2016年5月24日更新

【獣医師が解説!】オス猫に多い毛色、メス猫に多い毛色

「三毛猫にはメスしかいない」という話を聞いたことはありませんか。多種多様な猫の模様のパターンの中には、ほとんどメスにしか見られない模様や、メスよりオスの方が多く見られる模様があります。

猫の被毛の模様が性別と関係しているということは、不思議なことだと思いませんか?今回のテーマは、猫の毛色と性別についてです。少々難解な内容も含まれるかもしれませんが、一度、ゆっくり学んでみてはいかがでしょうか。

毛色について理解するために必要な、染色体と遺伝子の話

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染色体とは、ほとんどの細胞の中にある構造物です。1本は母由来、もう1本は父由来の遺伝情報をもち、2本でペアとなっています。遺伝子とは、染色体のごく一部分で、体を構成したり、秩序正しく機能させたりするためのタンパク質を作らせる暗号といえるものです。この遺伝子は、それぞれ染色体の決まった場所に固定されています。

性別はどう決まるの?

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基本的に染色体は、同じ大きさ、同じ形の2本がペアとなっていますが、例外があります。それは、性別を決定する染色体、「性染色体」です。性染色体には「X染色体」「Y染色体」があり、X染色体とY染色体では大きさがずいぶん異なります。

X染色体が二本であれば(XX)であればメスX染色体とY染色体というペア(XY)であればオスとなります。

猫の毛色を決める遺伝子とは?

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猫の毛色を決定する遺伝子は、白、黒、茶、白斑など、9種類が知られています。これらの遺伝情報もやはり、それぞれ特定の染色体の上に固定されています。

体全体を真っ白にする遺伝子である「W遺伝子」を例に挙げると、ペアになっているそれぞれの染色体上に、W(真っ白にする)もしくはw(真っ白ではなく、他の色が出る)いずれかひとつずつをもちます。そうして、WW・Ww・wwといったように、W遺伝子のペア(遺伝子型)が作られます。

猫の被毛の色はどう決まるの?

毛色を決める遺伝子型はどう決まるのか?

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子猫は、毛色を決定する9種類の遺伝子それぞれについて、母猫、父猫から ひとつずつ遺伝子を受け継ぎます。母猫、父猫から受け継いだ遺伝子の組み合わせによって、その猫がもつ遺伝子型が決まります。

例えば、体全体を真っ白にする遺伝子であるW遺伝子であれば、母猫から「W」父猫から「W」を受け継げば、その猫は「WW」という遺伝子型を持つことになります。一方、母猫から「W」、父猫から「w」という遺伝子を受け継げば、その猫の遺伝子型は「Ww」です。

9種類の遺伝子それぞれについて同じことが起こり、それらの遺伝子型の組み合わせによって、その猫の体の色が決まるのです。

実際にどのような色になるのか?


母猫から受け継いだ遺伝子と、父猫から受け継いだ遺伝子が同じものであれば(WWやwwの場合)、その遺伝子が表現する通りの色となります(W:真っ白、w:白以外の色が入る)が、母猫と父猫から受け継いだ遺伝子型が異なる場合(Wwのような場合)の色については、少々複雑です。

W遺伝子に代表されるように、「優性」と呼ばれる形質(W)が「劣性」と呼ばれる形質(w)を抑える(結果として、Wが表現されて真っ白になる)というパターンが比較的よく見られるものです。しかし、毛色を茶色にする遺伝子(O遺伝子)では事情が異なります。

例えば、母由来の遺伝子が茶色にするように指示して(O)、父由来の遺伝子が黒(茶色以外)にするように指示した(o)場合(つまり、Ooという遺伝子型の場合)、その猫は茶と黒のモザイク模様となるのです。

このように、9種類の遺伝子が非常に複雑に組み合わさることで、数えきれないほどの模様のバリエーションが生まれます。

なぜ、三毛猫はメスだけなのか

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ここでやっと本題に入ります。
三毛猫について考えるにあたって、白(W遺伝子) 、白斑(S遺伝子)、茶(O遺伝子)、という3つの遺伝子に注目します。

W遺伝子は全身が白になるか、他の色が入るかを決定します(WWとWw:全身真っ白、ww:白以外の色が出る)。wwの場合、体に白色が入るかどうかはS遺伝子が決定します(SSとSs:白斑あり、ss:白斑なし)。

一方、黒と茶はO遺伝子により制御されています。(OO:茶、Oo黒と茶色のモザイク、oo:黒)があります。

O遺伝子以外の遺伝子は常染色体(性染色体以外の染色体)にあるため、性別とは独立して遺伝します。しかし、O遺伝子はX染色体にあるため、子猫の性別の決定に伴って遺伝子型が決まります(伴性遺伝)。これが、毛色と性別が関係している理由です。

X染色体が2本あるメスでは、OO、Oo、ooのいずれの遺伝子型も起こりうる 一方、オスでは、X染色体がひとつしかないので、O(茶色)もしくはo(黒)の二種類のみしか発現しません。

ここで、「三毛猫」になるには、
「ww(真っ白ではなく) SsもしくはSS(白斑をもち)Oo(黒と茶色をもつ)」
と言う組み合わせが必要です。白に加えて、黒と茶色を持てるのは、つまり、Ooの遺伝子型を持てるのはメスのみなので、三毛猫はメスのみということになります。

三毛猫のほかにも、メスのみで見られる模様がある!


黒と茶色のまだら模様である「さび」といわれる模様も、遺伝子型Ooにより表れます。この毛色のパターンには、三毛猫のような白班はないため、
「ww(真っ白ではなく)Oo(黒と茶色をもち)ss(白班をもたない)」
という組み合わせとなります。Ooをもつのはメスのみなので、三毛猫と同様にさび猫もメスのみなのです。

オスの三毛猫やさび猫がいる?!


本来、Ooの遺伝子型を持ちうるのは、X染色体を二本もつメスのみのはずです。しかし、本来XY であるはずのオスが、染色体の異常によりXXY という性染色体を持つことがあります。すると、XXYのオスはOo の遺伝子型をもつことができるようになるのです。そういったオスでは三毛猫、もしくはさび猫になる可能性があり、実際にそのような猫もごくまれにいます。

オスに多い模様もある?

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三毛猫、さび猫はほとんどメスのみですが、実は「茶トラ」は比較的オスに多いパターンです。これも、O染色体が性染色体であるX染色体上にあることが関係しています。ただ、メスの茶トラは、オスの三毛猫やさび猫ほどにまれというわけではありません。茶トラのオスの方が多いものの、メスの茶トラも一定数は存在します。

とても奥が深い猫の毛色の世界

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少々難しい話になってしまいましたが、猫の毛色と遺伝の世界は非常に奥が深く、実際にはさらにもっと複雑です。たくさんの因子がからみあって生み出される、無数ともいえる猫の模様のパターンは、時に私達をとても楽しませてくれますね。より詳しく知りたい方は是非、猫の被毛と遺伝に関する書物をひもといてみてください。

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