2016年7月7日更新

【獣医師監修】犬の筋ジストロフィー〜原因・症状と対策

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人間の病気で難病指定されているものに筋ジストロフィーというものがありますが、この筋ジストロフィーを犬も発症するということをご存知でしょうか。筋ジストロフィーは筋肉の機能に不可欠なタンパク質の機能に障害が起きるため、筋肉が働けなくなってしまい、筋力が低下してしまう病気です。今回はそんな犬の筋ジストロフィーについて詳しくご紹介しましょう。

 

犬の筋ジストロフィーの原因

犬の筋ジストロフィーは遺伝性筋疾患の総称で、筋肉を働かすために必要なタンパク質の遺伝子に変異が生じたために起きる病気です。この病気は遺伝的に発生するもので、変異の生じたタンパク質の遺伝子を持つ犬が発症する病気として知られています。筋ジストロフィーは遺伝性筋疾患の総称ということもあり、細かくは種類や分類がいくつもあります。生まれながらにして筋肉の発達がみられないものもあれば、ある一定の年齢までは筋肉が機能しているにもかかわらず、20歳前後の年齢を境に筋肉がどんどん失われていくなど多様なものがあります。遺伝子の変異から筋肉の働きに影響が出るまでの過程は、どういった分類の筋ジストロフィーかにより変わってきます。

犬の筋ジストロフィーの多くはオスで発症することがわかっており、メスで発症する場合は染色体の突然変異が確認されています。好発犬種はゴールデンレトリバーで、ゴールデンレトリバー筋ジストロフィーという疾患異名を持つほどです。もちろん、ゴールデンレトリバー以外の犬種でも発症することがあり、ラブラドールレトリバーやサモエド、ロットワイラー、ウェルシュコーギー、ミニチュアシュナウザーなどがいます。

犬の筋ジストロフィーの症状

筋ジストロフィーは筋肉の疾患なので、主に運動機能障害などの症状が見られます。運動機能障害といっても、走り回ったり動き回ったりというだけでなく、日常の生活さえままならなくなるような障害もあります。筋力が低下することにより、咀嚼や嚥下が難しくなり、食事が行えなくなったり、眼球運動の障害や表情筋の障害により顔が表情に乏しくなります。さらに筋ジストロフィーの恐ろしいところは筋力が低下することにより直接的に生じる障害以外にも、二次的な障害も出るということもあります。

筋力低下による直接的症状

筋ジストロフィーによる直接的症状には食事困難やそれに伴うよだれの量の増加、成長スピードの低下、運動量の低下、歩き方の異常など日常生活における動きそのものが難しくなってきます。初期の頃ではまだ歩けたりしますが、悪化してくると体を支えることも困難になり、歩けなくなります。また筋肉の減少により極端に痩せていきます。

筋力低下による間接的症状

筋ジストロフィー発症により誘発される二次的障害には関節が固くなって稼働しなくなっていく拘縮や、変形、骨粗しょう症、呼吸不全、栄養障害などがあります。また心臓の筋肉に影響が及ぶことで心不全や腸の筋肉に影響が及ぶことで胃腸の機能に障害が起きたりしてしまいます。白内障やけいれんなどを引き起こすこともあり、筋ジストロフィーによって死に至ることもあります。

 

犬の筋ジストロフィーの対策

筋ジストロフィーは人間の疾患としても現段階で画期的な治療方法が見つかっておらず、犬の治療に関してはまだ後回しになっているのが現状です。完治を目的とするよりもどちらかと言えば症状が悪化しないことを目的として治療が行われたり、進行を遅らせるために生活環境が見直されたりします。基本的には残った時間を愛犬にどのように過ごさせてあげるのかと向き合っていくようになります。愛犬が筋ジストロフィーを発症してしまった場合は一刻も早く獣医師に相談し、なるべく早く生活改善などを行いながら症状が悪化しないように温かく見守りましょう。

生活の改善

筋ジストロフィーは治療方法がないといわれている病気なため、現在のところ有効な治療方法はありません。筋ジストロフィーを発症後、どれぐらいで死に至るのかは犬によって様々ですが、大体1年前後が目安です。愛犬に負担をかけないように介護生活を行うことが愛犬を少しでも長生きさせる方法です。嚥下困難などにもなってくるので流動食をあたえストレスのない環境を作ってあげましょう。

対症療法

筋ジストロフィーによって引き起こされた症状を取り除く治療を行います。症状によっては治療が行えないこともあります。また誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなってくるので、肺炎には十分注意が必要です。

まとめ

筋ジストロフィーは発症したからと言って急激に症状が悪化していく病気ではありません。もちろん、どれくらい早くに飼い主が気付けるのかでその後の進行具合が変わってくることもありますが、1日ごとににできていたことができなくなっていたりと言った症状が出てきます。現在根治的な治療方法は見つかっておらず、根治は難しいとされていますが、愛犬と少しでも長く一緒に時間を過ごせるように無理のない生活をおくらせてあげましょう。