2016年3月23日更新

【獣医師監修】猫の低カルシウム血症~原因・症状と対策

猫の低カルシウム血症は、何らかの原因で血液中のカルシウム濃度が低下することで起こります。カルシウムは心臓を含む筋肉の収縮や神経伝達などに関わっているため、低カルシウム血症では神経過敏や痙攣、不整脈などが見られます。

猫が低カルシウム血症を起こす原因は多岐に渡ります。今回は、主な原因、症状、対策を取り上げます。

原因

猫の低カルシウム血症は、血液中のカルシウム濃度が正常以下に低下している状態を指します。猫が低カルシウム血症を起こす原因は様々です。原因をつかみやすくするためにも、まずはカルシウムの体内における役割と、カルシウムが体に吸収される仕組みについて簡単にご説明します。

カルシウムの役割

カルシウムは、筋肉の収縮、神経伝達、血液凝固、酵素の調節と活性化、ホルモン分泌など、生きるうえで重要な役割を担っています。カルシウムの大部分は骨に蓄えられており、必要に応じて血液中に移動します。そして血液中のカルシウム濃度は、副甲状腺ホルモンとカルシトニンという二つのホルモンで調節されています。

カルシウムが体内に吸収される仕組み

猫がカルシウムを摂取すると、小腸で体内に吸収され、さらに腎臓の尿細管で再吸収されたあと、不要な分は便や尿中に排泄されます。小腸での吸収や尿細管での再吸収は活性型ビタミンDが作用することで行われ、この活性型ビタミンDは、肝臓や腎臓でビタミンDが代謝されることでできます。

低カルシウム血症の発症には、副甲状腺ホルモンと、それを分泌する副甲状腺、ビタミンDが深く関わっています。続いて、詳しい原因を見ていきましょう。

1―副甲状腺機能低下症

副甲状腺とは、気管の左右に一つずつある甲状腺に、各二つずつくっついている小さな器官です。上皮小体とも呼ばれます。

副甲状腺から分泌される副甲状腺ホルモンには、血液中のカルシウム濃度を上昇させる作用があります。血液中のカルシウム濃度が低下すると、副甲状腺ホルモンが増加して腎臓に活性型ビタミンDを作らせ、腸管からのカルシウムの吸収量をアップさせます。同時に尿細管におけるカルシウムの再吸収を促進させたり、骨を溶かして血液中にカルシウムを移動させたりします。

逆に血液中のカルシウム濃度が高すぎると、副甲状腺ホルモンの分泌が減って濃度が下がります。こうして血液中のカルシウム濃度は常に一定に保たれています。

副甲状腺機能低下症は、副甲状腺が障害され、副甲状腺ホルモンが減少したり作用しにくくなったりする病気です。首の辺りにケガを負ったり、甲状腺の手術時に誤って副甲状腺を傷つけたり切除したりして起こることがあります。副甲状腺ホルモンが減少することで、カルシウムの吸収や再吸収ができなくなり、低カルシウム血症となります。

2―腎機能の低下

腎不全などで腎機能が低下することによって、腸管におけるカルシウムの吸収と、尿細管での再吸収を促す活性型ビタミンDが作られにくくなります。すると血液中のカルシウム濃度が下がり、低カルシウム血症を発症します。

3―膵炎

膵臓は炭水化物やタンパク質、脂肪などを分解する消化酵素を分泌しています。インスリンの分泌もここで行われます。膵炎は、事故や感染症が原因で、その消化酵素が活性化され、膵臓を自己消化してしまう病気です。

膵炎によって通常より多くの脂肪が分解されると、遊離脂肪酸ができます。それがカルシウムとくっついてしまうため、血液中のカルシウム濃度が減少します。

4―産褥テタニー

メス猫に起こることがある、産後の低カルシウム血症です。産後、授乳で大量のカルシウムを消費することなどでカルシウム不足に陥ります。急に症状が現れるのが特徴で、放置すれば死亡する危険性もあります。

5―低マグネシウム血症

マグネシウムも副甲状腺ホルモンの分泌を調節していると考えられています。そのため、血液中のマグネシウム濃度が著しく低下すると、副甲状腺ホルモンの分泌が減って低カルシウム血症を引き起こすことがあります。

その他、活性型ビタミンDのもととなるビタミンDは、猫だと日光に当たることで産生されるため、日光浴不足も結果としてカルシウム不足を招きます。もちろん、カルシウムが少なくリンが多い、バランスの悪い食生活も低カルシウム血症の一因となります。

症状

猫が低カルシウム血症を発症すると、以下のような症状が現れます。

  • 元気消失
  • 食欲低下
  • 震え
  • 呼吸が速くなる
  • 神経過敏
  • 筋肉の硬直
  • 運動失調(立てなくなるなど)
  • 痙攣
  • 不整脈

カルシウムは神経伝達にも関わっているため、神経過敏や筋肉の硬直、運動失調、痙攣などの神経症状が現れます。また、カルシウムは心臓(心筋)を収縮させる作用もあり、濃度の低下によって不整脈を起こすことがあります。

対策

猫の低カルシウム血症は、それぞれの原因となっている病気の治療を行うとともに、カルシウムやビタミンDの内服を行います。ただ、産褥テタニーは一刻を争う状態なので、カルシウムを静脈注射します。

また、低マグネシウム血症による低カルシウム血症なら、マグネシウムを点滴で投与することで改善します。

低カルシウム血症を予防するには

低カルシウム血症を防ぐには、栄養バランスのとれた食事と、適切な日光浴が重要です。特に産後の猫はカルシウム不足になりがちなので、しっかりフードで栄養管理を行います。

低カルシウム血症を引き起こす原因となる腎不全は、高齢猫に多く見られます。定期検査で腎機能の低下を早期発見・早期治療できれば、低カルシウム血症も予防できる可能性があります。

膵炎は事故や感染症が原因で発症するため、猫を室内飼育にしたり、ワクチン接種をしたりして予防に努めましょう。

侮れない低カルシウム血症

低カルシウム血症が疑われる異変に気づいたら、すぐに動物病院で治療を受けさせましょう。治療を受けさせずに放置し、カルシウムが低下した状態が続くと、副甲状腺ホルモンによって骨に蓄えられたカルシウムが血液中に放出され続けるため、猫の骨がもろくなります。

日頃から、適切な食事管理はもちろん、ビタミンDを作るために日光浴もさせて、カルシウムの低下を防ぐことが大切です。

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