2016年3月16日更新

【獣医師監修】犬の動脈管開存症~原因・症状と対策

犬の動脈管開存症は、動脈管という血管が原因で起こる先天性の心疾患です。動脈管は犬が胎児のときに心臓の大動脈と肺動脈をつないでいた血管で、通常は生後しばらくすると閉鎖します。しかし動脈管開存症ではそれがいつまでも閉鎖せず、血液循環の障害を引き起こします。

最初は疲れやすい、運動をしたがらない程度だった症状が、成長するとともに心不全を起こしたり、若くして亡くなる原因になったりします。飼い主は犬の初期症状に気づいたら、早期に適切な処置をする必要があります。

原因

犬の動脈管開存症は先天性の心疾患です。動脈管は犬が胎児のときに、心臓にある大動脈と肺動脈をつないでいた血管で、本来、生後数日経つと自然に閉鎖し、消失します。しかし、動脈管開存症の犬では、動脈管が閉鎖せずに存在し続け、大動脈から肺動脈に血液が流れ込んでしまいます。

そもそも、なぜ動脈管は存在しているのでしょうか。病気の原因とメカニズムに触れる前に、動脈管の役割についてご説明します。

動脈管と胎児循環の仕組み

動脈管は、胎児の血液循環に欠かせないものです。生後、全身を巡って心臓に戻ってきた血液は、心臓に4つある部屋のうち、まず右上にある右心房に入ります。そして右心室(右下)→肺動脈→肺でガス交換→左心房(左上)→左心室(左下)と順に巡り、大動脈から全身に送り出されます。右心房と左心房、右心室と左心室の間にはそれぞれ壁があり、隣の部屋と血液が混ざることはありません。

一方、胎児のときは肺がほとんど機能しておらず、ガス交換された血液は母犬の胎盤から供給されています。しかし、肺が機能しないと右心系と左心系がつながらず、血液が全身を循環できません。そのため、胎児のときは肺を介さなくても血液が巡れるように、右心房と左心房の間に卵円孔というすきまが開いており、さらに、大動脈と肺動脈が動脈管でつながっています。

こうすることで、右心房に入ってきた血液は左心房→左心室→大動脈→全身へと流れることができます。また、右心房から右心室に流れた血液も、動脈管を通って肺動脈から大動脈へと合流して全身に送り出されます。この胎児特有の血液循環を「胎児循環」といいます。

動脈管開存症の原因とメカニズム

生後、通常は卵円孔はすぐに、動脈管も数日程度で閉鎖しますが、時折、動脈管が開いたままになることがあります。すると、左心室から大動脈に送り出された血液の一部が、動脈管を通って肺動脈に流れ込んでしまいます。肺動脈に入った血液は再び肺に入り、左心房→左心室→大動脈、及び一部が肺動脈に流入するという流れを繰り返します。

想定外の血液を処理しなければならない肺動脈、肺、左心房、左心室への負荷は次第に増し、やがて左心室は全身に血液を送れない心不全の状態となり、肺には処理しきれない血液がたまって肺うっ血を起こします。また、肺動脈が通常より多くの血液を送り出そうと働き過ぎて、肺高血圧症を発症することもあります。

このように、動脈管が正常に閉鎖しないと、様々な障害が起こります。なお、症状の程度は動脈管の太さによって変わってきます。

動脈管開存症になりやすい犬種は?

動脈管開存症は、トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフンドポメラニアンマルチーズ、コリー、シェットランド・シープドッグなどでよく見られます。また、メスの方が発症しやすい傾向にあります。

症状

犬の動脈管開存症は、子犬のころには症状が出ないことが多く、成長とともに次のような異変が現れ始めます。

  • 咳が出る
  • 疲れやすい
  • 運動を嫌がるようになる
  • 息切れしやすい
  • 呼吸が速くなる

さらに病状が悪化して、肺にたまった血液から水分が染み出して肺胞にたまれば、ガス交換がうまくできなくなり、湿った咳をしたり、呼吸困難に陥ったりします(肺水腫)。

また、当初は圧の高い大動脈から肺動脈に向かっていた血液の流れが、肺高血圧症が原因で肺動脈の圧が高まって逆転し、肺動脈から大動脈に流れ始めることがあります。肺動脈には全身から戻ってきた酸素の少ない血液が流れているため、それが動脈管から大動脈を通って全身に送り出されると、体は酸素不足に陥ります。症状としては、チアノーゼや失神、発育不良などが見られます。

対策

犬の動脈管開存症は、治療しないままだと生後数年以内に死亡することが多い病気です。この病気を根治させる治療法は外科手術です。開胸し、動脈管を糸で縛ったり、コイルで詰めたりなどして閉鎖します。ただし、動脈管を通じての血液の流れが肺動脈→大動脈に逆転してしまった場合は、手術をすると致命的であるため行えません。

肺水腫や心不全などの症状が出ている場合は、内科療法も行います。成長とともに症状が悪化していくため、子犬のうちに手術を受けておくのが望ましいといえます。

続いて予防法についてですが、この病気は先天性のため、予防はできません。ただ、動脈管開存症を発症しやすい種類の犬を飼う場合、異常が見られなくても、一度動物病院で検査を受けておいたほうが安心かもしれません。

早期発見・早期治療が大切です

動脈管がきちんと閉鎖しているか否かは、獣医師に診てもらったり、検査したりしない限り、外見上分かりません。そのため、成長とともに少しずつ出てくる、咳、疲れやすいといった異変に気づいたら、すぐに動物病院に連れて行きましょう。

動脈管開存症は放置すると手術のできない状態になるため、早期発見、早期治療が何より大切です。

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