2016年1月27日更新

【獣医師監修】猫の網膜剥離~原因・症状と対策

猫の網膜剥離は、何らかの原因で、網膜の層の一つである神経網膜がはがれてしまうことで起こります。神経網膜には光を感じ取る視細胞があるため、これがはがれるとやがて失明する危険性もあります。

神経網膜がはがれる原因は様々で、目の内部だけでなく他の疾患に関連して起きることもあります。痛みなどの症状もなく、静かに進行していく病気です。

原因

猫の網膜剥離は、物の色や形を認識するうえで欠かせない網膜の層の一部がはがれてしまう病気です。網膜は、眼球内を満たすゼリー状の物質である硝子体と、眼球を包む膜の一つで、網膜に栄養を与える血管から成る脈絡膜に挟まれて存在しています。神経網膜と色素上皮細胞の2層からできており、神経網膜には外から入ってきた光を電気信号に変換して脳に伝える役割が、色素上皮細胞には神経網膜をサポートする役割があります。

網膜剥離は、神経網膜が色素上皮細胞からはがれることで起こります。神経網膜がはがれると、色素上皮細胞を通じて脈絡膜から栄養を受け取れず、視細胞がダメージを受けて死んでいきます。

神経網膜がはがれる原因は大きく「裂孔原性」と「非裂孔原性」の二つに分けられます。それぞれ見ていきましょう。

裂孔原性の原因

裂孔原性の網膜剥離は、硝子体の液状化などが原因となって網膜に穴が開くことで起こります。本来ゼリー状の硝子体が液状に変性すると、眼球内で動きやすくなり、動いたときに網膜を引っ張って端が破れ、穴が開いてしまいます。その穴から液状化した硝子体が神経網膜と色素上皮細胞の間に入りこみ、徐々に神経網膜がはがれていきます。

また、硬いものに思い切り頭部をぶつけるなど、目に対する強い衝撃のせいで穴が開くこともあります。

非裂孔原性の原因

非裂孔原性の網膜剥離は、滲出性と牽引性に分けられます。

滲出性は、ブドウ膜炎などの炎症や腫瘍などが原因で、漿液が脈絡膜からにじみ出し、神経網膜と色素上皮細胞の間にたまることで起こります。

また、高血圧による出血が原因になることもあります。高血圧の影響で網膜に出血が起き、その血液が神経網膜と色素上皮細胞の間にたまって網膜剥離を起こします。高血圧は慢性腎不全や甲状腺機能亢進症が原因で起こりやすいので、それらの病気を患っている猫では特に注意が必要です。

一方、牽引性は、硝子体の出血などが原因で起こります。硝子体が出血すると、硝子体と網膜との間に増殖膜という膜ができます。それが硝子体と網膜の両方と強くくっつくことで、硝子体が収縮した拍子に網膜も引っ張られて網膜剥離が起きます。

裂孔原性、非裂孔原性のどちらのタイプでも、神経網膜がはがれ始めた段階では、まだ目は見えています。ただ、早期発見できず、神経網膜が完全にはがれると失明してしまいます。

症状

猫が網膜剥離を発症しても、痛みはなく、ほとんど症状が現れません。猫は片目が失明しても、もう片方の目に問題がなければ日常生活に支障をきたさないことが多いため、飼い主は非常に気づきにくいといえます。網膜剥離に伴って眼内出血が起きたり、瞳孔が開きっぱなしになったりすることがあり、それで異常に気づける場合もあります。

対策

猫の網膜剥離は、裂孔原性、非裂孔原性の滲出性、牽引性、それぞれの原因に合わせた治療を行います。

裂孔原性の治療

裂孔原性の場合は外科的な治療を行います。網膜剥離が部分的であれば、レーザーをはがれた部分の周囲に照射し、網膜剥離をそこで押し留める手術を行います。ある程度はがれてしまっていても、早期であれば、液状化した硝子体を抜いて網膜をはがれにくくする網膜復位術という手術を施して失明を避けられることもあります。ただし手術ができる病院は限られています。

滲出性の治療

滲出性の場合は、原因となっている疾患の治療を行います。高血圧が原因の場合、疾患の治療とともに血圧を下げる薬を投与します。

牽引性の治療

牽引性の場合は硝子体の手術を行います。網膜を引っ張っている増殖膜などを取り除いたあと、網膜復位術を行います。

網膜剥離を予防するには

網膜剥離はほとんど症状が出ないため、定期的に眼科検診を受けて早期発見するようにしましょう。高齢猫の場合、慢性腎不全による高血圧から網膜剥離を起こすことがあるので、眼科検診に加え、血圧検査を行うことも予防につながります。

また、猫が何かの弾みで思い切り硬いものに頭部を打ち付けたときは、猫が平気そうでも、念のため動物病院で目を検査してもらいましょう。

気づいたときには両目とも失明…とならないように

片方の目に網膜剥離が起きた場合、もう一方の目にも網膜剥離が起こりやすくなる傾向にあります。猫は片方の目が完全に失明していても、もう一方の目が無事であれば平然と日常生活を送れます。そのため、猫がよく物にぶつかるようになったなど、異変に気付いたときにはすでに両目とも失明している可能性があります。そうならないように予防をしっかり行うことが大切です。

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