愛犬のためにステロイドの正しい知識を!【獣医師が解説】

動物の病気の治療には薬が必要になりますが、副作用のない薬は存在しません。

薬の中でも「ステロイド」と聞くと、副作用が強いイメージが強く、与えるのに抵抗がある飼い主さんは多いようです。

しかし、ステロイドは動物の治療薬として非常に良く使われるお薬であり、ステロイドなしで治療できない病気も多いです。

そんな重要性の高いステロイドですが、果たして本当に怖い薬なのでしょうか?

今回は、動物病院で処方される薬「ステロイド」の正しい知識を身に着けていただくための記事です。

やみくもに怖がらず、ステロイドと上手う付き合えるよう、愛犬のためにもステロイドについて理解を深めておきましょう。

 

ステロイドとは

ステロイドという名前は有名ですが、どのような薬であるのかは意外に知らない飼い主さんは多いようです。

まずはステロイドの概要についてお話いたします。

ステロイドとは?

ステロイドとは、共通の特定の構造を持つ物質の総称であり、ステロイドに分類される物質はかなりたくさんあります。

糖質コルチコイドというホルモンをステロイドと呼ぶことが多い

ステロイドの中でホルモン作用を持つ物質をステロイドホルモンと呼び、ステロイドホルモンにはテストステロンやアンドロゲンなどの「性ホルモン」や、鉱質コルチコイドや糖質コルチコイドなどの「副腎皮質ホルモン」があります。

一般的にステロイドと言った場合には、糖質コルチコイドのことを指していることが多いです。

この記事でも、ステロイド=糖質コルチコイドとしてお話しさせていただきます。

ステロイドは体がストレスに対応するために必要

糖質コルチコイドを含む副腎皮質ホルモンは、腎臓の近くの小さな臓器である副腎から分泌されるホルモンです。

このホルモンは体の中で常に作られており、さまざまな働きを持っています。

特に大切な作用が、体をストレスなどから守ることです。

さまざまなストレスを受けても副腎皮質ホルモンが十分あれば、体がうまく反応できますが、副腎皮質ホルモンがうまく分泌できなくなる病気「アジソン病」ではストレスによって下痢や嘔吐、低血糖、虚脱などの症状が起きてしまうことがあります。

ステロイドは怖い薬なのか?

一般に「ステロイド」と聞くと、怖い薬だと感じる飼い主さんはとても多いようです。

しかし、動物病院では病気の治療のためにステロイドはなくてはならない薬であり、非常によく使用される薬の一つです。

ステロイドには以下のような特徴があります。

犬や猫はステロイドホルモンに非常に強い

人に比べ、犬や猫はステロイドホルモンへの耐性が高くなっています。

人と同じ量のステロイドを使っても、耐性の強い犬や猫で副作用が出る割合は非常に低いです。

用量・投与期間によってリスクは違う

ステロイドホルモンの副作用は、長期的に高用量の薬を使うことで出やすくなります。短期間や低用量での使用では、副作用の発生率は非常に低いです。

つまり、犬や猫には、用法や用量に気を付けることで、比較的安全にステロイドを使うこともできるのです。

 

ステロイドが良く用いられる病気や症状

ステロイドにはいくつかの働きがあり、以下のような目的で使用されることが多いです。

かゆみを抑える

ステロイドホルモンは、痒みを抑える働きが強いです。即効性もありますので、早く痒みを止めてあげたい時には非常に有効になります。

用いられる病気の例

痒みを伴う病気:アトピー・アレルギー性皮膚炎・ノミアレルギーなど

痛みを抑える

ステロイドホルモンには痛みを抑える働きもあるため、痛み止めとして使うことも少なくありません。

病気の例

痛みを伴う病気:椎間板ヘルニア・口内炎・関節炎・悪性腫瘍など

炎症・免疫を抑える

ステロイドホルモンには炎症や免疫を抑える働きがあります。炎症や免疫を抑えて調節するために使われることも多いです。

病気の例

  • 炎症を伴う病気:アレルギー・アナフィラキシー・脳炎など
  • 免疫の病気:免疫介在性溶血性貧血・炎症性腸疾患・多発性関節炎など

その他

その他ステロイドは以下のような目的で使われることがあります。

  • ショックの治療・予防
  • 脳浮腫の軽減
  • 低血糖の予防(インスリノーマなど)
 

ステロイドの副作用とは?

では、具体的にステロイドにはどのような副作用があるのでしょうか?代表的なものを見ておきましょう。

多飲多尿

お水を飲む量や尿の量が増える「多飲多尿」は、ステロイドの使用によってみられる最も一般的な副作用です。

ただし、多飲多尿はステロイドの投薬を中止すれば速やかに消失しますし、動物の体に悪影響を与える副作用ではありません。

多飲多尿が起こるかどうかは動物による個体差が激しいと言われています。

低用量のステロイドでも非常に強い多飲多尿が出るケースもありますし、あまり飲水量や尿量が変わらない犬もいます。

余りに多飲多尿がひどく困ってしまうようであれば、用量を調節できるかどうか獣医師に相談してみましょう。

易感染性(いかんせんせい)

