2016年5月31日更新

【獣医師が解説】ペット向け経口補水液とは?ペット向け経口補水液の使い方と注意点

経口補水液は、開発途上国などで多くのこどもの下痢に対して効果をあげていることで注目され、近年は日本でも脱水状態の治療に利用できる食品として知られてきています。テレビCMや薬局の店頭などで経口補水液を目にしたことのある人も多いでしょう。

ところで、最近ではペット向けの経口補水液も販売されていることを知っていますか?暑くなってきて熱中症が心配されるこの時期、ペット向け経口補水液が気になっている人もいるのではないでしょうか。今回のテーマは、ペット向け経口補水液について、その使い方や注意点についてです。

経口補水液とは?

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経口補水液は、いわゆるスポーツドリンクとは異なります。経口補水液は脱水状態の治療に用いられる病者用食品で、一般的なスポーツドリンクより塩分が多く、糖分が少なく配合されています。水分とともにナトリウムやカリウム、糖分などが速やかに吸収され、脱水状態の人に水分や塩分などを補給し、それらを適切に維持することを目的としたものです。

経口補水療法とは?

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嘔吐や下痢、過度の発汗による脱水状態を改善させる治療法のひとつです。安静にして経口補水液で水分と塩分などの補給を行ないます。失った水分や塩分などを経口摂取で補う、という考え方のもと、重症ではない脱水状態に対して近年普及しつつある治療法です。

嘔吐や下痢が長く続いたり過度に発汗したりすると、脱水状態となることがあります。このとき、体からは水分だけでなく、塩分なども失われています。そのため、経口補水療法によって水分と塩分を同時に補給することが大切なのです。

獣医療でも取り入れられつつある、経口補水療法

最近では、ペットに対しても経口補水療法が取り入れられはじめています。経口補水療法は、重症でない脱水状態の犬や猫に対して、効果的で安全性の高い治療方法として注目されているのです。

獣医療における経口補水療法のメリット

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経口補水療法は、経口補水液を飲ませる治療法なので、従来の点滴治療のように特別な器具や技術を必要としません。飼い主にとって、経済的な負担を軽減できる点はひとつの利点と言えるでしょう。また、自宅で飼い主が実施できるため、点滴のために血管を確保したり、長時間点滴につないだりすることによる犬や猫への負担がかからない点も大きなメリットとなるはずです。

そのため、これまでであれば点滴のために動物病院に通ったり、入院したりしていた犬や猫でも、状態が安定していて、経口補水液を口から飲める場合には、経口補水療法が適しているケースもあるのではないかと考えられています。

どのような時に経口補水液を飲ませるの?

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下痢や嘔吐で軽度の脱水状態になっているとき、発熱や熱中症で脱水状態になっているときに、経口補水液を飲ませることで水分や塩分などの補給ができます。

どのようにして経口補水液を飲ませるの?

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下痢や嘔吐のたびに少しずつ飲ませることで、点滴に匹敵する水分と塩分などの補給効果があるとされています。嘔吐があるときには、スプーンなどで少しずつ何度も与えます。あわててたくさん飲ませてしまうと、飲んだ経口補水液を吐いてしまうおそれがあるので気をつけてください。嘔吐しないようであれば、獣医師の指示した量と回数を守って飲ませてください

経口補水液を飲ませる時の注意

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人が経口補水液を飲む時に重要な注意として、「医師から脱水状態時の食事療法として指示された場合に限り飲むように」というものがあります。この点については、犬や猫でも同様と言えるでしょう。特に、腎疾患や心疾患などの疾患を持つ犬や猫には細心の注意が必要です。

経口補水液は脱水状態時の水分や塩分などの補給を目的としたものです。そのため、経口補水液を多く飲むことで疾患が治るというものではありませんし、健康な時に飲むものでもありません。

さらに、経口補水液を必要以上にガブガブと飲ませることも避けてください。塩分の摂りすぎになり、逆に状態を悪化させる原因となります。

これらの点を知った上で、適切に経口補水液を飲ませましょう。

熱中症予防には、スポーツドリンクという選択肢も。

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健康状態に問題ないときの熱中症予防など、日常的に水分と塩分などの補給を行なう場合には、スポーツドリンクという選択肢があります。最近では、犬用のスポーツドリンクも販売されています。スポーツドリンクは嗜好性が高いことが多いので、水を飲んでほしい時に飲んでくれない犬や猫の熱中症予防として試してみてもよいでしょう。

ただし、スポーツドリンクは糖分が多く含まれるため、飲ませすぎには注意してください。人間用のスポーツドリンクは特に糖分が多いです。犬や猫に与えるならば必ず希釈して与えてください。また、糖尿病をはじめとした疾患を持つ犬や猫にスポーツドリンクを飲ませる場合には、獣医師に相談しておくことをお勧めします。

経口補水液は適切な使用が大切です

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脱水状態は犬や猫にとってもとても辛いものです。治療を行なわずに脱水状態が進行すると、命に関わることもあります

急な下痢や嘔吐、発熱や熱中症で脱水状態となってしまった犬や猫のため、自宅で点滴治療に近い効果が期待できる経口補水液を常備しておいてもよいかもしれません。ただし、使用にあたっては動物病院に連絡をとり、獣医師の指示を仰いでください。また、経口補水液は原疾患を治療するものではありませんので、必ず獣医師による適切な治療を受けてください

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