2016年7月31日更新

【獣医師が解説】子猫を保護した時の注意2 人に伝染る病気に注意

子猫を保護した時、気になることのひとつが感染症ですね。子猫がもつ病原体の中には、時に人の体に害を及ぼすものもあります。子猫と家族が健康に暮らしていくにはきちんとした感染症対策が必要です。今回は子猫を保護した時に知っておきたい、人と動物の共通感染症とその対策について解説します。

子猫から人に感染する可能性のある病気がある!

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子猫を保護した時に、人に感染する病気はないのか、となんとなく心配になる人もいるでしょう。実際に、子猫が保有している可能性のある病原体の中には人間に感染するものもあるのです。

消化管寄生虫

「回虫」や「コクシジウム」と呼ばれる寄生虫は、人にも感染する可能性があります。これらの感染源は主に子猫の便ですので、便の取り扱いには特に注意してください。また、直接子猫の便に触れなくても、子猫が下痢をしていたり、子猫が長時間放置されていたりすると、感染源となる便や虫卵が体に付着していることもあります。子猫を触ったあとの手洗いは欠かさずにしっかりと行ってください。また、子猫を保護したらできるだけ早く動物病院を受診し、糞便検査や駆虫を必ず行うようにしてください。

糸状菌

糸状菌はいわゆる「かび」で皮膚に常在していますが、子猫の抵抗力が落ちていると、糸状菌症を発症し、脱毛などの症状が出ることがあります。この糸状菌は、人へも感染します。健康な大人で手洗いをきちんとしていれば、基本的には問題ないことが多いのですが、子猫に糸状菌症が発症していると診断された場合には注意をしてください。治癒するまでは、免疫力の低い乳幼児やお年寄りとの接触は避けた方がよいでしょう。

外部寄生虫(ノミやマダニ)

ノミやマダニは子猫の健康トラブルの原因になる一方で、人の健康にも害を及ぼす恐れがあります。そのため、保護した子猫のノミ、マダニの駆除は徹底して行なわなくてはなりません。

ノミは動物の体表に寄生して吸血します。ノミとりくしで毛をすいたときに茶色いノミのふんが見つかったら、たとえ成虫が見当たらなかったとしてもノミが寄生しています。子猫がノミに刺されると激しい痒みを起こします。また、ノミが媒介する消化管内寄生虫に感染する可能性があります。さらに、ノミが人を刺すことで、人にも激しい痒みを起こすほか、ノミの寄生した子猫に引っ掻かれることで「猫引っ掻き病」とよばれる病気に感染するおそれがあります。猫ひっかき病は、猫ノミに感染した子猫から人に感染する可能性のある病気で、傷口の化膿、リンパ節の腫脹、発熱などを起こします。猫ノミに感染した子猫の取り扱いには十分注意をしてください。

一方、マダニも猫に寄生して吸血します。マダニが吸血すると、アレルギーや皮膚の損傷、さらに細菌感染による皮膚炎を起こします。子猫が多量に吸血されることによる貧血が問題になることもあります。また、マダニが媒介する猫の感染症である猫のヘモバルトネラ症は、時に命に関わります。一方、マダニが人に感染することで、人もマダニが媒介するいくつかの重篤な感染症を起こすことが報告されています。

ノミやマダニを見かけたら

ノミやダニを発見しても、あわてて子猫をシャンプーしたり、ノミを手で潰したり、マダニを手で引きはがそうとしたりしないでください。必ず動物病院で処置を受けましょう。
また、部屋の中は徹底的に掃除しましょう。ノミは簡単に箱から飛び出します。子猫自身についたノミの駆除と同時に、しっかりと掃除機で掃除をし、できれば子猫の箱やベッドは新しいものにかえてください。

保護した子猫との生活の中で実践すべきこと

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子猫に対する治療や駆虫などの対策を徹底する一方で、保護した人間やその家族が気をつけなくてはならないこともあります。

子猫との接触はできるだけ少なく、衛生管理の徹底を

まず、子猫はとてもかわいいものですが、必要以上に接触しないようにしてください。また、清掃と換気をこまめに行ない、飼育環境を清潔にしましょう。特に、排泄物は速やかに処理をし、入念に手洗いをしてください。また、排泄物を処理したときはもちろん、授乳などで子猫に触れたあとも、必ず手洗いをしてください。

さらに、子猫が環境に慣れ、さまざまな感染症対策が完了するまでは、子猫と接触する人は必要最低限にしておきましょう。これは、できるだけ人への感染の機会を減らすためだけでなく、子猫へのストレスを軽減する意味もあります。

特に、幼児には注意が必要です。かわいい子猫に興味を持つかもしれませんが、子猫にとって大きなストレスになる可能性もありますので、保護してしばらくは直接の接触は我慢させましょう。

乳幼児のいる家庭では

抵抗力の弱い乳幼児のいる家庭では、特にこまやかな対策が必要です。感染症対策が完了するまでは、子猫と接触するのは保護者に限定してください。手洗い、排泄物の処理などは、速やかに確実に行いましょう。また、子猫を飼育している部屋で、子猫と乳幼児だけになる環境は作らないようにしましょう。

こどもが子猫に興味を持ち、抱きたがることもあるかもしれません。こどもが子猫と触れ合うことは、思いやりの心や責任感を育むという観点からはとても良い のですが、こどもの健康を守るためにも、まずは子猫が保有している可能性のある病原体についてきちんと治療、対策を行ってください。
また、子猫にとっても、突然人間のこどもを含めた色々な人と接触することは大きなストレスになる可能性があります。新しい環境に慣れてきた頃に、少しずつ、こどもとの触れ合いを増やしていってください。

回虫症に注意!

回虫は人間の幼児に感染することがあります。幼児が回虫に感染すると、回虫が目に迷入し、失明に至る場合があることが知られています。日本で回虫症と診断された幼児の数は非常に少ないですが、念のため注意をしましょう。子猫を保護したら、ノミやマダニ対策とともに、回虫の駆虫、予防を徹底してください。

家族と子猫がともに健やかな暮らしを送りましょう

子猫を保護したら、きちんとした衛生管理を行なったうえで、子猫へのストレスを最小限にするための気遣いを大切にしてください。家族と子猫がともに健やかな暮らしを送れるように、是非とも細やかな対策を心がけてくださいね。

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