンB(特にビタミンB6やB12)には神経の保護作用があると考えられており、認知機能の改善のために必要な栄養素だと言われています。

サプリメントやビタミン剤には副作用がほとんどなく、気軽に飲ませることができますが、劇的な効果があるというものではありません。

認知症を起こす原因となる病気の治療

認知症の症状を起こす原因となる病気がある場合には、その治療をすることで症状が改善することがあります。

高血圧があれば血圧を下げる薬やホルモンを抑える薬の投与、腎不全や肝不全があれば点滴やお薬などを使うなど、原因疾患の治療を行うことである程度症状が改善することがあります。

特に甲状腺機能亢進症の場合には、甲状腺ホルモンを抑制する薬の投与により症状が劇的に改善することが多いです。

脳腫瘍がある場合は手術や放射線療法などが必要になることもあります。

睡眠薬の投与

昼夜逆転してしまい、近所迷惑になったり飼い主さんが寝れないなど大きな問題が起きてしまう場合には、獣医師との相談の上、軽い睡眠薬を使うこともあります。

ただし、睡眠薬は腎臓や肝臓に負担をかけてしまうことが多いため、最終手段だと考えてください。

家での療養

認知症の猫を飼う場合、家での療養も非常に重要となります。

認知症の猫は以前までできていたことができなくなってきます。

そのため、トイレやお水、食餌のケアなど、今まで必要なかったケアをしてあげないといけないこともあります。

何ができなくなるのかは猫によって違いますので、お家の猫の状態に合わせてケアをしてあげましょう。

また、できるだけ段差をなくしたり、階段を使わなくてよくしてあげるなども大切です。

高さがあるとつまずいて強い舞う猫もいますので、トイレは縁が低いものを選ぶといいでしょう。

それから、猫が入り込んで動けなくなるような角を無くし、場合によってはエンドレスサークル(角のない円形のサークル)を用意してあげるといいでしょう。

また、昼夜逆転してしまう猫の場合には、昼にできるだけ起こしておくことも大切です。

フードを時間をかけて食べるための知育玩具や、一人で遊べるようなおもちゃの使用などによって昼間に寝てしまわないようにしておくことで、昼夜逆転の症状を少しでも改善できることがあります。

進行を遅らせる行動

認知症の進行を遅らせるためには、原因となる病気の治療を行うことが大切です。

また、高齢になったら抗酸化作用のあるサプリメントや抗酸化成分が多く含まれるフードを食べさせてあげるのもおすすめです。

さらに、ヒトの分野では、五感に対する刺激が認知症を遅らせるという報告があります。

猫でも同じであると考えられますので、毎日同じ生活をさせず、少し刺激的な生活を送らせてあげるといいかもしれません。

以下のようなことを試してあげましょう。

  • エサを隠して探させる
  • キャットウォークなど高い場所を歩ける場所を作る(落下事故に注意)
  • 外の景色が見える場所を作る
  • ブラッシングなどをこまめに行う
  • できるだけ遊んであげる
 

早期発見方法

認知症の早期発見のためには、普段から猫の様子をしっかり見ておくとともに、スキンシップを取っておくことをおすすめします。

認知症は日ごろの行動の変化から出て来ることが多いです。

以下のような点に変化があった場合には認知症の初期症状の可能性があります。

  • 飲水量
  • 尿量
  • 食べるスピード
  • 鳴き方
  • 歩き方
  • 抱っこへの反応
  • 寝ている時間の長さ
  • 寝る時間帯の変化

お家で時間がある時には、猫の様子をしっかり観察するようにして下さい。

認知症の予防

認知症を確実に予防できる方法はありません。

日頃のフードに気を付けて、高血圧を引き起こす肥満を防止したり、塩分を取り過ぎないようにすることは大切です。

また、7歳以上のシニアになったら年に1度は健診を受けておくことをおすすめいたします。

病気を早期発見し、認知症の症状が起こる前に治療を始めるのも、認知症の予防のためには大切です。

まとめ

獣医療の発展や猫用のフードの改善により、15年以上長生きできる猫も当たり前になってきました。

そんな中で問題になるのが猫の認知症。猫の認知症は、その原因や症状、治療法は様々あります。

また、認知症になってしまっても家の環境を考えてあげることで、猫も飼い主さんも快適に生活できることは少なくありません。

猫が高齢になった時に避けては通れない認知症。しっかり理解して正しい対応ができるようにしておいてくださいね。

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