2016年6月14日更新

【獣医師監修】犬の慢性肝炎〜原因・症状と対策

犬が発症するととても危険な病気の一つに慢性肝炎というものがあります。

慢性肝炎は肝臓が長期にわたって炎症を起こしている状態を指します。徐々に症状が出るようになって長期間に渡り症状が続くものなので、体が麻痺してくることもあり、飼い主が気付けないこともよくあります。

肝臓は体の中でも重要な役割を担っている器官で症状が悪化すると取り返しのつかないことが起こることもあります。

犬の慢性肝炎の原因

肝臓は体の中でも重要な役割を担う器官で、ビタミンやホルモンの生成、炭水化物、脂質、たんぱく質の合成や分解、消化酵素の生成、体内の毒素の解毒などさまざまな働きを行っています。慢性肝炎はその肝臓で起こる炎症で、急性肝炎が長期化して慢性肝炎に発展したり、遺伝的に発生したり、有害物によって発生したりとさまざまな要因で発生してしまいます。

遺伝的要因によるもの

若齢で慢性肝炎を発症する場合、遺伝的要因により発症していると考えられています。

慢性肝炎を好発する主な犬種にはアメリカンコッカースパニエル、イングリッシュコッカースパニエル、ラブラドールレトリバー、ドーベルマン、スカイテリア、スタンダードプードルなどがあります。

中毒によるもの

何らかの有害物質が体に入ることで、時間をかけて徐々に肝臓にダメージを与える結果、慢性肝炎を引き起こしてしまうことがあります。

主な毒物には銅、抗痙攣薬、ヒ素、硫酸トリメトプリム、水銀、鎮痛剤、ホルモン製剤、ジメチルニトロサミン、オキシベンダゾールなどがあります。

感染症によるもの

ウィルスや細菌によって引き起こされた急性肝炎がうまく完治せず、長期に渡り炎症が続いた結果、慢性肝炎に発展してしまうことがあります。

主な要因となるものにはイヌ伝染性肝炎やレプトスピラ症、好酸球性肝炎などがあります。

犬の慢性肝炎の症状

肝臓はさまざまな器官とかかわりを持ち、またさまざまな器官を働かせるための成分を生成、分解を行うとても重要な器官です。その肝臓で炎症が長期に渡って続くと、体のあちこちで症状が現れるようになります。

しかし肝臓はその働きが重要な分、一部で問題が起こっても機能し続けるという特性があり、初期の段階ではなかなか異変が現れない特徴があります。そして治療が遅れてしまうことで肝硬変を併発することもあり、そうなると愛犬の命の危機にもかかわってくるとても恐ろしい病気です。

初期の症状

慢性肝炎の場合、徐々に徐々に炎症が広がり、悪化していくので初期の症状が出にくい傾向があります。

進行状態の症状

肝臓の炎症が広がってくると食欲がなくなり、元気もなくなります。下痢や嘔吐をするようになり、どんどん痩せていきます。お腹に水がたまったり、歯茎や耳の中、目の白い部分が黄色くなり黄疸の症状が見られるようになることもあります。

犬によっては黄疸の症状が出るまで元気にしていることもあり、急激に体調の変化が現れることもあります。さらに進行すると血液凝固や肝性脳症、肝硬変などを引き起こすこともあります。肝硬変を引き起こすようになると命にかかわるので非常に危険です。

犬の慢性肝炎の対策

慢性肝炎の治療は、どのくらい炎症が広がっているのかを確認したうえで適切に行っていきます。

肝硬変などを発症している場合には一刻を争うこともあります。早い段階で治療を開始できれば、これまでと変わらず元気で過ごすこともできますが、場合によっては一生治療を行いながら療養生活で余命を過ごさなくてはいけないこともあります。

対症療法

肝臓で起こっている炎症を長引かせないためにも、炎症を鎮めるための治療や現在発症している症状の軽減治療が行われます。そのうえで低下した肝臓の機能を補うための治療を行います。

主な治療法は輸液や栄養補給、食事療法などがあります。

投薬治療

慢性肝炎を発症させている原因に合わせた治療を行っていきます。抗酸化剤、亜鉛、抗炎症剤、銅キレート剤、免疫抑制剤などの薬を使い症状が悪化しないように治療を試みます。肝硬変を引き起こさないために抗繊維化物質を使用することもあります。

基本的に投薬を使った治療は一生続く場合がほとんどです。

予防

慢性肝炎を発症させないために定期的に健康診断などを行い、愛犬の健康チェックを行います。

特に慢性肝炎は初期の症状が出にくいため定期的な検診が最も効果的な方法です。また中毒症状や感染症から慢性肝炎を引き起こすこともあるので、これらの要因を取り除くようにします。急性肝炎を起こしている場合には、完治しても再発してしまうこともあるのでしばらくは検診を行うようにしましょう。

まとめ

犬の慢性肝炎はとても恐ろしい病気にもかかわらず、なかなか発見が難しい病気です。

知らない間に状態が悪化し、肝硬変などを引き起こしている場合も多々あります。肝臓はその機能が3分の1程度破壊されてしまうと、命の危険もあるほど重要な器官です。慢性肝炎の特徴をよく把握したうえで愛犬に異変が見られた際にはすぐに対応できるように、普段から十分に注意しておくようにしましょう。

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