愛猫を守るために知っておきたい危険な猫パルボウイルスの特徴と予防法【獣医師が解説】

子猫が感染すると、致死率が80%を超えるとも言われている危険なパルボウイルス。

パルボウイルスの感染力と生存力はかなり強く、通常の消毒にも抵抗するため、一度発生すると一気に広がってしまう事の多い危険な病気です。

パルボウイルスはワクチン接種によって予防することがで切る病気ですが、残念ながら犬に比べ猫ではワクチンの接種率は高くありません。

パルボウイルス感染症を理解し、消毒やワクチンなど適切な予防方法を勉強し、愛猫をパルボウイルスから守れるようにしてくださいね。

 

猫パルボウイルスが危険な理由

猫のパルボウイルスは、感染すると猫に「汎白血球減少症」を引き起こします。

強力な抵抗力と高い致死率で、パルボウイルスは動物病院でも最も警戒されると言っても過言ではないウイルスです。

自然界で1年以上感染力を維持する抵抗力の強さ

パルボウイルスは生存力が非常に強いウイルスです。

パルボウイルスは糞便中に排泄された後もそのまま生存し、自然界ではなんと1年以上感染力を維持すると言われています。

多くのウイルスは、自然界ではあまり長く生存できません。例えば、インフルエンザウイルスは体外へ出ると48時間以内に失活すると言われています。

そのため、冬に流行したインフルエンザウイルスがそのまま生存し続け、夏に再度感染するということはありません。

HIVウイルスは体外へ出るとすぐに失活するため、HIVウイルスに感染した人と同じ食器などを使っても、感染してしまうことはありません。

一方、パルボウイルスは自然界で長期的に生存が可能で、適切な消毒をしないと感染力を維持しながら1年以上生存します。

そのため、1度パルボウイルスが発生した施設では、適切な消毒を徹底的に行う必要があります。

消毒ができていないと、最初のパルボウイルスの発生から数か月後に再度パルボウイルスが再発することも珍しくありません。

80%を超える致死率の高さ

猫パルボウイルスは非常に致死率の高い危険なウイルスです。

特に抵抗力の弱い子猫では、その致死率が80~90%と言われる非常に高い致死率が報告されています。

感染から発症まで1週間以内、発症すると数日で亡くなってしまうため、子猫の突然死の原因となることも多い病気です。

特に子猫やワクチン未接種の猫をたくさん飼っている家庭や施設では、一気にたくさんの猫が亡くなってしまうこともあるため、絶対に予防しなければならない病気です。

 

パルボウイルスに注意が必要な環境

以下のような環境では、パルボウイルスに感染する可能性が高くなりますので、注意が必要です。

野良猫との直接・間接の接触がある環境

パルボウイルスは、猫から猫へ移る病気です。そのため、野良猫が近くにやってくる環境では感染する可能性があります。

環境中にかなり長く生存しますので、数か月前の野良猫の糞など、野良猫との間接的な接触によっても感染のリスクがあります。

不特定多数の人と触れ合う環境

パルボウイルスは人の手指や衣服について運ばれることもあります。

そのため、不特定多数の人が出入りするような場所でも感染しやすくなります。

今回問題になった猫カフェも、もともと持っている猫が入ってきた可能性もありますが、お客さんの手や服からウイルスが感染した可能性もあります。

猫が多数いる環境

パルボウイルスは伝染力が強いため、多数の猫がいる環境では、パルボウイルスが一気に広がってしまうことがあります。

猫をたくさん飼っている家庭などでは、1度パルボウイルスが入り込むと、数日のうちにワクチン未接種の猫すべてに広がってしまうということもあります。

 

猫の年齢ごとのパルボウイルスのリスク

パルボウイルス感染症は、猫の年齢などの状態によってそのリスクは大きく変わります。

子猫

パルボウイルスにかかりやすいのは、免疫力がしっかりしていない子猫です。

特に2~3カ月齢の子猫では、パルボウイルスにかかりやすく、またかかってしまった場合には非常に重篤な状態に陥ることが多いです。

ワクチン未接種の子猫は最もリスクが高いため、パルボウイルスに感染しないよう十分な注意が必要です。

健康な成猫

ワクチンを打っていない場合には、健康な成猫にもパルボウイルスは感染します。

ただし、1歳以上の健康な成猫の場合には、パルボウイルス感染してもその症状は軽く、致死率も子猫に比べるとかなり低くなります。

高齢猫(病気の猫)

