2016年3月5日更新

【獣医師監修】犬や猫にもある不整脈。犬猫の症状・原因から治療方法・薬について

心臓は全身に血液を送り出す大切な臓器ですが、犬や猫も高齢になると心臓の筋力や弁などに異常が生じ、心臓病を発症するリスクが高くなります。心臓の疾患は初期には症状が表れにくく、実際に症状がではじめて病気に気付いた時点では病気がかなり進行している場合もあります。

今回は心臓の病気のひとつ、不整脈についてご紹介します。

心臓が収縮する仕組みはどうなっている?

心臓は生まれてから死ぬまで休むことなく同じリズムで収縮し、全身に血液を送り出しています。心臓は4つの部屋に分かれていて、右側に右心房と右心室、左側に左心房と左心室があります。

全身を巡って戻ってきた血液は、右心房から右心室と流れて肺に運ばれ、血液中に酸素を取り入れます。肺で酸素を取り込んだ血液は心臓に戻り、左心房から左心室へと流れて再び全身に送り出されていくのです。

肺や全身に血液を送り込むポンプの役割をする心臓の司令塔となっているのが「洞房結節」です。「洞房結節」は心臓の中にあって電気信号、つまり心電を一定のリズムで発信します。

これによって心臓の各部が規則正しく順を追って収縮・弛緩を繰り返すことができ、休むことなく血液を全身に行き渡らせることができるのです。

不整脈はどうして起こるの?

心臓の司令塔「洞房結節」と心電の伝達経路の異常

不整脈とは脈拍に異常が起こる病気のことですが、その原因のひとつは「洞房結節」にあります。「洞房結節」に異常があると正しい電気信号を送れなかったり、「洞房結節」とは別の場所から信号が出てしまったりすることがあります。

また「洞房結節」から出た信号の伝達経路に異常があって不整脈が起こる場合もあります。

「洞房結節」から出た信号は決まった伝達経路を伝わって心臓の各部に送られますが、この経路に異常があると一度通過した電気信号がループして戻ってきてしまい再度同じ場所を刺激してしまうことがあり、これが不整脈の原因となるのです。

心臓病が原因の不整脈

もちろん、色々な心臓疾患が不整脈の原因になることも少なくありません。

犬の場合は僧帽弁閉鎖不全症、猫の場合は肥大型心筋症などの心臓病に罹りやすいと言われていますが、これらの病気が進行すると不整脈を起こすことがあります。

不整脈の原因は全身の疾患にあることも

さらに、不整脈の原因は心臓の疾患だけではありません。さまざまな腫瘍、呼吸器疾患、電解質異常を起こす疾患、外傷、そしてストレスなども不整脈の原因となることがあります。

心臓に特に疾患がないのに不整脈を起こしている場合は、全身を精査する必要があるでしょう。

不整脈の症状

不整脈にはさまざまな原因がありますが、実際に見られる不整脈のタイプとしては下記の4つに集約されます。

  • 正常な脈の間に余分な脈が入る「期外収縮」
  • 心房が何度も細かく振動してしまう「心房細動」
  • 脈が速くなる「頻脈」
  • 脈が遅くなる「徐脈」

実際には不整脈があっても無症状の場合もありますし、運動が辛くなる、元気がなくなる、食欲不振などの症状となって表れる場合もあります。

不整脈の治療は?

病状が軽く日常生活に支障をきたすことがなければ、不整脈そのものに対しては特に治療しなくても良い場合もあります。
また、心不全を伴う心臓疾患があったり、他の病気が原因になっていたりするならば、その病気の治療が必要でしょう。

抗不整脈薬には下記のようなタイプがあります。獣医さんに処方される薬がどんな薬なのかを知っておくことも大切です。

ナトリウムチャネル遮断薬

心臓の筋肉はナトリウムが入り込むことで神経的に興奮する傾向があります。ナトリウムチャネル遮断薬はナトリウムが心臓に入るルートであるナトリウムチャネルを抑制することによりナトリウムの心臓への流入を防ぎます。

この薬は有効性は高い一方で、副作用が強く、投与する量によってはかえって心臓のリズムを不規則にしてしまう場合もありますので、緊急時の薬と理解しておきましょう。

キニジン、プロカインアミド、リドカインなどの薬名の薬がありますが、キニジンについては猫への投与は避けなければなりません。

ベータ受容体遮断薬

人間も含め動物はアドレナリンを分泌することにより心臓の脈を早くしたり瞳孔を開いたりといった生理的反応を起こしています。ベータ受容体遮断薬はこうしたアドレナリンの刺激を抑えて脈拍をゆっくりにさせる薬です。

アテノロール、プロプラノロールなどの薬があります。ベータ受容体遮断薬の中には強い副作用が起きる薬もありますので、投与の際には獣医さんとよく相談しましょう。

カリウムチャネル抑制薬

カリウムも心臓の電気信号の発信に関係する物質です。カリウムが心臓に入り込むチャネルをブロックすることにより電気信号の発信を遅らせ不整脈を抑える仕組みの薬です。

カルシウム拮抗薬

ナトリウム、カリウム同様にカルシウムにも心臓を興奮させる働きがあります。カルシウム拮抗薬はカルシウムの通り道であるカルシウムチャネルを塞ぐことにより心臓の興奮を抑える薬です。

この薬は心臓に血液と栄養を運ぶ冠状動脈を拡張させる働きもあります。
カルシウム拮抗薬の多くは、降圧剤として、心臓疾患をもつ犬や猫に使われることがよくあります。

心臓疾患には慎重に対処しよう

心臓疾患は犬や猫の体に深刻な影響をもたらす病気です。しかしながら不整脈については軽度の場合は要観察で積極的な治療をしなくても良いこともあり、治療方針を獣医さんとよく相談しましょう。

高齢になった犬や猫は心臓以外にも弱点を抱えていることが多く、積極的な治療をすることで寿命を縮めてしまう可能性もあります。体の状態をトータルで捉えてバランスの取れた治療をする必要があるでしょう。

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