2016年9月10日更新

【動物法務のプロが解説】犬同士のトラブル・散歩中にほかの犬に咬まれた!

街なかを歩いていると、様々な場所や時間に犬を散歩させている人をよく見かけるようになりました。なかには小型犬から大型犬まで、多頭で一人の方が連れて散歩している姿を目にすることもあります。多くの犬が飼い主と一緒とはいえ、街なかにいるわけですから、散歩している方同士ですれ違うこともありますし、何かのきっかけでトラブルに発展する可能性もゼロではありません。

普段は問題のない犬であったとしても、何かのきっかけでパニックになってしまい、結果的に制御不能になる可能性も否めません。どういった事情が生じたにせよ、単なるアクシデントでは済みませんので、そうした時の対処法や予防策などを事前に知識として持っていたほうがよいでしょう。今回は散歩中に飼い犬がほかの犬に咬まれた場合を想定し、解説していきます。

法律ではどうなっている?

犬_素材basset-hound-345646_640
まず、原則として咬んだ犬の飼い主は損害賠償責任を負うとされています。

民法第718条第1項では「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。」と規定し、動物の占有者の責任を定めています。「占有者」とは今回のケースでは飼い主のことをいいます。

この動物の占有者の責任(民法718条1項)は、通常一般に他人の権利や利益を侵害した場合よりも重いものとなっています。犬の管理に関して動物の種類及び性質に従い相当の注意をしていたときは責任を免れるということですので、加害側飼い主が自身に落ち度がなかったことを立証できない限り、免責されないということになります。相当の注意をもって管理していたといえるかどうか?ですが、様々な諸事情を総合的に考慮して判断されます。裁判例では厳しい判断がされており、免責が認められることは少なく、無過失責任に近いものとされているようです。

※その他ケースによっては、刑事上の責任も考えられます。こちらは「犯罪」であり、刑罰を受けます。わざとけしかて咬みつかせたということであれば、不法行為責任を負う上に、器物損壊罪、動愛法違反などが可能性としてあります。今回は民事上の責任にしぼって解説していきたいと思いますので、割愛させていだだきます。

損害賠償について

imasia_2064978_S
加害者側飼い主に損害賠償として請求できると考えられるのは、通常必要な範囲での犬の「診察費・治療費」、「通院に必要な交通費」、犬を動物病院に連れていく時に会社を休んだ場合の「休業損害」などがあります。犬の死亡の場合は、新たな犬の購入費用すなわち時価額と考えられます。

慰謝料も考えられますが、ペットは法律上「物」とされていますので、物損事故としての扱いとなり、あくまでも飼い主に対する精神的苦痛に対する損害ということになります。裁判例ではよほどのことでないかぎり、慰謝料請求は難しく、認められてもかなり低額な場合が多いようです。しかし、最近は人とペットとの関係性が変化していることから、対応は変わってくるかもしれません。

そして損害賠償額は、被害者側が不用意に近づいて咬まれたなど、被害者側に落ち度があった場合は、その割合に応じて減額されることがあります。これを「過失相殺」といいます。

トラブル対処と予防

imasia_5334586_S

トラブル対処

それでは、トラブルが発生した時の対処についてみていきましょう。もし加害者側の犬が興奮状態にあるときなどは、その興奮が収まるまで適切な距離を置くことで二次的なトラブルが発生しないようにします。現場状況などを記録できるのであれば、記録しておいたほうがよいでしょう。

犬にケガがなく元気そうにしていたとしても、感染症など後々のトラブルを避けるために、動物病院へはきちんと行きましょう。緊急を要する場合でも、後でも話し合いが出来るよう加害者の方に連絡先を教えてもらってください。診察費・治療費を支払う旨の約束をするといろいろ円滑に進めやすいのですが、後日詳細を詰めるという形でもやむをえないかと思います。