高齢猫や何らかの疾患を持った猫では、健康な成猫に比べて感染率、致死率ともに高くなります。

パルボウイルスの感染や致死率にはその猫の免疫力というのが非常に大きな役目を果たすので、免疫力の落ちている高齢猫や病気の猫も、パルボウイルスに注意が必要です。

 

パルボウイルスの主な症状

パルボウイルスの代表的な症状は以下の通りです。

下痢・血便・嘔吐

パルボウイルスは腸の細胞に感染し増殖します。そのため、下痢やおう吐などの消化器症状が出て動物病院に受診することが非常に多いです。

パルボウイルス感染症では、通常の胃腸炎ではあまり見られない重度の血便が出ることも多いです。

発熱

パルボウイルス感染症では、感染に対して抵抗するための白血球が減少します。

そのため、パルボウイルス感染症に細菌感染などが併発し、熱が出ることが多いです。

パルボウイルス感染症の猫では、体を触ると熱く感じたり、熱によるパンティング(口を開けてハァハァする動作)などの症状が見られることも多くなります。

胎子の異常

妊娠猫がパルボウイルスに感染すると、胎児に影響が出ます。

パルボウイルスの感染時期によって、現れる異常は異なり、妊娠初期では流産、妊娠中期では死産、妊娠後期では子猫の奇形(脳の低形成など)が起こります。

猫パルボウイルスの診断

猫パルボウイルスを疑う猫が受診した場合には、以下のような検査を行い、診断します。

検査費用は動物病院によって異なりますので、正確な費用が知りたい場合には直接動物病院に問い合わせてみて下さい。

血液検査(白血球数)

猫のパルボウイルス感染症は汎白血球減少症と呼ばれる通り、白血球の減少が起こりやすい病気です。

「白血球の減少=パルボウイルス感染症」ではありませんが、どの動物病院でもすぐにできる検査であり、白血球の減少はパルボウイルス感染症を非常に強く疑う検査所見です。

そのため、ワクチン未接種の猫で上記のような症状があり、白血球の減少が確認された場合には、パルボウイルス感染症である可能性はかなり高くなります。

通常、白血球数のチェックのための検査には、2,000円~3,000円かかります。

血清学的検査(抗パルボウイルス抗体検査)

現在、猫のパルボウイルスの検査で最も確実なのが血清学的検査です。

これは、血液の中に含まれる抗パルボウイルス抗体(パルボウイルスに対する免疫物質)の濃度をチェックする検査です。

パルボウイルスに対するIgMという抗体が高くなっている場合には、パルボウイルス感染症と診断することが多いです。

ただし、この検査は

  • 外部検査センターに血液を送る必要がある(検査に数日かかる)
  • ある程度血液の量が必要(状態の悪い子猫からは採血が難しいことがある)

