2016年3月5日更新

【獣医師監修】犬が中毒を起こすことも。犬が誤食してしまった場合の症状と治療について~薬品編

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犬が遭遇する中毒の中でも恐ろしいもののひとつに、薬品による中毒があります。細菌や害虫、害獣を駆除するための薬品にはたくさんの種類があります。普段の生活の中でペットが摂取すると毒性のある薬品を使用する機会も多くあるでしょう。

これらの薬品の管理方法を誤ると、犬が食べてしまったり齧ってしまったりして、最悪の場合は死に至ることもあります。

今回は、薬品による中毒の症状や治療方法の例をご紹介しましょう。

 

掃除用品や害虫駆除剤など、家の中には危険なものがたくさんある

殺虫剤、除草剤、漂白剤、洗剤、灯油、塗料、防腐剤など私たちの生活空間には摂取すると毒性の強いものがたくさんあります。

もちろん、こういったアイテムは私たち人間にとっても毒性があります。しかし犬の場合は、毒物と知らずに口にしてしまうことがあるため、大変危険なのです。こういった点では、人間の子供がいる家庭での取り扱いと同様に考えなければなりません。

殺虫剤

殺虫剤が犬にとって毒性があることは広く知られています。特に、有機リン系殺虫剤と言われる殺虫剤に含まれる成分は、筋肉のを興奮やさせ神経伝達に重要な働きをするアセチルコリンを分解する酵素の働きを抑制してしまいます。これによりアセチルコリンが過剰に働いてしまう状態になります。

このことにより殺虫剤としての効果が発揮されるわけですが、同じことが犬や人間にも起こってしまうのです。

有機リン系殺虫剤を飲み込んでしまうと、呼吸困難やよだれ、筋肉の痙攣や麻痺、尿の垂れ流し、脈が遅くなるなどの症状が出ることがあります。経口摂取のみならず皮膚に付いただけでも同様の中毒が起こる可能性がありますので注意が必要です。

殺虫剤中毒の治療法

摂取してから時間が経っていなければ催吐、胃洗浄、活性炭の投与による毒物の吸着などが効果的ですが、吐かせることが適切でない場合もあります。既に吸収されてしまった毒物に対しては、利尿や代謝を助けるための輸液や薬の投与を行います。
当然のことですが、毒物の種類や発現している症状によって、必要な薬剤は様々です。適宜、適切な処置を行なわなくてはなりません。
例えば、有機リン系殺虫剤に対してはアセチルコリンの働きを抑制するためのアトロピンと呼ばれる薬剤を用います。それと平行して、痙攣が見られる場合にはその抑制のための抗痙攣薬が使用されることもあります。

除草剤

除草剤に含まれているヒ素は毒物としてよく知られています。ヒ素は殺虫剤や防腐剤、殺蟻剤などにも広く使用されています。ヒ素には細胞の働きを全般的に止める作用があります。

ヒ素中毒になると腹痛、嘔吐、痙攣、ショックなど、多岐にわたる様々な深刻な症状が起きる可能性があり、放置しておくとみるみる悪化して数日で死に至る場合もあります。

除草剤中毒の治療

摂取してから2時間~3時間しか経っていないようなら胃洗浄で毒物を体外に出すようにします。吸着剤である活性炭の投与も効果的です。また、輸液などを行ない、利尿を促進します。バルという薬があれば投与してもらうとすることで解毒を助けます。併せて、発現している症状に対する治療も行ないます。

アルカリ性薬剤・酸性薬剤

漂白剤、トイレの掃除用洗剤、パイプクリーナーなど私たちの身の回りにはアルカリ性、酸性の強い薬剤がたくさんあります。綺麗好きなご家庭では、なおさらたくさんの薬剤が揃っていることでしょう。

アルカリ性の強い薬剤は口腔、食道、胃などの粘膜を溶かしてしまいますし、酸性の強い薬剤も粘膜をただれさせます。

アルカリ性・酸性薬剤中毒の治療

アルカリ性・酸性薬剤を飲み込んだ場合、胃や食道への刺激が非常に強いため、催吐や胃洗浄などは行なえません。

薬の投与なども犬の様子を見て慎重に判断する必要があります。輸液をはじめとした処置を行ない、利尿や代謝を促進させます。

ホウ酸

「ホウ酸なんて家にあるの?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、ホウ酸はゴキブリ駆除剤、植物の化学肥料、除草剤、防腐剤など幅広い生活用品に含まれています。

特にゴキブリ駆除剤は犬があやまって口にしやすいので、犬が近づけない場所に置くことが大切です。

ホウ酸は消化管、脳神経、腎臓、肝臓などさまざまな臓器に影響があると言われています。中毒になると血便(下痢)、腹痛、よだれ、ふるえ、昏睡などの症状が表れます。

ホウ酸中毒の治療

飲み込んで時間が経っていないようなら嘔吐、胃洗浄が効果的です。

既に体内に吸収されてしまっているようなら輸液、利尿剤などを使用して尿からの毒素の排出を促進させる治療を行ないます。

家の中の薬剤管理が大切

愛犬の薬物中毒を経験した飼い主さんの多くが「まさかこんなものを口にするなんて」「こんなものに毒があるなんて知らなかった」と思うそうです。

毒性の強い薬剤の摂取は命に関わることも少なくありません。やはり飼い主さんの正しい知識と管理で事故を防ぐことが大切なのです。もしも誤って食べてしまった場合には、一刻を争うこともあります。速やかに動物病院に連絡をとり、応急処置の指示を受けることをお勧めします。応急処置を行なったら、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。