2016年12月4日更新

【獣医師監修】【耳の症状】猫の音への反応が鈍い時に考えられる病気

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名前を呼んでも猫が反応しなくなったり、寝ている時にそばで大きな音がしたりしても、耳を動かさず寝続けていることはありませんか?通常、猫は人間の3倍もの音域まで音を聞きとれるといわれ、リラックスしているようでも、耳は音の方向に微かに動いています。それが見られなければ、猫は何らかの原因によって音が聞こえていないか、聞き取りづらいのかもしれません。

では、猫の音への反応が鈍い時には、どんな病気が考えられるのでしょうか。まず、音が聞こえる仕組みから順を追ってご説明します。

 

耳の構造と音が聞こえる仕組み

耳は外耳、中耳、内耳で構成されています。外耳は、ピンと三角形に立っている耳介と外耳道から成り、外耳道は耳の穴からL字になって鼓膜まで続いています。中耳には鼓膜、鼓室、耳小骨、耳管、内耳には半規管、蝸牛、前庭がそれぞれあります。

音は集音機能のある耳介で集められ、外耳道に入って鼓膜を震わせ、中耳の3つの耳小骨で増幅されます。そして内耳の蝸牛に至り、蝸牛にある有毛細胞によって電気信号に変えられ、蝸牛神経から大脳に伝えられます。そこでようやく音が音として認識されます。

音を認識するためのルートのどこかが障害されると、猫の耳の聞こえが悪くなります。

猫の耳が聞こえづらくなる原因

猫の耳が聞こえづらくなる原因には、先天性のものと後天性のもとに分けられます。先天性の場合は、生まれつき音を感知するために必要な器官が作られなかったために起こります。一方、後天性の原因には、外耳・中耳・内耳の炎症、耳垢の詰まり、良性の腫瘍、寄生虫による感染症などがあります。

具体的にどのような病気が原因となるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

 

猫の音への反応が鈍い時に考えられる病気

猫の音への反応が鈍い時に考えられる病気について、先天性難聴と後天性難聴に分けてご説明します。

先天性

先天性難聴

先天性難聴は青い目の白猫に起こる可能性があります。原因は被毛を白くする遺伝子にあると考えられています。

白猫は、被毛を白くする遺伝子が色素細胞であるメラノサイトを抑制することで、全身真っ白になります。この抑制されたメラノサイトは中耳にある蝸牛と関わりがあり、蝸牛のコルチ器という器官と同じ細胞から分化しています。

コルチ器は音を増幅するために必要な器官です。しかし、被毛を白くする遺伝子がメラノサイトを抑制すると、同じ細胞から分化するコルチ器もうまく作られなくなって先天的に難聴になります。

なお、青い目の白猫であっても、すべての猫が難聴になるとは限りません。

後天性

外耳炎

猫の外耳炎は、耳の穴から続く外耳道が何らかの原因で炎症を起こす病気です。細菌や真菌の感染、耳ダニの寄生、アトピー性皮膚炎などのアレルギー、シャンプーや水といった異物混入などによって起こります。また、飼い主の誤った耳掃除が原因で、外耳道に傷がつき、その傷に細菌が感染して炎症を起こすこともあります。

外耳炎を放置していると、皮膚が分厚くなって、音の通り道である外耳道が塞がれることがあります。また、外耳炎の炎症が中耳にまで及ぶと、滲出性中耳炎を起こして音が聞こえづらくなることもあります。

猫が外耳炎を発症すると、かゆみのために耳を後ろ足でかいたり、壁に頭をこすりつけたりといった行為をします。

滲出性中耳炎

猫の滲出性中耳炎は、中耳にある鼓室に液体がたまることで起こります。中耳にある部屋で、入ってきた音を響かせる役割があります。

中耳に炎症が起きると、粘膜から傷を治す働きのある滲出液が出ます。それが鼓室にたまることで、空洞が減って外から入ってきた音が響きづらくなり、耳が聞こえにくくなります。

滲出性中耳炎は、外耳炎の炎症が中耳に及ぶことでよく起こります。

真珠腫性中耳炎

猫の真珠腫性中耳炎は、鼓膜の一部が中耳の方に入りこんで袋状となり、そこに耳垢がたまって真珠を思わせる白い塊を作る病気です。滲出性中耳炎が慢性化することで起こる可能性があります。