というデメリットもあり、緊急的な診断・治療が必要なパルボウイルス感染症では使われないことも少なくありません。

検査費用は5,000円程度になることが多いです。

犬パルボウイルス検査キット

パルボウイルス検査キットは、糞便中に含まれるパルボウイルスのウイルスそのものを検出するための検査キットになります。

現在、犬パルボウイルスの検査キットが販売されており、猫のパルボウイルス検出できると言われているため、多くの動物病院で猫パルボウイルスの検査に用いられています。

糞便さえあれば動物病院内で短時間で検査を行うことができ、検査料金は3,000円~5,000円程度になることが多いです。

猫パルボウイルス感染症の治療方法

致死率の高い猫パルボウイルスですが、動物病院では以下のような治療を行います。

点滴・注射による支持療法

パルボウイルス感染症の治療の基本は、感染した猫の体力を落とさないようにし、猫がパルボウイルスに打ち勝つのを助けることです。

そのため、点滴による脱水の予防や電解質の補正、制吐剤や下痢止めの注射、二次感染の予防のための抗生物質の投薬が必要になります。

これらの治療は入院治療と通院治療のどちらかで行います。

致死率の高い危険な病気ですので入院による集中治療が望ましいですが、隔離施設がない病院では、院内感染の懸念が強くなるため入院治療ができない場合もあります。

インターフェロン

インターフェロンは、免疫細胞の活性を高め、抗ウイルス効果を持つ物質です。

注射の猫用インターフェロンが利用可能であり、パルボウイルスが疑われる猫に対して注射することも多いです。

内服薬

症状が軽度な成猫のパルボウイルス感染症への治療や、病院での治療が難しい場合には、内服薬による治療を行うこともあります。

内服薬にも、胃薬や下痢止め、二次感染防止のための抗生物質などが用いられることが多くなります。

パルボウイルス感染症治療中の注意点

パルボウイルス感染症の治療中には、以下のような点に注意してください。

多頭飼いの家では、隔離・消毒

ワクチンをしっかり打っている猫には感染するリスクは低いですが、同居の猫にワクチンを打っていない猫がいる場合には、感染に注意が必要となります。

そのため、多頭飼いの家で1頭の猫がパルボウイルス感染症を発症した場合には、まずはその猫を隔離をし、お世話をした後は必ず手や衣服、食器などを消毒する必要があります。

動物病院の受診に注意

パルボウイルスは非常に抵抗性の強いウイルスです。

そのため、その猫の入ったケージやそれを触った手、その手で触れたドアなどにはウイルスが付着して感染源となる可能性が高いということを理解しておく必要があります。

何も気にせずその手で他の猫を触ったり、感染猫を入れたケージを病院の待合室に持ち込むと、院内感染の原因となってしまう可能性が高いです。

そのため、パルボウイルスが疑われる猫やパルボウイルスと診断された猫を動物病院に連れて行く場合には、必ず事前に動物病院に電話連絡をし、受診時間や受診方法を指示してもらいましょう。

治ってからの消毒期間

パルボウイルス感染症では、症状が治まってくるとウイルスの排泄は一気に減ります。

ただし、少しの間ウイルスが残ることがあるので、特に多頭飼いの場合には本当にウイルスがいなくなったかどうか、糞便中のウイルスを再度チェックしてもらった方がいいでしょう。

また、パルボウイルスは環境中でかなり長い間生存します。

単独飼育やすべての猫にワクチンを打ってあればい大丈夫ですが、同居動物にワクチン未接種猫がいる場合には、パルボウイルスが治ってからも最低1~2週の間は部屋の消毒をこまめにして、残ったウイルスを完全に排除できるようにしておきましょう。

多頭飼育の施設でパルボが発生してしまった場合の対処

猫カフェやシェルターなど、かなりたくさんの猫を飼っている場所や、不特定多数の人が出入りする場所でパルボウイルスが発生してしまった場合には、できる限り早急に対処する必要があります。

まず行うべきことは、以下の通りです。

  • 感染猫の隔離
  • 他の猫の移動(健康そうに見えても感染している猫もいるので猫同士の接触は厳禁)
  • 部屋やシェルターの徹底した消毒
  • 世話をするときには猫ごとに手指の消毒
  • 不特定多数の人の出入り禁止(施設の閉鎖)

