2015年12月10日更新

【獣医師監修】犬の破傷風~原因・症状と対策

犬の破傷風は、破傷風菌が原因となって引き起こされる極めて危険な病気です。破傷風菌は土壌中に存在しており、傷口などから体内に侵入します。発症して治療が遅れると、筋肉の痙攣や強直といった神経症状が起き、死亡することもあります。

破傷風の症状は特徴的なので、異変に気づいたらすぐに犬を動物病院に連れて行きましょう。ここでは、症状を含め、犬の破傷風について詳しくご説明します。

原因

犬の破傷風は、破傷風菌という細菌が傷口から感染することで起こります。破傷風菌は空気があると生きられない偏性嫌気性菌のため、芽胞と呼ばれる、環境の変化に強く耐久性の高い殻のようなものに包まれ、世界中の土壌に広く分布しています。

犬が傷のある状態で土遊びなどをすると、傷口から破傷風菌が体内に侵入し、感染した部位で芽胞の殻を壊して出芽、増殖を始めます。ただ、破傷風菌は偏性嫌気性菌という性質上、酸素のない深い傷に侵入した場合に増殖することが多いといえます。

破傷風菌は、増殖末期では神経毒と溶血毒を産生します。このうち問題となるのは神経毒で、運動神経線維の末端から取り込まれ、中枢神経に運ばれます。そして運動神経などを過度に興奮させることで、筋肉が突っ張ったようになる強直性痙攣を引き起こします。

症状

犬の破傷風の潜伏期間は一週間前後です。症状は頭部から始まり、目や口、表情に次のような特徴的な症状が現れます。

  • 口が開きにくくなる
  • よだれを垂れ流す
  • 食べ物が飲み込みにくくなる
  • 瞳孔がずっと縮小したままになる
  • まぶたがひきつる
  • 瞬膜の突出
  • 顔がひきつる
  • 耳が立ちっぱなしになる

これらは咬筋や顔面の筋肉などの痙攣によって起こります。また、発熱も見られます。

症状が進むと、全身の筋肉が強直性痙攣を起こします。足が突っ張ったようになって思うように動かせず、歩けなくなったり、背中を弓状に反らした姿勢を取ったりします。呼吸筋に痙攣が起きると呼吸困難を起こします。また、音や光といった刺激に誘発されて痙攣が起きることもありす。

発症から五日程度で死亡することが多いのですが、その間、意識ははっきりしていることが多く、犬は激痛に苦しめられることになります。まれに傷の近くの筋肉のみに症状が出ることがあり、その場合は二週間程度で回復することがあります。

対策

犬用の破傷風ワクチンはありません。そのため、抗生剤や抗破傷風毒素血清を用いて治療を行います。

傷口を洗浄後、周辺の細胞や異物などを取り除きます。それから抗毒素血清を投与し、体内に回っている毒素を中和させ、抗生剤で破傷風菌を一掃します。その他、対症療法として鎮痛剤や栄養剤の投与、酸素吸入を行います。

犬の破傷風を予防するには

破傷風菌は土壌中に潜んでいます。多少大げさですが「破傷風菌のいない安全な土壌は存在しない」と考え、もし犬が傷を負ったら、必ず傷口をすぐに洗って清潔にするようにしましょう。

土から頭を出した古釘や古い有刺鉄線も要注意です。それらには破傷風菌の含まれた土が付着している可能性があり、踏んだり引っかかったりして深い傷を負うと、感染のリスクが上がります。散歩後は、全身はもちろん、肉球まで傷がないかチェックすると安心です。

もし飼い主が犬にかまれたら

破傷風は、犬も人間も感染する人獣共通感染症です。もし飼い主が犬にかまれたら、傷口を丁寧に洗い、消毒をして病院に行き、医師と破傷風のワクチン接種について相談してください。犬の口に破傷風菌がいるかもしれませんし、そうでなくても、かみ傷から何かの拍子に破傷風菌が侵入しているかもしれません。

人の場合、三日~三週間の潜伏期間ののち、犬の場合と同じような症状が起こります。そして犬と同様、治療が遅れ、症状が進行すると死のリスクがあります。

感染のリスクを予測し、予防に徹しましょう

破傷風は予防が何より大切です。散歩は、古釘や古い有刺鉄線などがある道、埋まった石で非常にでこぼこした道など、悪路はなるべく避けましょう。また、いわば人為的に傷を作る手術後も、破傷風の感染リスクは高まります。手術後の傷口に土がつかないよう、細心の注意を払う必要があります。

万が一犬が破傷風を発症した場合でも、初期症状の段階であれば助かる可能性があります。異変を見逃さず、すぐに動物病院に行ってください。

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