2016年2月20日更新

イングリッシュコッカースパニエルの病気〜獣医師が解説するイングリッシュ・コッカー・スパニエルのかかりやすい病気〜

柔らかな被毛でおおわれ、ところどころの飾り毛が優雅な印象のイングリッシュコッカースパニエル。陽気で好奇心旺盛、飼い主に従順な犬種として国内外で人気です。イングリッシュコッカースパニエルには、いくつかの遺伝性疾患が知られているため、繁殖を希望されている場合には注意が必要です。また、垂れ耳であることもあり、耳の清潔を保つためのケアは欠かせません。イングリッシュコッカースパニエルで知っておきたい病気を紹介します。

イングリッシュコッカースパニエルの目の病気

進行性網膜萎縮

進行性網膜萎縮は網膜の細胞が徐々に障害されて失明に至る病気です。この病気は両目ともに起こります。発症には遺伝が関与していることが知られています。

進行性網膜萎縮を発症したイングリッシュコッカースパニエルでは、まず暗い場所で見えづらくなります。やがて、明るい場所でも見えなくなり、完全に失明します。犬は住み慣れた場所であれば、視力が低下していても不自由なく生活できることがよくあります。そのため、発症に気がつかないうちに病気が進行してしまっていることもあります。

進行性網膜萎縮には有効な治療方法がありません。進行性網膜萎縮と診断されたら、生活スペースに危険な場所がないかを見直しておきましょう。また、近年はこの病気の発症に関わる遺伝子の検査が可能です。特に繁殖を検討している場合には、遺伝子検査を行なうことが勧められています。

白内障

水晶体の白濁により視力障害を起こす病気です。犬は加齢に伴って白内障を発症しやすい傾向がありますが、イングリッシュコッカースパニエルでは若いうちに白内障を発症しやすいことが知られています。

白内障のごく初期であれば、視力障害による症状ははっきりしません。日常生活の中で病気に気がつくことは難しいでしょう。白内障が進行すると目が白くなってくるため、飼い主も白内障を確認できるようになります。視力障害が顕著になってくると、物にぶつかりやすくなったり、散歩を嫌がったりします。

点眼薬で白内障の進行を多少遅らせることができるとされています。しかし、残念ながら白内障は進行してしまいます。白内障が進行して視力が失われた場合であっても、手術で視力を回復できる可能性があります。白内障手術を行なっている施設、手術の適応、手術後のケアや合併症などについて、かかりつけの獣医師とよく相談しましょう。

イングリッシュコッカースパニエルの骨と関節の病気

股関節形成不全

股関節形成不全は股関節を形成する組織に先天的な問題があり、股関節が緩く不安定になっている病気です。成長とともに股関節の状態は悪化し、不安定な股関節では関節炎が進行します。股関節形成不全の発症には遺伝が関与しています。イングリッシュコッカースパニエルでは、単色の被毛を持つソリッドカラーと呼ばれるタイプで股関節形成不全が起こりやすいことが知られています。

股関節形成不全のイングリッシュコッカースパニエルは、後ろ足が上手に使えません。そのため、飛び跳ねるように歩いたり、腰を振って歩いたりといった特徴的な歩き方をします。また、段差を嫌がるほか、おすわりがうまくできないこともあります。股関節形成不全の症状は成長期に始まります。その後、多くの場合で一時的に症状が軽快します。しかし、治療を行っていなければ股関節の関節炎が進行していき、後に歩行異常は再発します。

軽症であれば、鎮痛剤やサプリメントを用いるほか、体重管理やリハビリテーションを行いながら症状をコントロールします。ただし、股関節形成不全が自然に正常な状態になることはありません。そのため、手術が必要な場合も少なくありません。股関節形成不全の手術にはいくつかの方法があります。年齢や体格、股関節の状況、時には動物の性格も考慮して慎重に手術方法を選択します。

イングリッシュコッカースパニエルの泌尿器の病気

家族性腎症

2歳までに発症し、徐々に腎臓機能の低下が進行していく病気です。家族性腎症の発症には遺伝が関与しています。

この病気を発症すると、尿量、飲水量が増え、体重が減少します。その後、さらに病気が進行すると貧血や尿毒症を起こします。元気がなくなり、けいれんなどの神経症状が見られるなどして、最終的には死亡してしまいます。

残念ながら病気そのものを治療することはできません。徐々に進行する腎不全による症状を抑えるための食事療法や輸液などを行なって、生活の質を維持していくことが中心になります。最近では、家族性腎症を発症させる遺伝子の検査が可能です。繁殖を検討している場合には、遺伝子検査を行なうことが勧められています。

イングリッシュコッカースパニエルの皮膚の病気

脂漏性皮膚炎

イングリッシュコッカースパニエルでは、皮脂が過剰に分泌される脂漏症がよく見られます。脂漏症のイングリッシュコッカースパニエルの皮膚では、マラセチアという酵母菌が繁殖しやすく、皮膚炎の原因となります。

脂漏症では脇の下や指の間、あご、おなかなどの皮膚があぶらっぽくべたべたしたり、かさかさしてきたりします。また、独特のにおいを発します。皮膚が炎症を起こすと、強いかゆみを訴えるほか、脱毛して赤く腫れ、べたべたした垢が付着するようになります。

脂漏症そのものは根治が困難です。適切なシャンプーを行い、皮膚炎がひどい時には内服薬を使いながらつきあっていかなくてはなりません。

外耳炎

イングリッシュコッカースパニエルは垂れ耳で耳道が多湿になりやすい上に、脂漏症を発症しやすい犬種です。耳道が細菌やマラセチアなどの感染を起こしやすい環境であるため、これらが外耳炎の原因となります。

外耳炎を発症すると、べたべたとして臭いを伴う耳垢が耳の内部の被毛にたくさん付着します。感染を起こした病原体の種類により、耳垢の色は黄色かったり茶褐色であったりします。また、耳道の皮膚は赤く腫れ、痒みと痛みを伴います。耳道がひどく腫れて、耳の穴がほとんどふさがってしまったような状態になることもあります。

適切な耳掃除を行って耳道の清潔を保ち、できるだけ乾燥させるようにします。また、感染や炎症をコントロールする為に、点耳薬や内服薬を用います。治療がとても難しいことも多く、炎症を繰り返して重症化した場合には、全耳道切除などの手術を選択することもあります。日ごろから、耳道の清潔を保つためのケアを継続しておくことが大切です。

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