動物病院でもパルボウイルスの猫が受診した場合には、しばらくの間ワクチン未接種の猫の来院を禁止し、施設を徹底的に消毒することが多いです。

それくらい、不特定多数の猫や人が来院する場所でパルボウイルスが発生した場合には危険性が高いと理解しておいてください。

猫パルボウイルスの予防方法

パルボウイルス感染症は、治療よりも予防が大切な病気です。

予防接種

パルボウイルスの予防で最も確実な方法は予防接種(ワクチン)です。

適切なワクチン接種により、パルボウイルスに対しては100%に近い予防効果が得られます。

子猫でワクチンを打つ場合には、その接種時期が大切であり、あまり早く打ち過ぎても、ワクチンの効果を得ることができません。

生後2~4か月の間に1か月間隔で、2回のワクチン接種を行うとしっかりした免疫を付けることができると言われています。

成猫になってからは、1年に1度のワクチン接種で免疫力を維持することができます。

最近では3年に1度の予防接種でも効果があると言われていますが、猫によって免疫力の維持期間は違います。

3年に1回ワクチンを希望される場合には、免疫力を検査する抗体価検査を受け、本当に免疫力が維持できているのかを調べてもらった方がいいでしょう。

消毒

パルボウイルスは環境中に存在することもあります。

特に、猫カフェに行った後や野良猫に触った後、野良猫などの排せつ物を触った可能性がある場合には、必ず手洗いや着替えなどを済ませて猫に触るようにしてください。

これは、パルボウイルス以外にも猫風邪(猫ヘルペスウイルス)やノミなど、猫に感染するほかの病気の予防のためにも大切です。

パルボウイルス感染症の早期発見

パルボウイルスは猫の年齢やワクチン接種歴、環境によって大きくそのリスクが異なります。

特に以下のような猫に、下痢や嘔吐、血便などが見られた場合には一刻も早く動物病院に連絡して受診するようにしましょう。

  • 4カ月齢未満の子猫
  • ワクチン未接種
  • 保護したばかり
  • 多頭飼い

猫パルボウイルスに関するよくある質問

猫パルボウイルスに関し、飼い主さんによく聞かれる質問をまとめました

アルコール消毒すれば大丈夫?

パルボウイルスは、アルコール消毒には抵抗性があり、効果がないと言われています。

パルボウイルスの消毒には、塩素系の消毒薬が有効であるため、塩素系の消毒薬やハイターを希釈したもので手指や衣服、トイレや食器などを消毒するようにしてください。

パルボウイルスにもタミフルが効く?

犬や猫のパルボウイルス感染症に、インフルエンザの薬「タミフル」が効果があるという論文がいくつか出ています。

ただし、まだデータが乏しく、タミフルを安全に動物に使うための用量や用法は確立されていません。

副作用による危険性などもありますので、猫に自己判断でタミフルを投薬をしないようにしましょう。

予防接種してればパルボウイルスの心配なない?

猫パルボウイルスは、ワクチンが非常に効果のある感染症です。

ただし、まれにワクチンの効果が非常に乏しい「ローレスポンダー」と呼ばれる猫がいるようで、そういった猫ではワクチンを打っていてもパルボウイルスに感染してしまうことがあります。

ローレスポンダーの割合ははっきりしていないものの、かなり少ないとは考えれれています。

また、予防接種は一生効果のあるものではありません。

定期的に適切な予防接種をしていないと、ワクチン接種をしていても感染してしまうことがありますので、不安な方は動物病院に相談してみて下さい。

猫パルボウイルス感染症は「100%予防できるとは言えないが100%に近い予防ができる」と考えていただいていいでしょう。

野良猫に触ると伝染する?

パルボウイルスは糞便中に排泄されます。

猫の全身から出てくるわけではありませんが、その猫にパルボウイルスに感染した猫の糞便の一部が付いていたりした場合には、野良猫に触るとパルボウイルスに感染してしまう可能性があります。

そのため、野良猫すべてが危険だということではないものの、他の感染症を予防するためにも、野良猫に触った手で飼い猫を触らないようにしましょう。

猫がパルボウイルスに感染すると必ず死ぬの?

子猫では、猫パルボウイルスによる致死率は80~90%程度と言われています。

子猫では致死率は高いですが、10%程度の猫は元気に回復し、普段通りの生活に戻ることができます。

成猫でのデータは不明ですが、成猫での死亡率は多くはありません。

犬のパルボウイルスとは違うの?

犬と猫のパルボウイルスは、非常に近い種類にはなりますが、犬パルボウイルスが猫に、猫パルボウイルスが犬に感染することはないと考えられています。

ただし、犬パルボウイルスが猫パルボウイルスの変異によって発生したウイルスだとも考えられており、突然変異による感染の可能性は否定できません。

まとめ

猫パルボウイルスは、抵抗力と致死率が非常に高い危険なウイルスです。

完全室内飼いの猫でも、飼い主さんの衣服に付いたウイルスから感染してしまったり、ホテルや動物病院などで感染してしまう可能性がゼロではない病気です。

そんな怖い病気ではありますが、しっかりワクチンを打つことで100%に近い予防が可能な感染症でもあります。

今回の記事を参考に、猫パルボウイルスの危険性を理解し、愛猫を守るためワクチン接種などはしっかりしておくようにしてくださいね。

関連記事

 
 

ABOUTこの記事をかいた人

後藤大介

岐阜大学農学部・獣医学科(現応用生物科学部・共同獣医学科 ) 卒業。大阪・北海道の動物病院に勤務し、2018年、岐阜市にアイビーペットクリニックを開業。生まれ育った地元で、ペットと家族の幸せのためのお手伝いをしたいと考えています。病気の治療だけでなく、ペットの健康のための情報発信や、地域の飼い主さん同士が交流できるような動物病院を目指しています。