2015年12月3日更新

【獣医師監修】犬の心房中隔欠損症~原因・症状と対策

心房中隔欠損症とは、心臓に四つある部屋のうち、上二つにあたる右心房と左心房の間の壁に生まれつき穴が開いている病気です。穴が小さければほとんど症状は出ませんが、穴が大きいと、左心房から右心房に血液が流れ込んでしまい、息切れや疲れやすいといった症状が現れます。

犬が心房中隔欠損症を発症するメカニズムを含め、詳しくご説明します。

原因

右心房と左心房の間にある心房中隔という壁に生まれつき穴が開いている病気です。ただ、犬での発症は稀です。

心房中隔は二枚の膜からできており、もともと胎児のときはこの膜に卵円孔というすきまが開いています。

卵円孔は、まだ肺が機能していない胎児の血液循環に欠かせないものです。生まれたあとは、全身から右心房に戻ってきた血液は、右心室と肺動脈を経て肺に行き、そこで酸素交換をして左心房に入ります。しかし胎児のうちは肺が使えないため、卵円孔を通じて右心房から左心房に直接血液を流して血液循環を行っています。

通常、肺呼吸の開始とともに二枚の膜が重なることですきまは閉じ、右心房と左心房を仕切る一枚の壁になりますが、そもそも心房中隔欠損症では二枚の膜のうち一枚が作られません。そのため、生まれた後も壁に穴が開いたままになります。

心房中隔欠損症のメカニズム

心房中隔欠損症になると、右心房や右心室、血液を肺に送り出す肺動脈、肺に負担がかかります。血液は、全身→右心房→右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房→左心室→大動脈→全身の順で巡っていますが、右心房と左心房の間に穴が開いていることで、肺から左心房に戻ってきた血液の一部が右心房に流れ込みます。

右心房の血液は右心室に移動するため、右心室と肺動脈は、通常より多くの血液を肺に送り出さなければなりません。すると、過剰に働く右心室と肺動脈にダメージが蓄積していきます

肺動脈は血液を多く送り出すために高血圧となり(肺高血圧症)、さらに血液を肺動脈から肺に送り出すポンプの役割がある右心室が、肥大したり、右心室不全を起こしたりする「肺性心」の状態になります。また、肺も通常より多くの血液を受け取るため、血液を処理しきれずに滞り、肺うっ血となります。

症状

心房中隔の穴が小さければ、ほとんど症状は現れません。穴が大きいと、心臓や肺に負担がかかり、肺高血圧症、肺うっ血、右心室不全などの症状が現れます。それぞれの症状は以下の通りです。

肺高血圧症と肺うっ血の症状

  • 運動するとすぐに息切れする
  • 疲れやすい
  • 咳が出る
  • 呼吸が浅くて速い
  • 呼吸困難
  • 失神

肺うっ血は進行すると、肺胞に血液中の水分が浸み出して肺水腫になります。肺水腫を発症した場合、ゼーゼーという荒い呼吸が見られたり、呼吸困難に陥ったりします。

右心室不全の症状

  • 下半身のむくみ
  • 胸水がたまる
  • 腹水がたまる
  • 肝臓が腫れて大きくなる

右心室不全は、右心室が肺に血液を送り出す力が弱まった状態です。その結果、全身に血液がたまり、むくみなどの症状が現れます。

その他、左心房から血液が流れ込む右心房も、血液量が増えることでバランスを崩し、心房細動という不整脈の一種を起こします。

フィラリア症を併発すると、命に関わることもあります

フィラリア症を併発すると、本来肺動脈に寄生するフィラリアの成虫が、心房中隔の穴を通じて右心房から左心房に移動します。

するとフィラリアの成虫は左心房から左心室、さらに大動脈から全身に行き、体のどこかの血管を詰まらせる可能性があります。詰まった先の血流が遮断されてしまうため、治療が遅れると命を落とす危険もあります。

対策

心房中隔の穴が小さい場合は、手術はせず、経過観察を行います。一方、穴が大きい場合は外科手術で心房中隔欠損症を根治させます。手術では人工心肺装置を使用し、犬の心臓を一時的に止めたうえで心房中隔の穴を塞ぎます。

その他、外科手術には肺動脈絞扼術(肺動脈バンディング術)もあります。肺動脈に特殊なテープを巻くことで肺への血流を制限する方法で、症状の緩和に役立ちます。ただ、根治療法ではありません。

なお、肺高血圧症や心不全を併発しているなど、手術が難しい状態である場合は内科的治療のみを行います。

心房中隔欠損症は先天性疾患のため、予防はできません。もし犬が心房中隔欠損症であると分かったら、心臓に負担をかけないように、激しい運動をさせないようにしましょう。また、フィラリア症を併発すると、血管が詰まって死に至る危険性もあるため、フィラリアを媒介する蚊がいる季節は毎月予防を欠かさないことが大切です。

心臓病のサインを見逃さないように

以前よりすぐに息切れするようになった、疲れやすい、呼吸が浅くて早い、咳が出るといった症状が見られたら、心房中隔欠損症の可能性があります。また、心室中隔欠損症など他の心臓関連の病気でも同じような症状が現れます。もし犬の普段の様子に違和感を覚えたら、動物病院で相談し、病気の早期発見・早期治療につなげましょう。

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