2016年6月4日更新

6/4~10は歯と口の健康週間。愛犬・愛猫のお口の健康について獣医師が解説!

6月4日〜10日は「歯と口の健康週間」です。以前は、「6月4日は虫歯予防デー」とも言われていましたよね。ところで、愛犬や愛猫の歯や口のケアは十分できていますか?犬や猫も歯磨きによる歯と口のケアはとても大切です。すでにしっかり歯磨きしているという人も、あまりできていないという人も、犬や猫の歯と口の健康について見直しておきましょう。

犬や猫に「虫歯」はあるの?


実は、犬ではいわゆる『虫歯』は非常にまれです。また、猫では『虫歯』はないと言われています。

それでも歯磨きは必要です。犬や猫がかかりやすい「歯周病」


虫歯になることはあまりない犬や猫ですが、『歯肉炎』や『歯周炎』にはかかりやすいことが知られています。歯肉炎と歯周炎を総称して『歯周病』と呼びますが、犬と猫の口腔内の病気で最も多いものが歯周病です。2歳以上の犬や猫の80%が歯周組織(歯肉や歯を支えている歯槽骨といった、歯をとりまく組織の総称)の疾患を持っていると言われています。

歯周病の起こり方

歯垢の形成

歯垢は、細菌、食物のカス、唾液由来のタンパク質など様々なものから形成されています。歯垢の細菌が常に歯肉に接触していると、やがて歯肉炎を起こします。

歯石の形成

歯垢が唾液の中のカルシウムなどを取り込んで石灰化したものが歯石です。歯石が形成されると、歯磨きで除去できないばかりか、表面がでこぼこしているために、その表面にさらに歯垢が付着しやすくなります。やがてその歯垢も歯石となり、歯石はどんどん成長します。

歯石を放置していると…

歯垢や歯石に含まれる細菌により、歯肉炎が進行します。すると、歯と歯肉の間にある『歯周ポケット』がさらに深くなり、その中にも歯垢や歯石が蓄積されます。これにより、周辺の炎症はよりひどくなっていきます。

歯肉炎から歯周炎へ

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歯周病の最初の段階、歯肉のみで炎症が起こり、赤くなったり腫れたり、出血しやすくなったりしている状態は『歯肉炎』です。この状態であれば、適切な治療で元の状態に戻すことが可能です。

適切な治療をせず、歯周組織へと炎症が進むと、『歯周炎』を起こします。炎症は周辺の組織を破壊しながらさらに深部へ進み、やがて歯を支えている歯槽骨と呼ばれる骨をも侵します。すると、歯はぐらつき、ついには抜けてしまいます。炎症によって歯周組織が破壊されたら、治療を行なっても完全に元の状態に戻すことはできません。

歯周病の治療は?

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どの段階で治療をするかによって、方法は大きく異なります。初期で軽度の歯肉炎であれば、ブラッシングなどにより歯垢を除去し、口腔内を清潔にします。また、必要に応じて投薬を行なうこともあります。

一方、歯石の貯留が重度で炎症がひどい場合は、全身麻酔下で歯石や歯垢を除去しなくてはなりません。また、深い歯周ポケットが形成されてしまっている場合にはポケットの中も清潔にします。さらに、歯のぐらつきが著しければ、抜歯を行ないます。これらの処置も全て全身麻酔が必要です。

口臭だけではない!歯周病が引き起こすその他の問題


歯石や歯垢、歯周病がもたらす問題として有名なものは強い口臭ですが、歯周病が引き起こす問題はそれだけではありません。 歯周病を放置すると、愛犬や愛猫がさらに大きな健康問題を起こすことがあります。

歯根膿瘍

歯の根元にあたる歯根部が細菌感染を起こし、膿がたまる病気です。これが進行すると、病巣から口の中の粘膜や皮膚にむけて膿の通り道が形成されます。時には、皮膚や口の粘膜をつきやぶって膿が出てきてしまうこともあります。

顎の骨折

細菌感染が下顎の骨を侵すほど進行すると、やがて下顎の骨は破壊されます。破壊された下顎の骨は非常にもろく、何かの拍子に骨折してしまうことがあります。

歯周病は予防が大切

歯周病を起こさないためには、予防が何より大切です。予防の基本は、毎日の歯磨きです。

歯磨きに使う道具


切歯2本分くらいの毛幅で、毛のやわらかい歯ブラシを選んでください。歯ブラシは必ず専用の物を使いましょう。歯ブラシを嫌がる場合や、歯磨きの練習中は水で濡らしたガーゼを使ってもよいでしょう。歯磨きガムだけでは、歯磨きの効果は不十分です。飼い主がしっかり丁寧に歯垢をとり除くことが大切です。

歯磨きの方法


歯磨きは、唇をめくるようにして、手早く丁寧に歯を磨いていってください。歯磨きを継続するためには、楽しく、リラックスしてケアすることが大切です。子犬や子猫のうちから、ガーゼなどで歯をさわる練習をしておくとよいでしょう。

歯磨きの練習方法

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はじめは歯ブラシをもたずに、口を触る練習から始めましょう。慣れてきたら、次は唇をめくることに慣れさせてください。このとき、嫌がるなら無理にはしなくて構いません。また別の日に少しずつ練習してください。

唇をめくることができたら、指や湿らせたガーゼで歯に触れてみてください。これはなるべく短時間で終わらせるようにしましょう。

歯に触れることができるようになったら、歯ブラシで1本ずつ磨いてみてください。一度に全部磨けなくても構いません。残りの歯は翌日に磨きましょう。

これを、右側ができたら左側も、といったように少しずつ練習していってください。唇をめくって歯の外側を磨くことに慣れてきたら、歯の後ろのすきまに指をいれて口をあける練習をしてから、歯の内側を磨きましょう。

上手にできたら、しっかりと褒めてあげてくださいね。

歯ブラシを嫌がる場合には

歯磨きシートや濡らしたガーゼを指先に巻き、歯を一本ずつ拭いてください。どうしても口を開けない、口を触られることを嫌がる、といった場合には、歯磨き効果のあるおもちゃを利用する方法もありますが、効果としてはこれだけでは不十分です。根気よく、時間をかけて歯磨きの練習をしましょう。

歯磨きの回数

犬や猫では、歯の表面をきれいにしても、24時間以内には歯垢が付着し、3〜5日で歯石が形成されると言われています。食後すぐでなくても構わないので、必ず1日1回は歯を磨く習慣をつけましょう。

口と歯の健康は、長生きの秘訣

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口と歯の健康を維持することは、健康で長生きするためにとても大切です。上手な歯磨きをマスターして、毎日の習慣にしてくださいね。

ペット生活 獣医師



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