治療費のことなど損害賠償について話し合うことになるのですが、口約束では後々トラブルになる可能性が高いため、書面に残したほうがよいでしょう。また加害者に文句の一つも言いたくなることもあるかとは思いますが、お互いにヒートアップするとまとまる話もまとまらなくなりますので、相手の対応にもよりますが、あまり熱くならない程度に話し合いをしていきましょう。ただし、威圧的な態度で来られたなど問題が生じた場合は警察を呼ぶなどしたほうがよいでしょう。周りの方や目撃者の協力を得ておくなども重要です。

予防のためにしておくこと


そして予防策としてのいくつかの注意点ですが、基本的には「きちんとリードを付けて管理下に置く」、「散歩中、他の人やペットに対して一定の距離を保つ」、「犬が興奮状態になりそうな時などは最悪散歩を中止し、一度家に帰って様子を見る」という点に尽きると思います。加害者にならないためにも重要なことです。

これらの注意点はどれも飼っている犬の特徴をいかに熟知しているか、関係性を構築できるかということにつながる部分ですので、常日頃から愛犬とコミュニケーションをとりましょう。

注意事項

なお、他にも想定される事例や法的問題点などがたくさんありますが、ここでは論点などをしぼり、一例をあげて解説いたしました。また、実際には難しい判断を迫られたり、このとおりにうまくいかないこともありますので、一人で悩まず、弁護士等法律専門家に相談しましょう。

執筆協力:有吉圭太((一社)どうぶつ法務福祉協会理事・動物総合相談ボランティア)

山口 一哉



(一社)どうぶつ法務福祉協会・代表理事(行政書士)

一般社団法人どうぶつ法務福祉協会・代表理事/行政書士横浜いずみ共同事務所・代表。(一社)ペットライフデザイン協会理事。幼少期に犬を飼っていたことと、捨て猫との暮らしをきっかけに、何か出来ることはないかと模索していたところ、「動物法務」の存在を知り、開業を決意。平成21年行政書士事務所開業。平成23年横浜市に移転、事務所名をいずみ代書に変更。成年後見、遺言、人と動物に関する許認可等各種手続や書類作成の支援が主な業務。平成27年一般社団法人どうぶつ法務福祉協会設立、同代表理事に就任。1級愛玩動物飼養管理士、愛護動物虐待防止管理士、少額短期保険募集人の資格を保有。

一般社団法人どうぶつ法務福祉協会HP
行政書士横浜いずみ共同事務所HP
ブログ

関連記事

知ってるようで知らないペットを守る「改正動物愛護法」を巡る主な出来事

2016年。今年は「改正動物愛護法」が施行されて3年目だって知っていましたか? そもそも「改正動物愛護法」って何?という方も多いのかも知れません。 この法律は、「ペットの命を守る……

犬の動物愛護

【動物法務のプロが解説】犬同士がケンカをしてケガをした/させた

犬は日頃からしつけをしていても、性格や相性の問題というものがどうしてもありますので、散歩ですれ違ってもまったく気にしない場合もあれば、遠くからでも声や姿に反応して興奮状態になる場合もあります……

犬の法律

犬が大好きな人でも意外と知らない?!犬の雑学 5選

飼い主さんなら毎日身近なところにいる家族のような犬ですが、調べてみると意外な事実がたくさんあります。そこで今回は、まだあまり知られていない犬の体の秘密、犬の歴史、ギネスに登録されている犬など……

犬の雑学

飼っている犬や猫に自分の財産を残すことはできる?ペットに遺産相続する方法とは?

2011年「世界で最もお金持ちの猫」としてブラッキーという猫がギネスブックに認定されました。 ブラッキーは映画製作者ベン・リー氏が飼っていた猫でしたが、遺言により彼の死後にその財産のす……

犬の幸せ

【動物法務のプロが解説】賃貸住宅でペットをベランダに出してもOK?考えられるトラブルとその対処法

近年ペット飼育を可とする賃貸住宅が増えてきています。ペットは共に生活していく家族の一員であると捉え、ペット共生賃貸住宅と表現されるところも見られます。当初からペット飼育可や専用とする物件や、……

犬の法律