2016年7月15日更新

僕らの居場所は言わにゃいで その7:今さら紹介しにゃいで

【告知】

7月23〜24日 都立産業貿易センター台東館で開催される猫のイベント「にゃんだらけ」で、ちょっぴり写真を展示します。

あわせて「僕らの居場所は言わにゃいで」に賛同してくださっている猫写真家さんたちの作品を集めたフォトブックの展示もありますので、是非足を運んでみてください。

http://nyandarake.tokyo

と、まあ、いきなり宣伝でコンニチワ。

そういやあ、自分のことをキチンと説明してなかったなぁ・・・ふと、そんなことを考え、今回は自分自身の話でもしてみようかとキーボードをタカタカ叩いております。今さら自己紹介・・・?と思う方もあるでしょう。

そして自分自身、自分を語るというのはどうも苦手だから、instagramで寄せられた質問やペット生活さんからの「猫写真家にしてみたい質問」に答えるかたちで薄ぼんやりと知って貰えたらな、と思います。

僕らの居場所は言わにゃいで

■猫を好きになったきっかけ

実は20歳くらいまでは猫が苦手でした。

自分にとって猫の原体験は幼稚園くらいの頃。庭に現れた三毛猫を触ろうとしたら噛みつかれ、ものの見事に血だらけになったのが猫とのファースト・コンタクトでした。祖父母に泣きついたら「考えなしに触ろうとするお前が悪い」と一蹴されて、血が出るわ、説教されるわ、こんな不条理があっていいものか・・・と子供心に思ったものです。

まあ今になってみれば祖父母の言う通りで、もしも自分に子供がいて猫に噛みつかれたと泣いて訴えてきたら、きっと同じ風に叱ることでしょう。

とはいえ子供に大人の理屈が通じるはずもなく。

以来、どうにも猫に対する苦手意識はぬぐえず、給食の残りのパンはもっぱら近所の野良犬たちに配っておりました。おかげで野良犬に追いかけ回され、よっぽど猫の相手をするよりもスリリングだったような気がします。

そして20歳を過ぎたある日。

友人が生後三ヶ月ほどの仔猫を段ボールに詰めて現れたのであります。

「お前が引き取らないと、保健所に連れてかなきゃいけないんだけど。どうする?」

猫は苦手なんだと説明すると、いきなりな事を言う友人は憤慨した様子で「お前、見殺しにするのか?ひどいやつだな」と自分を罵倒してきたのですが、保健所に連れて行く、とか言ってる人に言われたくない台詞No.1ですね。

もちろん友人は本気で仔猫を保健所に連れて行くつもりはないのでしょうが、一方で仔猫の里親が見つからずに困っているように見えたので「里親が見つかるまでね」と言って家に連れて帰ることにしました。

で、里親は探したのか?

というと、連れて帰ったその日のうちに仔猫の愛らしさにメロメロとなってしまったので、全く探しませんでした。その時の子が現在の我が家の長老、チャオさん(上)です。

僕らの居場所は言わにゃいで

一緒に連れて帰ってきた姉妹のルネ(下)は、2016年1月に亡くなりましたが、このふたりと出会ったことで自分は「猫生活」そして「猫写真」の扉を開いてしまったのかもしれません。

■「僕らの居場所は言わにゃいで」が生まれるまで

うっかり「猫写真」の扉をノックして以来、家の猫たちだけでは飽き足らず、あちらこちらへ出向いて猫の写真を撮り続けてきたのですが、その中で知り合いになった、彼らを見守る人達が直面する悩みが「捨て猫」と「虐待」のふたつなのは、連載の最初に書いた通り。

雑誌やテレビで「猫が沢山いる」と取り上げられるたびに、捨てられる子や、傷つけられる子が増えるという傾向はSNSとスマートフォンが普及してから、いっそう顕著なものに・・・以前はそれとなく撮影場所について書く事もありましたが、次第に「猫の居場所はおいそれとつまびらかにすべきではない」と考え方を変えていったのです。

そして2012年。

十年近く猫を撮り続けていた場所が、ある出来事から野良猫が沢山いる事が有名になってしまった途端、長い付き合いだった猫たちが大量に連れ去られ、傷つけられ、そして新しい猫が捨てられるという出来事がありました。あまりの理不尽に、もう猫の写真を撮ることをやめてしまおうかと思ったほどです。

しかし、自分ひとりが写真を撮ってアップするのをやめたところで、猫の写真を場所の情報付きでアップする人が消えてなくなるワケではない。

だったら——。

猫たちに最高の瞬間を撮らせてもらい、その写真が人目に触れるようネット上に投稿して「場所を書くのはやめましょうよ」と呼びかけに使おう。それから今日までの四年、猫写真を撮り、instagramなどのSNSに投稿しては呼びかけを続け、実際に撮っている場所では猫の写真を撮る人に声をかける・・・そんな地味な行動を自分の手の届く範囲で続けてきました。

呼びかけに賛同してくれる人は少しずつ増えてきている一方で、昨今の猫ブームから「猫スポット」の特集を組む雑誌やテレビ(地権者や土地の人の許可を得ない取材も少なくない)が増え、SNSでの投稿が増え、捨て猫や虐待は収まる気配がありません。

今は我が家の三男坊であるグレッチも去年、兄弟5匹で捨てられた子猫でした。

僕らの居場所は言わにゃいで

そうした行為に情報が使われる危険性を多くの人に知ってもらいたい。

そのための合言葉としてinstagramやFacebookで意見を募り生まれたのが

「僕らの居場所は言わにゃいで」なのです。

■猫も集まりゃ高級外車

ちなみに猫の一生にどれくらいの費用がかかるか、皆さんはご存じですか?

ザックリ年間で10万円としても、20年生きる場合はおおよそ200万円。国産のコンパクトカーがオプション付きで買えるくらいです。結構、お金がかかりますよね。もちろん捨てられた猫たちがきっちり20年生きるとは限りませんが、捨てられてから平均で5年生きたとしても1匹50万円。自分が十年近く写真を撮り続けてきた場所では去年、40匹近く捨てられたので単純計算で2,000万円。高級外車を買ってもお釣りがくるくらいの負担が土地の人達に押しつけられているのです。そこに虐待で怪我する子たちの治療費も加えたら、彼らが生きていくのに必要な金銭的負担は増える一方。

「沢山いるから1匹くらい捨てても・・・」

塵も積もればなんとやら。猫も集まりゃ高級外車。

お金が全てじゃありませんが、望んでもいないのにメディアやSNSに場所を明かされ、拡散され、その結果1年で2,000万円の負担が発生するのだとしたら、たまったものではありませんよね。

だから、居場所はつまびらかにするべきではない。自分はそう思います。

猫のためだけではなく、そこで暮らす人達のためにも。

・・・結局、自己紹介をするつもりが、結局はこのブログのタイトルの紹介になってしまい「今さら紹介しにゃいで」と思う人もいるかもしれませんね。次回はまた猫写真の撮り方についてお話する予定です。

それでわ、また。

 

末吉弦太



写真家

カメラマンとして企業のウェブサイト・広告用の写真を撮影する傍ら、各地を転々としつつ外暮しの猫たちを撮り続ける。 主要機材:PENTAX 645Z、Nikon D5、FUJIFILM X100 撮影場所を公にすることのリスクや問題について警鐘を鳴らすハッシュタグ「#僕らの居場所は言わにゃいで」を使って、猫の居場所をシェアするのではなく、静かに見守る気持ちをシェアしませんか?

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