2016年3月24日更新

獣医師に聞いた! 絶対にワンちゃんに「やってはいけない」しつけかたとは?

飼っている犬が、手をかんだときや家具をかじったとき、どの程度叱ればいいか悩むことがあります。「しつけの方法や叱るべき範囲は犬によって異なりますが、どの犬にも共通のNG行為はあります」と話すのは、V.C.J.代官山動物病院で、ペットの行動問題の治療やしつけ方の指導を専門に行う行動診療科担当の藤井仁美獣医師。詳しいお話を聞いてみました。

犬は恐怖・不安を感じると、防衛のために攻撃的になる

犬のしつけについて、

「番犬として屋外で飼われる犬は不審者にほえるのが仕事ですが、室内で飼われている犬は、近隣の迷惑になるような、うるさいほえ方をしないようにしつける必要があります」と言う藤井獣医師は、こう説明を続けます。

「必要なしつけの範囲や方法は、犬が住む環境、生活スタイル、犬と飼い主の性格、普段の飼い主の接し方によって異なります。

ただし、次に挙げるような叱り方をすると、犬は、強い恐怖や不安を感じます。すると防衛本能が働き、言う通りにしないだけでなく、激しくほえる、かむなどの攻撃的な行動に出ることがあります。これは『恐怖性・防御性攻撃行動』と呼ばれる問題行動の一つで、頻繁に起こる場合は動物病院で治療を受ける必要があります」

ここで藤井獣医師に、「してはいけない犬のしつけ」を3つ、具体的に挙げてもらいました。

  1. 体罰を与える(たたく、蹴る、犬の体を吊り上げる、引っ張ると首が締まるタイプの首輪(チョークチェーン)で必要以上に首を締め付ける、など)
  2. 大きな音を出す
  3. 大声でどなる、丸めた雑誌や新聞紙などを床にたたきつけながら叱る、など
  4. 威圧的な叱りかたをする
  5. 体や口元をつかんで叱る、目を見つめて叱る、など

「目を見つめて叱るのがNG」とは意外ですが、なぜその行為が犬に恐怖や不安を感じさせるのでしょうか。藤井獣医師は、次のように答えます。

「犬にとって、真正面から目をじっと見つめる動作は威嚇(いかく)を意味します。そのため、ヒトの子どもにするように目を見つめて叱ると、犬が『ケンカを売られた』と勘違いして、飛び付く、かみ付くなどの攻撃に出る可能性があります。

ただし、犬が叱られた相手を自分より格上だと思っている場合は、攻撃する意志がないことを示してケンカを避けるために、目をそらすことが多いでしょう。それでも無理に目を合わせようとすると、犬は追い詰められ、やむを得ず相手を攻撃することがあります」

犬の防衛本能を刺激しない方法をとる必要があるということです。

悪さの直後に目を見ないで短い言葉で叱り、望ましい行動をさせて褒める

では、犬に恐怖心を与えずに、「今、している行動を止めて」と伝えるには、どうすればいいのでしょうか。

「犬は、3秒以上たってから叱ると、何のことで叱られているか分からなくなると言われています。うるさく吠える、家具をかじる、部屋でオシッコをするなどの困った行動をしているときか、直後に『ダメ』、『ノー』、『いけない』などと、短く一言で叱りましょう。

その言葉で犬が行動を止めたら、すかさず、『おすわり』、『こっちに来て』などと、してもよい行動を指示し、それに従えたら褒めてあげましょう。望まない行動を止めさせるだけでなく、同時に望ましい行動をさせて褒めることがポイントです」(藤井獣医師)

家族によって叱る言葉が違うと、犬はどう反応するのでしょうか。

「同じ行動に対して、叱るヒトと叱らないヒトがいると犬が混乱します。叱る言葉やタイミング、犬がしていいこと、してはいけないことを家族で統一しましょう。例えば、『犬用の毛布、おもちゃ以外のものをかじったときは、その場でダメと言う』というように、ルールを決めておきます」(藤井獣医師)

ただし、藤井獣医師は、「叱ってもその行動を止めず、むしろ回数が増えてしまう場合があります」と注意を促し、その理由を次のように説明します。

「犬にとっては、ヒトに叱られた行為が、『ヒトから関心を得られる』というごほうびになってしまっているためです。この場合は、叱ることは一切せず、無視をする、おもちゃを見せて気をそらすといった方法が適切です。そして、叱らなくて済むように、犬がよくかじる家具を移動する、散歩中に排泄させるなど、環境や生活スタイルを整えてください」

最後に藤井獣医師は、しつけに困った場合について、こうアドバイスを加えます。

「動物病院やトレーニングスクールで、個々の犬と飼い主に合わせたしつけの指導を受けることをおすすめします。

また、過剰にほえる、人をかむなどの問題行動が見られ、自分で先述の方法を試しても直らない場合は、熱がある、おなかが痛い、足をねんざしているなどの体調不良やケガが原因の可能性も考えられます。いつもと違うなと思い当たる場合は、動物病院を受診してください」

筆者はこれまで大きな声で叱る、繰り返し叱る、目をそらす犬に「こっちを見なさい」などと言っていましたが、間違いだったと気付きました。犬の行動や習性を理解したうえで、適切なしつけ法を実践したいものです。

記事提供:獣医師に聞いた! 絶対にワンちゃんに「やってはいけない」しつけかたとは?

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