2016年6月24日更新

僕らの居場所は言わにゃいで その4:黙ってカメラを向けにゃいで

「外猫にカメラを向けると顔を背けるんですが、どうにかならないものでしょうか」

これまた、よくある質問ですが、自分の場合は逆に「丁度いいところにいるなぁ」とカメラを構えた途端、猫が「遊ぼー」と近付いてきてしまい写真が撮れなかった・・・なんて事もしばしば。逃げられるよかマシとする考え方もありますが、逃げても逃げても追いかけてくる猫もいるので、これはこれで考えものですよ。

今回は猫の気持ちを考えながら写真の撮り方について少し話をしてみたいと思います。

僕らの居場所は言わにゃいで

■そもそもカメラを向けると猫はなぜ顔をプイッとするのか?

家猫でも外暮らしの猫でも、カメラを向けると顔を背ける子は少なくありません。僕は獣医さんではないし、動物学者でもないので、猫という動物の習性や心理的な反応を語る言葉は持ち合わせがなく、代わりに10年以上猫を撮り続けてきた経験から申し上げるのですが、2つの理由があるのでは?と感じています。

ひとつは「レンズが生物の眼に見えて怖い」

カメラのレンズはその役割から「眼」に喩えられることがありますが、よく見ると形状も「眼」そのもの。一眼の広角レンズや魚眼レンズは前玉(先端のレンズ)が出っ張っているものも多く、猫にしてみりゃカメラのレンズは自分の顔ほどもある一つ目の怪物です。

これを人間の立場に置き換えると、昼寝して目を開けたら映画館で上映前によく見かける「映画泥棒」が寝顔をのぞき込んでいたようなもの。ピンとこない方は是非「映画泥棒」で検索してみてください。

僕らの居場所は言わにゃいで

今すぐ昼寝を中止して、逃走したくなる場面。

それを顔を背けるだけで済ませる猫の胆力にむしろ脱帽です。

そして、もうひとつ。

これは一眼レフなどの大きいカメラに限った事ですが「カメラを構えると、顔が隠れて見えない」のを不愉快に感じているように思います。犬は嗅覚に長け、猫は聴覚に長けているため、視覚にはそれほど頼っているように見えませんが、それでもコミュニケーションのために視覚情報を使っている部分は少なからずあり、好意的な表情を浮かべていた人間の顔がカメラの後ろに隠れて無機質な「映画泥棒」になるのは少なからず不安を感じるのかもしれません。

カメラから顔を離して声をかけると「お、なんだ。お前、そこにいたのか」と安堵の表情を見せる猫も結構いるのですが、実はこのへん、人間を撮る時にも通じるものがあります。モデルさんの表情が少し硬いな…と感じたり、もっと相好を崩した表情が欲しいと思ったらピントと構図を決め、その姿勢のままカメラから顔を離して話しかけ、相手がカメラを意識しなくなった瞬間を狙います。

■黙ってカメラを向けにゃいで

この事からカメラを構えると顔を背けたりする子達をうまく撮るコツは「カメラを意識させない」の一点に尽きます。人間だって見ず知らずの人はモチのロン、見知った人であっても、いきなりカメラを向けられると緊張するのだから。言葉の通じない猫は余計、良い印象を持たないでしょう。

黙ってカメラを向けにゃいで、まずはしゃがんで声をかける。

僕らの居場所は言わにゃいで

「よっ。調子はどうだい?」※写真は近すぎる例。

ここで気をつけなければいけないのは、周囲に人がいる場合です。猫に向かって親しげに声をかけている様は猫好きなら温かい視線を送ってくれますが、普通の人からは「かなりアレな人」を見る冷たい視線を送られること間違いなし。

まあ、そんな事を気にしていたら外暮らしの猫の写真は撮れないのですけれど・・・

とりあえず挨拶を済ませたら、カメラを構えます。

すぐさま、ぷいっと顔を背ける子もいるでしょう。

そこでカメラを意識させない、幾つかの工夫をします。

まずはカメラから注意を逸らすこと。

僕のカバンには常時、猫じゃらしと猫用ブラシに僅かばかりのドライフード、そしてプラスチックの小皿をが入っております。ドライフードの袋をカサカサすれば、確実にカメラから注意は逸れるのですが、たいていの場合は「それ、よこせー」と近づいてきてしまうため得策ではないし、そもそも食べ物で釣るというのも何だか気持ちよくないので、初見の猫が相手の時は話しかけながら猫じゃらしを使うことにしています。

僕らの居場所は言わにゃいで

猫じゃらしをカバンに常備してない方は、というか殆どの人がそっち側でしょうが、その場合はキーホルダーやカメラのストラップをヒラヒラさせるのも良いでしょう。

しかし、それでもカメラから意識が逸れない子は一旦、離れた場所から望遠レンズで狙いましょう。いつでも逃げられる距離を作ってあげることで緊張が解け、カメラに対する好奇心が湧くのか良い感じに目線をくれるし、昼寝をしている子を起こしたくない時などにも有用です。

また黒くて大きい、シャッターやフォーカスの音も派手な一眼レフに限っていえば、猫たちが警戒してしまうこともあるので、威圧感を与えないコンパクトカメラを携行し、使い分けるというのもオススメ。

僕らの居場所は言わにゃいで

「黒くて大きいカメラ、PENTAX 645Z」

僕らの居場所は言わにゃいで

「常時携行用の富士フイルム X100」

通勤通学に重量があり嵩張る一眼レフは不向きですが、コンパクトカメラなら常時携行にも最適。日頃から写真を撮ることを習慣にして「さあ、撮るぞ!」的な気負いや肩のチカラが良い感じに抜けると、猫に緊張感を与えずに写真を撮れるようになるでしょう。

写真を撮るとき。それを人前で公開するとき。

相手が猫であろうと人間であろうと、自分が撮られ、公開される側になったら…と想像を巡らせてみてください。黙ってカメラを向けられたら気分が悪いのは人も猫も同じ。そして、撮られた写真とセットで自分の生活圏をネットに晒されたら困るのも、また然り。

黙って撮られた写真が自宅の住所とセットで公開されたら…アメリカなら訴訟ものです。

「相手の気持ちになって」とは事あるごとに聞く言葉ですが「自分の身に置き換えて考える」と「僕らの居場所は言わにゃいで」という言葉の持つ想いがよりリアルに感じられるのではないでしょうか。

それでわ、また。

★撮影方法や外猫との接し方など写真にまつわるご質問を募集中です!場所の情報以外は何でもざっくばらんにお答えいたしますので、instagram、Facebookまでお寄せください。

末吉弦太



写真家

カメラマンとして企業のウェブサイト・広告用の写真を撮影する傍ら、各地を転々としつつ外暮しの猫たちを撮り続ける。 主要機材:PENTAX 645Z、Nikon D5、FUJIFILM X100 撮影場所を公にすることのリスクや問題について警鐘を鳴らすハッシュタグ「#僕らの居場所は言わにゃいで」を使って、猫の居場所をシェアするのではなく、静かに見守る気持ちをシェアしませんか?

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