2016年10月1日更新

【動物法務のプロが解説】犬同士のトラブル・追いかけられて犬がケガをした

山口 一哉



(一社)どうぶつ法務福祉協会・代表理事(行政書士)

一般社団法人どうぶつ法務福祉協会・代表理事/行政書士横浜いずみ共同事務所・代表。(一社)ペットライフデザイン協会理事。幼少期に犬を飼っていたことと、捨て猫との暮らしをきっかけに、何か出来ることはないかと模索していたところ、「動物法務」の存在を知り、開業を決意。平成21年行政書士事務所開業、平成23年横浜市に移転。成年後見、遺言、人と動物に関する許認可等各種手続や書類作成の支援が主な業務。平成27年一般社団法人どうぶつ法務福祉協会設立、同代表理事に就任。1級愛玩動物飼養管理士、愛護動物虐待防止管理士、少額短期保険募集人の資格を保有。

 

ペットは命ある存在であり、思わぬ行動に出ることもあります。犬が他の犬に追いかけられてケガをするという犬同士のトラブルが起きることもあり得ます。そういった場合に法的にはどうなるでしょうか?民法第718条第1項では「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。」と規定しています。

相当の注意をもって管理していたかどうかなどは重要なポイントですが、ここでは「追いかけられて」というところから、「被害者側が危険を察知して回避しようとしたにもかかわらず、加害者側の重大な過失または故意によりトラブルが生じた」ととらえた事例としてみていきます。加害者になってしまうことも十分にあり得ますから、加害者側と被害者側の双方の視点で主に心情に重きを置き対処法などを解説していきます。

 

加害者側と被害者側の違い

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原則として飼い主は損害賠償責任を負い、犬の管理に関して動物の種類及び性質に従い相当の注意をしていたときは責任を免れるということですが、裁判例では厳しい判断がされており、免責が認められることは少なく、無過失責任に近いものとされているようです。

その上で、想定事例での「被害者は危険を察知して回避しようとしていること」「加害者側に重大な過失または故意がある」という部分を少し細かくみてみましょう。

被害者が危険回避を行っているということは基本的に被害者側の過失がなく、一方で例えばノーリードやけしかけていたなど、加害者側に重大な過失また故意はがあるということはそれだけ責任が重くなるということですので、この場合は状況によって器物損壊(※故意の場合)などの刑事事件に発展する可能性もあります。

損害賠償については、加害者側飼い主に損害賠償として請求できると考えられるのは、飼い主に対する精神的苦痛に対する慰謝料、通常必要な範囲での犬の「診察費・治療費」、「通院に必要な交通費」、犬を動物病院に連れていく時に会社を休んだ場合の「休業損害」などがあります。犬の後遺症に関する賠償については議論のあるところです。被害者側が事前に加害者側の犬を害するような行為を行っていた場合などは、民事上(慰謝料等損害賠償請求などの争い)ではその部分に関して過失相殺が行われます。

加害者側は…

加害者側の対処法としては、そもそも今回のような事例を起こさないということが第一ではあるのですが、万一そうした状況が生じた場合には色々と最悪の事態も想定した上でできる限りの対処をしていくしかありません。

「重大な過失」とは例えば、ずさんな飼育管理状況を放置していたというような場合であり、「故意」ということであれば覚悟の上での行為ということになるかと思いますが、ペットは命ある存在であり、ただの物損事故ではありません。今一度冷静になって考えてみるべきでしょう。被害者側としては、この点加害者側に理解してほしいところでしょう。

加害者側は、具体的には「きちんと謝罪を行う」「被害者の損害賠償請求にも真摯に対応する。状況によっては専門家などを第三者に交えて話し合う。」ということになりますが、この場合はケガをさせた犬の方もただでは済まず、状況や犬種によっては保健所に引き取られて殺処分になる可能性があります。

被害者側は…

一方の被害者側ですが、相手方に明らかな故意や重大な過失が見られた場合、もしかするとそもそも話し合いも出来ない場合がありますので、その時は警察や保健所へ行って相談をしてみてください。一度だけの軽微な損害であった場合はもしかするとすぐ動いてくれないかもしれないのですが、たとえば加害者側の飼い主が故意に犬を放し飼いにしていたりけしかけているような場合、おそらく他にも被害に遭っている方がいるかもしれませんので、そういった方達と一緒に何回も相談に行けば警察や行政も動いてくれると思います。

また、相手の対応によっては裁判ということも選択肢に入れつつ、もし加害者が話し合いに応じた場合には、弁護士などの専門家を第三者に交えた上で書面を作成するということが基本になるかと思います。

まとめ

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本来、こういったトラブルは起こらないことが一番なのですが、予期しない状況でこうしたトラブルが生じることもありますので、ペットを飼うときは屋内外を問わず周りの状況にも気を配りましょう。そして、もし自分が飼っている犬に愛情を持っているのであれば、その愛犬がかわいそうなことにならないためにも常日頃からきちんと責任をもって適正な飼養を心がけましょう。

執筆協力:有吉圭太((一社)どうぶつ法務福祉協会理事・動物総合相談ボランティア)

 
 

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