人と犬で違う!塩分の必要量と危険性【獣医師が解説】

「塩分の取り過ぎは健康に悪い」―――人の世界では常識のように言われてます。

犬にも同じことが言えますが、犬はどの程度の塩分が必要なのでしょうか?

ドッグフードだけを与える場合には、犬の塩分についてあまり考える必要はありません。

しかし、犬におやつを与えたり、場合や手作り食を作ったりする場合には、塩分についてしっかり考えておく必要があります。

今回は、塩分必要量や塩分過剰のリスクなど、犬と塩分について一緒に勉強してみましょう。

犬に塩は必要か?

塩は塩化ナトリウムであり、塩素とナトリウムの化合物になります。

塩素やナトリウムは、犬の体にとって水分の保持や細胞間の神経伝達に必要な物質であり、ヒトと同じく犬にも必要栄養素の一つです。

犬には塩分は良くないというイメージを持つ方もおられるかもしれませんが、ドッグフードには犬に必要な量の塩分は含まれています。

ドッグフードに含まれる塩分は「ナトリウム」と書いてあるもののグラム数や%を参考にしてください。

犬が塩を舐めてしまったら

犬が塩を舐めてしまった場合、どうしたらいいのでしょうか?

少量であれば問題ない

塩は犬にも必要な栄養素であり、犬が少しでも食べたら中毒を起こすというものではありません。

少量であれば特に何かする必要はありませんので、できるだけ水分を取らせて様子を見てあげてください。

大量に食べてしまった場合は動物病院へ

犬は人に比べて塩分の必要用量が少ない動物であり、大量に食べると食塩中毒を起こしやすい動物です。

犬が塩をたくさん食べてしまった場合や醤油など塩分の多いものを大量に飲んでしまった場合には動物病院に連絡してください。

特に若齢の動物や心臓や腎臓に病気を持った動物では塩分過剰は危険なことがありますので、注意をしてください。

犬と人の塩分摂取量の比較

ではここからは、犬と人ではどの程度食塩摂取量について考えてみましょう。

一般的に人の場合、1日の塩分量は成人で5g程度に抑えるようにという目標があります。

ただし、実際のところ日本人の食塩摂取量の平均は約10gとなっているようです。

一方、犬の塩分必要量はAAFCOによると0.08%となっています。

多くの成犬用ドッグフードの塩分含有量は0.2~0.5%となっており、50㎏の犬では1日約500gのフードを食べますが、その中にはナトリウムは1~2.5g(塩分で2.5~6g)含まれています。

つまり、通常のドッグフードを与えている場合、犬は人の1/4~半分程度の食塩しか摂取していないことになります。

犬は肉球以外で汗をかくことはありませんので、塩分の取り過ぎは腎臓や心臓への負担が強くなってしまうことがあります。

手作りご飯を作るときの注意

ドッグフードには、人が食べるご飯よりも塩分が少なくなっています。

犬の祖先である狼は、味付けなどをせずに肉を食べていませんし、犬は塩味(しょっぱさ)を感じる味覚がないとも言われています。

そのため犬に与える手作り食には、塩での味付けの必要性はそれほどありません。

つまり、ヒトがおいしいと感じる塩分量を使ってしまうと、犬にとっては塩分過剰になってしまう可能性があります。

また、しょうゆやみそなどにも多くの塩分が含まれているため、それらの調味料で味付けをする場合にも、塩分の量には注意が必要です。

少量の塩などで味付けするのは悪くはありませんが、犬に手作りフードを与えるときには基本的に薄味にしておくことが大切です。

塩を飲ませて吐かせる処置は危険

インターネットで検索すると、「犬が異物を誤飲した場合には、ティースプーン1杯の塩で吐かせましょう」という記事を見かけることがあります。

しかし、これは食塩中毒を起こす可能性のある非常に危険な行為です。

食塩中毒とは

食塩を一度に多く摂取すると、体内のナトリウム濃度が異常に高くなる高ナトリウム血症を引き起こします。これが食塩中毒の原因です。

体重1㎏あたり2g以上の食塩は中毒症状を起こし、4g以上で致死量になると言われています。

ティースプーン杯の食塩は大体5~6gくらいに相当しますので、2-3㎏程度の小型犬に飲ませると、食塩中毒の危険が出てきます。

食塩中毒を起こすと、嘔吐や下痢などの消化器症状の他、ふらつきやけいれんなどの神経症状が出ることがあります。

強い神経症状が出てしまうと、そのまま亡くなってしまうこともあります。食塩中毒は非常に危険であり、塩を飲ませて吐かせることは絶対におすすめできません。

吐かせるために食塩を飲ませるのはNG

インターネット上の記事を信じて、「異物を食べてしまったから食塩を飲ませたが吐かないので連れて来た」という飼い主様が時々来院することがありますが、そうなると非常に厄介です。

動物病院では通常、吐かせた方がいいものを食べてしまった場合には、催吐剤を使って吐かせます。

食塩は使いません。食塩を使って吐かなかった場合、異物による体調不良だけでなく食塩中毒による状態の悪化などのリスクがあり、点滴や入院治療が必要になるケースもあります。

異物を食べてしまった場合には、家で対処せず、必ず動物病院へ連絡してください。

最近では夜間でも診療可能な夜間病院もありますし、動物病院によっては夜間対応している病院もあります。

自己判断で食塩を飲ませないで、まずは動物病院に電話連絡するようにしましょう。

まとめ

塩は犬にとって必要な栄養素ではあるものの、味付けしたものを食べない犬には多くの塩分は必要ありません。

犬の塩分摂取量は、普段人が食べている量の半分以下であると考えていただいた方がいいでしょう。

塩分の過剰は腎臓や心臓に負担をかけ、犬が長生きするのを妨げてしまうことがあります。

犬は塩味を感じず、タンパク質のうまみなどを感じてフードを食べますので、手作り食を作る時には塩分過多には十分注意してくださいね!

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ABOUTこの記事をかいた人

後藤大介

岐阜大学農学部・獣医学科(現応用生物科学部・共同獣医学科 ) 卒業。大阪・北海道の動物病院に勤務し、2018年、岐阜市にアイビーペットクリニックを開業。生まれ育った地元で、ペットと家族の幸せのためのお手伝いをしたいと考えています。病気の治療だけでなく、ペットの健康のための情報発信や、地域の飼い主さん同士が交流できるような動物病院を目指しています。