2016年5月6日更新

【獣医師監修】犬のイヌヘルペス感染症~原因・症状と対策

イヌヘルペス感染症は、生後間もない幼犬で発症すると死亡する危険性の高い病気です。イヌヘルペスウイルスが母犬の胎盤を介するなどして幼犬に感染し、全身性の出血や壊死を引き起こします。1頭が発症すれば同腹の犬にもウイルスが感染している可能性がありますが、そもそも死産となることも少なくありません。

幼犬の大敵ともいえるイヌヘルペス感染症について詳しく見ていきましょう。

原因

イヌヘルペスウイルスに感染することで起こる感染症です。感染経路やウイルスから受ける影響は、幼犬と子犬・成犬で大きく異なります。

幼犬の場合

生後2、3週齢までの生まれたての幼犬の場合、イヌヘルペスウイルスは母犬の胎盤や産道を介して、または生後、母犬の分泌物が幼犬の口や鼻につくことで感染します。幼犬の体内に侵入したウイルスは増殖して全身に広がり、肺、心臓、腎臓、肝臓といった臓器に出血と壊死が起こります。また、消化管で出血が起きることもあります。

1頭の幼犬に感染が認められた場合、同腹の兄弟犬も感染している恐れがあります。感染している幼犬から他の幼犬に感染が広がることもあるので注意が必要です。

なお、母犬にイヌヘルペスウイルスに対する免疫があれば、母から子へ、胎盤や初乳を通じてその免疫が移行するため、重症化は避けられる可能性があります。

子犬・成犬の場合

一方、子犬と成犬の場合、イヌヘルペスウイルスに感染している犬の分泌物への接触や飛沫、交尾などによって感染しますが、正常な免疫力があれば、幼犬のように臓器にダメージを負うことはほとんどありません。

症状

イヌヘルペス感染症の症状は、幼犬と子犬・成犬で異なります。それぞれ見ていきましょう。

幼犬の場合

幼犬の場合、1週間前後の潜伏期間ののち、次の症状を示します。

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 母犬のお乳を飲まなくなる
  • よだれを垂れ流す
  • 体温の低下
  • ずっと鳴き続ける
  • 苦しそうに呼吸をする
  • 元気がなく、ぐったりする

イヌヘルペス感染症を発症すると、急に母犬のお乳を飲まなくなります。また、下痢は、はじめは黄色から緑色の下痢便ですが、症状が進むにつれて水のような便になります。肺炎の症状が見られることもあり、苦しそうな呼吸を繰り返すようになります。

肺や心臓、腎臓、肝臓、消化器などの多臓器が障害されることで、全身性の様々な症状が現れます。神経症状も現れ、発症後、5~7日程度で死亡することが多い病気です。

子犬・成犬の場合

子犬と成犬の場合、風邪のような呼吸器症状が見られます。稀に肺炎を起こして重症化することもありますが、正常な免疫力があれば軽症のまま治ることがほとんどです。

ただ、犬の体内でイヌヘルペスウイルスに対する免疫が作られると、このウイルスは三叉神経(こめかみから頬にかけて走る神経)と腰仙髄神経節(腰の辺りにある、下半身に関係する神経)の中に逃げ込み、潜伏します。そして犬の体力や免疫力が弱ったときに再度増殖し、発症しますします。このようにして、イヌヘルペスウイルスの潜伏感染は生涯にわたって続きます。

また、妊娠しているメス犬がイヌヘルペスウイルスに感染すると、胎児に異常が起こり、流産、早産、死産となることも少なくありません。

対策

イヌヘルペス感染症に対する抗ウイルス薬はありません。そのため、対症療法が中心となります。

抗生物質を投与したり、多臓器からの出血に対して輸血を行ったりします。また、感染が発覚したらすぐに幼犬を隔離して保育器で温め、回復を待ちます。同腹の兄弟犬がいる場合、すべての犬をそれぞれ保育器に入れて様子を見ます。

子犬や成犬の場合も、ひどい症状が出ていれば対症療法を行います。ウイルスは生涯犬の体内に潜伏し、根治することはできませんので、症状が出るたびに対処することとなります。

イヌヘルペス感染症を予防するには

生まれたての幼犬への感染は母犬が原因となることが多いので、計画的に繁殖させる場合、事前にイヌヘルペスへの感染の有無を検査しておくと、病気の発生を減らせる可能性があります。

また、イヌヘルペスウイルスは生涯犬の体内に潜伏し続けるため、胎児や生後間もない幼犬がイヌヘルペス感染症で亡くなった経験のあるメス犬は、繁殖させないようにしましょう。

幼犬がイヌヘルペス感染症を発症した場合、感染を広げない対策をすることも重要です。母犬が出産した場所やお気に入りの場所、幼犬がいた場所は、次亜塩素酸ナトリウムを薄めた液で消毒してください。このウイルスは熱にも弱いため、煮沸消毒も有効です。また、感染している恐れのある幼犬を他の犬と接触させないようにしましょう。

幼犬の体が出すサインを見逃さないように

イヌヘルペス感染症は、幼犬が発症した場合、多臓器の出血や壊死といった命にかかわる激烈な症状を起こします。ただ、それらは動物病院で検査して初めて分かることであり、症状のみから診断することは困難です。

だからこそ、小さな体が出すサインに気づくことが大切です。幼犬が急にお乳を飲まなくなる、ぐったりする、ずっと鳴き続けるといった状態は異常です。そんな症状が現れたら、すぐに幼犬を動物病院につれて行きましょう。

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