2016年7月7日更新

【獣医師監修】犬の骨粗しょう症~原因・症状と対策

犬の骨粗しょう症は、骨の中に貯えられているカルシウムが減り、骨がもろくなる病気です。骨粗しょう症になると、骨折したり、骨が変形したりしやすくなるので予防が欠かせません。ただ、これといった症状がなく、犬が骨折するまで飼い主が気づけないことも珍しくありません。

犬の骨粗しょう症の原因とメカニズム、症状、対策について取り上げます。

原因

犬の骨粗しょう症は、何らかの原因で骨に貯蔵されているカルシウムが血液中に移動し、骨の密度が下がってスカスカになる病気です。低カルシウム血症や副甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症といった病気などで起こりやすくなります。

なぜそれらの病気を発症すると骨粗しょう症が起こりやすくのなるのでしょうか。原因とメカニズムをご説明する前に、まずカルシウムと骨との関係について簡単に触れておきます。

カルシウムの吸収と骨との関係

カルシウムは体内に取り込まれると、小腸で吸収されます。また、腎臓ではいったん排泄されたカルシウムが尿細管で再吸収されます。骨はカルシウムの貯蔵庫であり、貯めておいたカルシウムを放出したり、逆に取り込んだりして、血液中のカルシウム濃度を一定に保っています。その一連の働きは、カルシトニンと副甲状腺ホルモンというホルモンによって指示されています。

カルシトニンは気管の左右に対となって存在する甲状腺から分泌されています。血液中のカルシウム濃度が上昇したときに、骨にカルシウムを取り込ませたり、小腸でのカルシウムの吸収や尿細管での再吸収を抑えたりする効果があります。

一方、副甲状腺ホルモンは、甲状腺に各2つずつついている副甲状腺から分泌されます。カルシトニンとは逆の働きをし、血液中のカルシウム濃度が低下したときに、骨に貯えられたカルシウムを放出し、小腸でのカルシウムの吸収や尿細管での再吸収を促進します。

なお、小腸でのカルシウムの吸収や尿細管での再吸収には、活性型ビタミンDが必要です。活性型ビタミンDは肝臓や腎臓でビタミンDが代謝されることでできるもので、これがなくなるとカルシウムをうまく体内に取り込めなくなります。

続いて、原因となる病気について見ていきましょう。

低カルシウム血症

低カルシウム血症は、副甲状腺ホルモンや活性型ビタミンDの分泌低下、臓器の異常などによって起こります。血液中のカルシウム濃度が著しく低下した状態で、副甲状腺ホルモンの働きによって、骨に蓄えられたカルシウムが血液中に放出されます。それが長く続くことで骨粗しょう症となります。主な原因は以下の通りです。

  • 副甲状腺機能低下症
  • 活性型ビタミンDの分泌低下
  • バランスの悪い食事、など

副甲状腺機能低下症は、外科手術で副甲状腺を全摘出し、副甲状腺ホルモンの分泌が減少すると発症します。副甲状腺ホルモンは腎臓に活性型ビタミンDを作らせる作用があるため、このホルモンが減ると活性型ビタミンDも低下し、カルシウムの吸収や再吸収がしにくくなります。さらに、活性型ビタミンDは腎機能そのものの低下によって作られにくくなることもあります。

また、リンが多くカルシウムが少ないバランスの悪い食事も、低カルシウム血症の原因になります。体内で2つのバランスが崩れることで、リンがカルシウムとくっつき、結果として血液中のカルシウム濃度が低下します。

副甲状腺機能亢進症

副甲状腺の働きが異常なほど活発になることで、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。骨から血液中にカルシウムが放出されやすくなり、高カルシウム血症を発症して骨がもろくなります。副甲状腺の腫瘍や腎不全、バランスの悪い食生活などが原因で起こります。

副腎皮質機能亢進症

クッシング症候群とも呼ばれる、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌される病気です。副腎皮質や副腎皮質の機能を司る脳下垂体に腫瘍ができることなどで起こります。副腎皮質ホルモンには小腸でのカルシウムの吸収を抑えつつ、尿へのカルシウムの排出を促進させる働きがあります。すると低くなった血液中のカルシウム濃度を上げるために骨からカルシウムが放出され、それが持続すると骨がもろくなります。

また、副腎皮質機能亢進症は、ステロイド剤の長期使用によって起こることもあります。

以上のようにして骨粗しょう症は引き起こされます。なお、人では女性ホルモンの減少が骨粗しょう症の原因の1つとされていますが、犬では関連性は認められていません。よって、避妊手術で卵巣や子宮を切除しても、骨に影響はないと見られています。

症状

犬が骨粗しょう症になると、骨がスカスカになって、少しの衝撃で折れたり変形したりしやすくなります。骨折や変形が起きるまで特に症状は見られず、飼い主が早期に骨粗しょう症に気づくことは困難です。

ただ、原因で取り上げた低カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症には症状があるため、早期発見・早期治療すれば、骨粗しょう症を防げる可能性があります。それぞれ見ていきましょう。

低カルシウム血症

元気や食欲がなくなる、震え、神経過敏、筋肉の硬直、痙攣など。カルシウムは神経の伝達に欠かせない物質であるため、これが減ると神経症状が現れます。

副甲状腺機能亢進症

元気や食欲がなくなる、嘔吐、多飲多尿、筋肉の萎縮や尿石症が見られることもあります。

副腎皮質機能亢進症

多飲多尿、食欲が増す、おなかがぽっこりと膨らんだポットベリーという状態になるなど。体に左右対称性の脱毛が見られることもあります。

対策

犬の骨粗しょう症の治療には、骨のカルシウムが血液中に放出されるのを防ぐ、ビスホスホネート系の薬剤を使用します。また、バランスの良い食事を与え、適度に運動させることも骨の育成に大切なことです。

また、他の病気が原因で骨粗しょう症が起きている場合、それらの治療も行います。

低カルシウム血症

カルシウムやビタミンDの投与を行います。

副甲状腺機能亢進症

副甲状腺を切除する外科手術が根治治療になります。ただし、副甲状腺をすべて取り除くと低カルシウム血症になるため、必ず1つは残さなければなりません。

副腎皮質機能亢進症

原因に合わせて薬による内科療法や外科手術を行います。ステロイド剤の長期使用によるものなら、少しずつ減薬し、休薬しましょう。

日光浴も骨粗しょう症予防に!

小腸でのカルシウムの吸収や尿細管での再吸収に欠かせない活性型ビタミンDの素は、ビタミンDです。犬はビタミンDを日光浴によって体内で合成しているため、犬の散歩も間接的に骨粗しょう症の予防につながります。栄養バランスのとれた食事、日光浴と運動を兼ねた散歩で、普段から骨粗しょう症予防に努めましょう。

また、骨粗しょう症を引き起こす病気を予防することも大切です。元気や食欲が突然なくなったり、多飲多尿になったりしたら、念のため、動物病院で相談すると安心です。

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