2016年4月30日更新

アメリカン・コッカー・スパニエルの病気〜獣医師が解説するアメリカン・コッカー・スパニエルのかかりやすい病気〜

ふさふさとしたゴージャスな被毛が特徴的なアメリカンコッカースパニエル。陽気で人懐っこい性格も魅力のひとつです。アメリカンコッカースパニエルはとても活発ですが、膝蓋骨脱臼が多く見られる犬種ですので、激しい運動には気をつけなくてはなりません。また、重度の外耳炎をはじめとして、アメリカンコッカースパニエルで知っておきたい病気がいくつかありますので紹介します。

アメリカンコッカースパニエルの目の病気

チェリーアイ

目頭にある瞬膜腺や第三眼瞼腺とよばれる組織が飛び出してしまう病気です。チェリーアイは腫瘍や外傷などに続発して起こることもありますが、アメリカンコッカースパニエルでは、瞬膜腺を固定する組織が先天的に欠損していることで起こるケースがよくあります。これは遺伝性の病気と言われています。

飛び出した瞬膜腺は、米粒〜小豆大に腫れて充血した状態になります。さらに刺激によって涙が増えるほか、結膜炎を起こすこともあります。

チェリーアイの治療としては、基本的には飛び出した瞬膜腺を元にもどして縫合します。二次的に起こったチェリーアイには、元となる病気に対する治療が必要です。

緑内障

眼球内部の圧力(眼圧)が上昇することで網膜や視神経が障害を受け、視力障害につながる病気です。

急性緑内障を発症したアメリカンコッカースパニエルでは、視力障害のほか、角膜が濁って見えたり、目が充血したりします。痛みが強く、目を閉じにくそうにしたり、顔に触れようとすると噛み付いたりすることもあります。急性緑内障を治療せずにいると、慢性緑内障になります。慢性緑内障になったアメリカンコッカースパニエルの眼球は、腫れて大きく見えます。

緑内障の治療としては、点眼薬や内服薬、時には外科手術で眼圧を低下させ、視力の回復をめざします。また、急性期には、速やかに眼圧を下げるために注射薬を使うこともあります。状態が安定したら、内科治療で正常な眼圧と視力を維持します。しかし、緑内障は再発を繰り返し、悪化していくことがよくあります。視力の回復が困難な場合には、痛みをとるために眼球摘出や義眼の挿入を行なうこともあります。

白内障

水晶体の白濁による視力障害を起こす病気です。犬は加齢に伴う白内障を発症しやすい傾向がありますが、アメリカンコッカースパニエルでは若いうちに白内障を発症することがあります。これは遺伝が関与していると考えられています。

白内障のごく初期であれば、健康診断などで指摘されることがあります。白内障が進行すると、飼い主も水晶体が白濁していることを確認できるほか、視力障害が顕著になり、物にぶつかりやすくなったりします。

白内障が進行して視力が失われた場合でも、視力を回復させるための手術を検討できることがあります。白内障手術を行なっている施設、手術の適応、手術後のケアや合併症などについて、かかりつけの獣医師とよく相談しましょう。

アメリカンコッカースパニエルの消化器の病気

慢性肝炎

アメリカンコッカースパニエルは、慢性肝炎を起こしやすいことが知られており、これは遺伝が関与していると考えられています。

慢性肝炎の初期は症状がほとんどないこともあります。やがて、病気が進行すると、食欲不振や体重減少がはっきりし始めます。さらに病状が進行して肝不全を起こすと、黄疸や腹水、けいれん発作などの症状が見られるようになります。

薬によって慢性肝炎の進行を遅らせる治療を生涯にわたって行ないます。同時に、肝臓を補助するための投薬治療や食事療法を継続します。この病気は進行性であることがほとんどで、やがて肝硬変に伴う肝不全で死亡してしまいます。

アメリカンコッカースパニエルの骨と関節の病気

膝蓋骨脱臼

いわゆる「膝のお皿の骨」が正常な位置からずれる病気です。膝蓋骨脱臼の発症には、遺伝が関与しています。

膝蓋骨脱臼を起こしたアメリカンコッカースパニエルの症状は様々です。時折スキップをしたり、後ろ足を蹴り出す仕草で自力で脱臼を治したりするような軽症例もあります。一方で重症例では、膝蓋骨脱臼を起こした後ろ足を伸ばせず、着地することもできなくなります。

膝蓋骨脱臼の治療方法は年齢や重症度から決定します。軽症ならば膝を正常に屈伸させるリハビリテーションのみ行なう場合もあります。一方で、重症の場合には手術を行ないます。重度の膝蓋骨脱臼を起こした後ろ足は成長に伴って変形しますので、手術は早期に 行なう方がよいでしょう。

アメリカンコッカースパニエルの皮膚の病気

脂漏性皮膚炎

アメリカンコッカースパニエルでは、皮脂が過剰に分泌される脂漏症がよく見られます。脂漏症のアメリカンコッカースパニエルの皮膚では、細菌やマラセチアという酵母が繁殖しやすくなり、皮膚炎の原因となります。

脂漏症では脇の下や指の間、あご、おなかなどの皮膚がべたべたしたり、かさかさしたりして、においを発します。皮膚が炎症を起こすと、かゆみがあるほか、脱毛して皮膚が赤く腫れたようになります。皮膚炎が慢性化すると、色素沈着を起こし、さらには皮膚がかたく厚くなります。また、アメリカンコッカースパニエルでは、重度の外耳炎を併発することがよくあります。

マラセチアや細菌感染に対しては、内服薬が有効です。しかし、脂漏症そのものは根治が困難な病気です。こまめなシャンプーもとりいれながら、つきあっていかなくてはなりません。

外耳炎

アメリカンコッカースパニエルは垂れ耳であるほか、脂漏症を起こしやすく、耳道で細菌などの感染を起こしやすい環境になりがちです。加えて、耳道における様々な遺伝的な異常が関与することで、非常に治療の難しい慢性外耳炎を起こすことがあります。

多くの場合、べたべたとした耳垢が多量に耳の内部の被毛に付着します。また、耳道の皮膚が赤く腫れたり、脱毛したりして、痛みも伴います。耳道が腫れて、耳の穴がほとんど確認できないような状態になることもあります。

外耳道の清潔を保ち、できるだけ乾燥させるようにします。感染をコントロールする為の内服薬を使うこともあります。アメリカンコッカースパニエルの慢性外耳炎は、根治が困難で、重症化するケースがよくあります。症状が酷く、内科治療でのコントロールが困難な場合には、全耳道切除などの手術が選択されることもあります。

アメリカン・コッカー・スパニエルについて詳しく知りたい方はこちら
アメリカン・コッカー・スパニエルの基礎知識まとめ

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