2016年6月14日更新

【獣医師監修】犬の慢性腸炎〜原因・症状と対策

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犬の病気の中でも腸の粘膜が慢性的に炎症を繰り返す病気、慢性腸炎をご存知でしょうか。急性腸炎などと違い、症状が繰り返し何度も起こることで慢性化してしまう慢性腸炎は、体がだんだん痛みなどの症状に対して鈍くなってくることもあり、症状が軽く見られがちですが、愛犬には非常に負担になる病気です。

栄養不足に陥り、さまざまな病気を発生させる原因にもなりかねないので初期の段階で治療に取り組めるようにしましょう。

 

犬の慢性腸炎の原因

犬の慢性腸炎は大腸と小腸の粘膜が炎症を繰り返し起こす病気のことです。

慢性腸炎を引き起こしてしまう本当の原因はまだ明確にされておらず、現在も研究が行われている段階です。しかしそれでもいくつかの要因が考えられており、慢性腸炎の原因には炎症細胞によるもの、細菌によるもの、寄生虫によるもの、アレルギーによるものなどがあり、何が引き金となって炎症を引き起こしているのかによって治療方法も変わってきます。

炎症細胞によるもの

慢性腸炎は炎症性腸疾患と言われることもあり、炎症細胞が腸の粘膜全体に広がることで慢性的な炎症が起こるといわれています。主な炎症細胞にはTリンパ球、好酸球、プラズマ細胞、肥満細胞などがあります。

細菌によるもの

慢性腸炎の発症に一部の細菌がかかわっていると考えられています。主な細菌にはサルモネラ菌やカンピロバクター菌などがあり、これらの菌が増殖することで炎症が発生するといわれています。

寄生虫によるもの

慢性腸炎の発生に寄生虫の感染が関与していると考えられています。主な寄生虫にはジアルジアがあり、この原虫に寄生されてしまうことで腸が炎症反応を示すといわれています。

アレルギーによるもの

慢性腸炎を引き起こす原因の一つとして人間の食べ物や人工食品添加物などに誘発されて起きる食物アレルギーが考えられています。主なアレルゲンには動物性タンパク質や食品添加物、人工着色料、保存料、乳淡泊、小麦グルテンなどがあります。

そのほかの要因

そのほかの要因として、遺伝的要因や腫瘍による誘発などが考えられています。

遺伝的要因としてはある一定の品種の犬での発生率が高く、現在も遺伝と慢性腸炎の研究が進められています。また腸にできた腫瘍を囲むように炎症ができることから腫瘍が慢性腸炎を引き起こしていると考えられています。

犬の慢性腸炎の症状

腸は体の中でも栄養を吸収し、老廃物を排出する非常に重要な器官です。その腸で炎症が起こることでさまざまな症状が見られるようになります。しかし、急性腸炎と違い急激に症状が悪化するわけではなく、徐々に炎症が進んでいくので症状も緩やかに表れます。それでも下痢や嘔吐を繰り返すため犬にとってはかなり体力を奪われてしまったり、腸から栄養が吸収できなくなるので栄養失調に陥ることもあり、長期にわたり苦しみ続けてしまう病気に違いはありません。

初期の症状

初期の段階では、嘔吐や下痢がたまに見られ、元気がなくなっていくのがわかります。

進行状態の症状

症状がどんどん悪化してくると、頻繁に嘔吐や下痢を繰り返すようになり、食事を摂っていても腸から栄養が吸収できないため栄養失調に陥ることもあります。またさまざまな器官に栄養が行き渡らなくなるため他の病気の併発することもあります。

お腹が大きくなったり、口臭がきつくなったり、水分を大量に摂取したりするようになり愛犬が苦しんでいる様子がたびたび見られるようになります。

 

犬の慢性腸炎の対策

慢性腸炎ではどういった症状が起こっているのかに合わせて治療を行っていく対症療法が施されます。ただ慢性化している腸炎を完治させるのは難しく、長期にわたる治療が必要になります。

一度完治したと思っても再発することもあり、定期的に検査などを行い継続的に治療を行っていくことが重要です。

対症療法

慢性腸炎の原因に合わせてそれぞれに治療を行っていきます。

細菌や寄生虫が原因となっているときには抗生物質や駆虫薬を使用し治療を行い、腫瘍などが原因となっているときには手術などを行います。またアレルギーが原因の場合には愛犬の身の回りからアレルゲンを取り除くようにします。粘膜の炎症を抑えるためにステロイド剤や抗炎症剤を使用することもあります。

生活改善

食事療法や生活習慣を見直すことを対症療法と併せて行っていきます。

基本的には長期的な治療になることが多く、完治が難しいとされる慢性腸炎です。そのため生活改善は症状を和らげるためにも、治療を順調に進めるためにも欠かせないものになります。

予防

慢性腸炎は症状が極端に表れるものではないので、ついつい飼い主が気付かず重症化してしまっている場合が多い傾向にあります。

治療をスムーズに行うためにも早期発見・早期治療は欠かせないものです。定期的に病院で健康診断を受けることが何よりもの予防法です。そのうえで、こまめに水を取り替えたり、栄養バランスの取れたドッグフードを与えたりすることが重要です。また寄生虫や細菌感染を防ぐためにもワクチン接種を行うようにしましょう。

まとめ

犬の慢性腸炎は発症していてもなかなかすぐに気づくことができず、完治が難しくなってからやっと病院に愛犬を連れていくケースが多い病気です。確かにたまに見せる嘔吐や下痢であれば様子見として自宅療養を行うケースも多いですが、慢性腸炎では立て続けにずっとこれらの症状が見られるわけではないのでその間に悪化してしまいやすい傾向にあります。普段から愛犬とのスキンシップを測りながら様子に異常が見られたときは獣医師に早い目に相談するように心がけましょう。