2016年3月16日更新

香水やアロマはOK?  ​「犬の嗅覚」の疑問に獣医師が答える!

香水をつけていたら、近付いてきた友人の犬に逃げられたことがあります。みなさんもそんな経験はありませんか? 「犬は人間よりにおいを嗅ぎ分ける力が優れています。犬にも香りの好き嫌いがあり、その犬は香水の香りが苦手な可能性があります」と話すのは、獣医師で動物病院Rire(リール。東京都渋谷区)の橋本理沙院長。今回は、「犬の嗅覚」に関する疑問について、詳しく聞いてみました。

犬の嗅覚は、ヒトの100万~1億倍

――犬の嗅覚はヒトの1億倍発達していると聞いたことがありますが、これは本当でしょうか。

橋本獣医師 本当です。正確に言うと、犬がにおいを嗅ぎとる能力は、「犬が好むヒトを含めたほ乳類の汗のにおい」の場合で、人間の約100万~1億倍あるといわれています。ただし、犬種や犬の年齢、個体によって差はあります。犬もヒトも、鼻の中にある「嗅粘膜(きゅうねんまく)」でにおいを受け止め、嗅粘膜にある「嗅細胞(きゅうさいぼう)」がにおいを脳に伝えるセンサーの役割を果たします。嗅粘膜の表面積が広く、嗅細胞の数が多いほど、においを嗅ぐ能力は高くなります。犬の嗅粘膜の表面積は人間の10~50倍、嗅細胞の数は人間の20倍以上あると言われています。

――では、犬は人間が感じる100万~1億倍もの強烈なにおいを常に感じているということですか。

橋本獣医師 そうではありません。「犬の嗅覚がヒトの1億倍ある」と言っても、単純ににおいの強さが1億倍になるわけではないんです。においが1億分の1になっても嗅ぎ分けられる、ということです。

また、犬の嗅覚は、においの種類によっても変わります。犬は、ヒトの汗の成分の酢酸臭、尿に含まれるアンモニア臭には強い嗅覚を発揮します。一方で、花やニンニク、洗剤や薬品に含まれる人工の化学物質など、犬の生活にあまり関係のないにおいには、反応が鈍いと考えられています。それでも、ヒトよりにおい全般を嗅ぎ分ける能力が高いことに変わりはありません。

香水、化粧品、アロマは、嫌がらないかどうかで判断を!

――犬を飼っている場合は、香水はつけないほうがいいですか。

橋本獣医師 犬にも苦手な香りがあります。犬が香水の香りを嫌がるようなら、つけない方が犬の負担が少ないでしょう。普段から香水をつけていて、犬が特に気にしていないようであれば、つけても問題ないでしょう。

――化粧品やヘアケア製品など、ほかに日常生活でにおいに関して気を付けることがあれば教えてください。

橋本獣医師 化粧品やヘアケア製品のにおいを嫌がっていないかは注意してください。室内犬の場合、芳香剤や防臭スプレーのにおいが苦手な場合もあります。また、ヒト用のシャンプーは、犬にとっては香りも肌への刺激も強すぎることが多いため、必ず犬専用のものを使うようにしましょう。

――室内で犬と暮らしている場合は、アロマをたくのも控えたほうがいいですか。

橋本獣医師 アロマテラピーで使う精油は自然の植物から抽出されているため、人工の香料に比べるとほのかに香るのが特徴です。例えば、ラベンダーやレモングラス、ゼラニウムなどの比較的刺激の少ない精油を使ってアロマディフューザーで香らせる、バスタブに入れるなどの一般的な方法で楽しむならば問題はないでしょう。もちろん、犬が嫌がるようなら止めてください。
ただ、精油の成分は呼吸器からも入ってくる、犬がヒトの手についた成分をなめる場合もあります。アロマをたく際は、成分分析表が付いている精油を選び、農薬や防腐剤の成分が「検出されなかった」という結果が表示されていることを確認しましょう。

――最近は、ドッグアロマセラピーが広まっているようですが、犬も香りの作用でリラックスやリフレッシュをするものなのでしょうか。

橋本獣医師 アロマテラピーは、犬の心身の健康にさまざまないい効果をもたらすことが期待できます。ただし、精油を犬の体に使う場合には、健康状態の確認やパッチテストが必要なので、アロマの知識を持つ獣医師に相談することをおすすめします。また、好きな香り・苦手な香りは犬によって異なり、好みを尊重することが大切です。わたしが院長を務める動物病院では、カウンセリングを行った上で体質や目的に合う精油を選び、犬自身がその香りを気に入るかどうかをチェックしてから調合します。

――ありがとうございました。

犬の嗅覚が優れているとは聞いていましたが、予想以上に鋭いこと、またその分、繊細であることが分かりました。犬が周囲のにおいをどのように感じているのかを想像し、犬にとってなるべくストレスが少ない環境を整えていってくださいね。

記事提供:香水やアロマはOK?  ​「犬の嗅覚」の疑問に獣医師が答える!

ペット生活 獣医師



獣医師

ペット生活編集部の獣医師アカウント。ペットとの暮らしを豊かにするお役立ち情報をお届けします。

関連記事

『春』は冬に溜め込んだ不要なものをデトックスする季節

東洋医学は、中国を中心とする東アジアで行われてきた伝統医学です。犬のケアとしてツボ経絡マッサージ、温灸、薬膳などご家族ができる補完・代替療法として注目されています。 東洋医学では、自然界の……

【獣医師が解説】なんだか気分が落ち込む『五月病』もしかして犬猫にもあるの…!?

ゴールデンウィークが近づく頃になると、なんとなく気分が優れない、なんとなく憂鬱になる、無気力になる、食欲が落ちる、といったいわゆる「五月病」に悩む人もいるでしょう。ところで、犬や猫にも「五月……

大切なペットと『ちがう時間の流れ』で生きていることを感じられる定規。

大人になって様々なことが理解できるようになると、一緒に生活しているペットたちが自分と『ちがう時間の流れ』で生きていることが分かります。犬はだいたい15歳、猫はだいたい20歳が寿命だと言われて……

【獣医師監修】犬の回虫症〜原因・症状と対策

犬の回虫症は、イヌ回虫もしくはイヌ小回虫によって引き起こされる犬の病気です。主に犬に感染して問題となるのは、病原性がより強いイヌ回虫に感染した場合です。また、イヌ回虫は人に感染する危険性もあ……

子どもがいる家で犬を飼った方がよい4つの理由とは?

現在、ペットを飼っている人にペットを飼った理由を尋ねた複数の調査によると、「動物が好きだから」「気持ちが和らぐから」などと並んで「子どもの情操教育のため」という理由がトップ3に入っています。……