2016年7月13日更新

【動物法務のプロが解説】ペットを飼っている場合の原状回復ってどこまで?

賃貸住宅でペットを飼っていれば、ペットによる物件への汚れや傷をつけた場合など、退去する時の原状回復が気になる方は多いかと思います。何か特別な注意が必要なの?ペットを飼っている場合の原状回復ってどこまで?など疑問をお持ちではないでしょうか?

ある程度の知識を持っておくことは、いざという時に役立つこともあります。原状回復費用の具体的な査定については、一律に判断することは難しいので、その基準や指針から大まかにみていきましょう。

賃貸住宅における原状回復とは?

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まず原状回復とは、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、

賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること

国土交通省ホームページ -より引用
と定義しています。

この「ガイドライン」は法律ではなく、法的拘束力があるものではありませんが、実務や判例等を考慮し、基準・指針としてまとめたものとされていますので、トラブル防止には十分に参考になるものです。以下この「ガイドライン」を参照・引用などしながらペット飼育可・不可に分けてみていきましょう。

ペット飼育不可だったら・・・

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本来あってはならないことですが、ペット飼育不可賃貸住宅での飼育も実情としてはあるかと思います。「ガイドライン」に照らし合わせると、ペット飼育を禁止しているのにもかかわらず飼育している等の事情から、もしペットによる損耗・毀損があれば、それは通常の使用とはいえず、賃借人に復旧する義務があるということになると思われます。

ペット飼育可だったら・・・

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ペット飼育可ということであれば、ペットによる損耗・毀損は賃借人の通常の使用を超えるような使用とはいえないと思われます。家賃に含まれているとの考え方もあるでしょう。このような考えでは、原状回復費用は賃貸人負担となるということです。

ただ、ペット飼育による損耗等をある程度予測して可としているとはいえ、ペット飼育可であれば何でも無制限に賃貸人負担ということではないということもまたいえるでしょう。

ペット飼育可賃貸住宅の賃貸人としては、それを見越して特約を定めていることがあります。特約につき、「ガイドライン」の中に事例として判例(P82・事例18・東京簡易裁判所判決 (平成14年9月27日))が挙げられています。

  • 修繕義務に関する民法の原則は任意規定であるから、これと異なる当事者間の合意も、借地借家法の趣旨等に照らして賃借人に不利益な内容でない限り、許されるものと解される
  • ペットを飼育した場合には、臭いの付着や毛の残存、衛生の問題等があるので、その消毒の費用について賃借人負担とすることは合理的であり、有効な特約と解される

等と示しています。

まとめ・予防策

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賃借人は、これら原状回復をめぐるトラブルにならにないように、契約や規約、ペット飼養の細則等ルールを確認し遵守しましょう。ペットのしつけ・トレーニングの実施、爪切りやブラッシングなどのペットへの日常ケア、室内のこまめな清掃、壁や柱、床などを保護をすることも予防対策になります。もちろん元の壁等は傷つけてはだめです。いずれにしても不安な場合は各分野の専門家等に相談するとよいでしょう。

賃貸人は、特約条項だけでなく、原状回復工事の目安単価を表示するなども必要です。ペット飼育可・共生賃貸住宅の運営を予定されている方は、それらのポイントを十分に考慮して始められるとよいでしょう。

執筆協力:伊藤成規(行政書士 (一社)どうぶつ法務福祉協会・賃貸住宅ペット問題担当アドバイザー)

山口 一哉



(一社)どうぶつ法務福祉協会・代表理事(行政書士)

一般社団法人どうぶつ法務福祉協会・代表理事/行政書士横浜いずみ共同事務所・代表。(一社)ペットライフデザイン協会理事。幼少期に犬を飼っていたことと、捨て猫との暮らしをきっかけに、何か出来ることはないかと模索していたところ、「動物法務」の存在を知り、開業を決意。平成21年行政書士事務所開業、平成23年横浜市に移転。成年後見、遺言、人と動物に関する許認可等各種手続や書類作成の支援が主な業務。平成27年一般社団法人どうぶつ法務福祉協会設立、同代表理事に就任。1級愛玩動物飼養管理士、愛護動物虐待防止管理士、少額短期保険募集人の資格を保有。

一般社団法人どうぶつ法務福祉協会HP
行政書士横浜いずみ共同事務所HP
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