ステロイドホルモンには免疫を抑える働きもあるため、ステロイドを飲むことにより感染症に弱くなることがあります。

特にステロイドの長期投与によって易感染性を引き起こしやすく、膀胱炎や皮膚炎などが引き起こされることがあります。

ステロイドを長期投与している場合には、皮膚や尿の状態などをしっかりチェックしておくことも大切です。

脱毛

ステロイドホルモンの長期投与により、皮膚が薄くなってしまったり毛の成長サイクルが乱れ、毛が薄くなることがあります。

特に体幹の毛が左右対称に薄くなる場合には、ステロイドホルモンの副作用による脱毛である可能性が高くなります。

糖尿病

ステロイドホルモンは、インスリンによる血糖値の低下作用を阻害してしまう「インスリン抵抗性」を引き起こす薬です。

短期であれば問題ありませんが、長期的な投与により糖尿病を起こしてしまうことがあります。

特に、口内炎の猫で長期作用型のステロイドの投与を受けている猫では要注意です。

肝臓への負担

ステロイドは内臓、特に肝臓への負担が大きい薬になります。

短期間や低用量での使用の場合は問題になることは少ないですが、長期投与や高用量の使用の場合には肝臓への負担が強くなることがあります。

定期的な血液検査などで肝臓への負担をチェックしてもらうといいでしょう。

 

ステロイドを上手に使うには?

では、ステロイドと上手く付き合っていくためには、どのようにしたらいいのでしょうか?

必要な量を必要な期間だけ

ステロイドホルモンは、うまく使えば非常に有効性の高い薬です。大切なのは、必要な量の薬を必要な期間だけ使うことです。

必ず獣医師の指示通りに

自分の判断でステロイドホルモンを増量したり、だらだら続けていると、副作用のリスクは高まります。

獣医師の指示に従って使うことで、より効果的に、副作用少なくステロイド剤を使うことができます。

定期的に動物病院を受診する

特に皮膚や口内炎などの慢性的な病気にステロイドを使用している場合には、薬だけ処方してもらい、診察はほとんど受けないという人も少なくないようです。

ですが、ステロイドは長期投与をすることで副作用のリスクが高くなりますので、必ず定期的に動物病院を受診し、目に見えにくい副作用が出ていないかどうかをチェックしてもらう必要があります。

ステロイドの長期使用をしている場合には、血液検査による血糖値や肝臓の数値のチェックなど、定期的な健康診断が必要になってきます。

体重や被毛の状態に注意

ステロイドの影響により、体重が減ったり増えたり、体型が変化したり、毛の状態が悪化することが多いです。

ステロイドを飲んでいるときは特に、愛犬の体調に変化がないかどうかをしっかり観察して、何か変化があれば早めに動物病院に相談しましょう。

ステロイドの使用時によく見られる間違った行動

ステロイドを処方された飼い主さんがよくやってしまう間違った行動には、以下のようなものがあります。

投薬を途中でやめてしまう

ステロイドは怖いから途中でやめてしまったという飼い主さんも多いようです。

しかし、そのせいで病気がうまく治らなかったり、すぐに再発してしまうこともあります。

また、ステロイドの反応を見たうえで治療方針を決めていくという場合も多く、勝手にやめたり減量してしまうことで診断に影響を及ぼし、治療方針が間違ってしまうこともあります。

また、長期投与していたステロイドをいきなりストップすると、体が変化に追いつけず、重大な体調不良を起こしてしまうこともあります。

ステロイドの投薬を、自分の判断でやめてしまうことは絶対にしないようにしましょう。

ステロイドの投薬に不安がある場合には、必ず動物病院で納得できるまで話を聞くようにしてください。

それでも不安があれば、セカンドオピニオンを受けることをおすすめします。

他の動物に処方されたステロイド(人のステロイド)を飲ませてしまう

他の動物や人に処方されたステロイドを、同じような症状だからと言って自分の判断で飲ませてしまう飼い主さんもいるようです。

しかし、自己判断によるステロイド投与は、感染症などステロイドの投与をしてはいけない病気を悪化させてしまうことがあります。

ステロイドは必ず動物病院で処方してもらったうえで飲ませるようにしましょう。

民間療法を取り入れてしまう

ステロイドが怖いからと言って、サプリメントや健康食品のようなものを自己判断で与えてしまう飼い主さんも少なくないようです。

しかし、動物病院で処方されていないものを与えると、病状の悪化や薬の効果の減弱などの悪影響が出てしまうことがあります。

ステロイドを使う時のポイント

ステロイドを使う時に知っておくべきポイントは以下の2つです。

用法・用量を守る

効果も副作用も強い薬ですので、ステロイドを使う場合には指示された用法や用量をしっかり守ることが大切です。

そうすることが、副作用のリスクを減らし、最大の効果を得るための鍵となります。

短期間・低用量であれば副作用は少ない

ステロイドには副作用がいろいろありますが、短期間あるいは低用量の投薬では副作用が多い薬ではありません。

ステロイドを処方された場合には、どのくらいで再診を受けたり副作用のチェックが必要なのか、何に気を付けるべきなのかをしっかり聞いておきましょう。

まとめ

ステロイド剤は動物病院では日常的に使われる薬です。

「ステロイド=怖い」というのではなく、しっかり用法用量を守れば非常に有用な薬ですので、その副作用や注意点をしっかり理解しておくことが大切です。

ステロイドには、痛みや痒みなど、愛犬のQOL(生活の質)を下げてしまうような症状を緩和してくれるなど、愛犬のためにもなる薬です。

もちろん注意が必要な薬ではありますが、この記事を参考にしてステロイドについて理解し、やみくもに怖がらないようにしてくださいね。

何か不安がある場合には、必ずかかりつけの動物病院で相談するようにしましょう。

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