真珠腫は周りの骨を破壊しつつ大きくなる特徴があり、中耳の耳小骨にも被害が及ぶことがあります。耳小骨は入ってきた音を増幅する役割があるため、壊れると音の聞こえが悪くなります。治療が遅れると、内耳にまで悪影響を及ぼすことがあるため、早期治療が欠かせません。

その他、真珠腫性中耳炎では痛みを伴うため、猫は飼い主が触ろうとすると怒ることがあります。また、しばしばにおいのある耳だれも出ます。

内耳炎

内耳部分に炎症が起こる内耳炎は、外耳炎や中耳炎を治療せずに放置した結果、発症することが多い病気です。外耳炎や中耳炎からの炎症が蝸牛に及ぶと、音を電気信号として大脳に伝える蝸牛神経がダメージを受け、音を認識しづらくなって難聴になります。

内耳炎を発症すると、初期に吐き気や食欲低下が見られます。さらに炎症が内耳の前庭部に及ぶと、意識していないにも関わらず眼球が規則的に動く眼振や、問題のある耳の方に頭が傾く捻転斜頸などが起こることもあります。

炎症性ポリープ

猫の炎症性ポリープは中耳の鼓室や耳管から発生する良性の腫瘍で、鼻咽頭ポリープともいいます。まだ発症する原因は解明されていませんが、子猫など若い猫に多いことから、先天的にポリープができやすい要因があり、発症していると考えられます。

ポリープは外耳道や鼻咽頭に向かって大きくなります。外耳道に向かって大きくなると、ポリープは鼓膜を破って外へ外へと成長し、やがて外耳道を塞いでしまいます。

鼓膜が破れることで、外耳道の細菌などが中耳に侵入して炎症を起こすこともあります。するとその炎症によって鼓室に滲出液がたまり、滲出性中耳炎になります。

音を奥に伝える鼓膜の破れや、入ってきた音を響かせる鼓室に液体がたまることで、音が聞こえづらくなります。さらに音の通り道である外耳道が塞がれるため、音が中耳に届きにくくなります。

その他、炎症性ポリープができると、耳だれが出る、痛みがあるために耳を気にするしぐさをする、呼吸がしづらそうになるといった症状が現れます。

耳垢栓塞

飼い主による誤った耳掃除によって、逆に耳垢を耳の奥に押し込んでしまうことがあります。すると耳垢は塊となり、さらにそこに耳垢がたまって外耳道を塞ぐことがあります。その状態を猫の耳垢栓塞といいます。音の通り道である外耳道が塞がれるため、猫は音を聞き取りづらくなります。

普段、猫の耳垢は飼い主が気になるほどたまることはないため、耳垢がたくさん出る病気を発症していると起きやすいといえます。

耳垢腺腫/耳垢腺がん

猫の耳垢腺腫と耳垢腺がんは、外耳道に分布する耳垢腺という汗腺が腫瘍化して耳の中にイボのようなものができる病気です。良性のものを耳垢腺腫、悪性のものを耳垢腺がんと呼びます。イボは大きくなって外耳道を塞いでしまうことがあり、それによって音が耳の奥に通りにくくなって、聞こえづらくなります。

また、猫の耳垢腺腫や耳垢腺がんでは、痛みやかゆみがあるために猫が耳を気にするしぐさをしたり、耳だれやにおいが認められたりすることもあります。

まとめ

猫が音に反応しづらくなったら、何らかの病気が潜んでいる可能性が高いといえます。猫の難聴のきっかけとなる中耳炎や内耳炎は、外耳炎の炎症が奥に進行して発症することが多いため、外耳炎の兆候が見られたら速やかに治療することが大切です。

ただ、病気でなくとも、年齢を重ねると徐々に音の聞こえが悪くなります。高齢猫、老齢猫で音への反応が悪くなったり、以前より猫の声が大きくなったりしたら、加齢性の難聴によって耳が聞こえづらくなっている可能性も考えられます。

いずれにせよ、気になる症状が現れたら、念のため動物病院で相談するようにしましょう。

 
 

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