2017年6月12日更新

自らの危険を顧みず、多くの命を救う災害救助犬!厳しい訓練を乗り越えた精鋭たち

長谷川真理恵



JKC A級トリマー、JKC C級ハンドラー

グルーミングスクールに4年通い、JKC A級トリマーライセンス、JKC C級ハンドラーライセンスを取得。フリーのトリマーとして働く傍ら、在学中にモデル犬として迎えたトイプードルのチャンピオン完成をきっかけに繁殖学・遺伝学を学び、ドイツやイギリスのブリーディングスタイルをモデルとして極少数頭のみのブリーディングを手掛ける。主人の海外赴任に伴い愛犬とともにドイツへ越した後、現在はベルギー在住。日本とは大きく異なるヨーロッパにおける"犬とは"を日々体感中。

 

日本ではまだあまり浸透していない災害救助犬。
災害現場で生き埋めになっている方や、亡くなった方を探し出して知らせるという、とても大きな役割を担っています。

震災の多い日本では欠かせないであろう災害救助犬ですが、まだまだ普及しきっていない背景には、どんな理由があるのでしょうか?

 

海外の災害救助犬事情


ヨーロッパでは古くから歴史があり、国際救助犬連盟(IRO)という大きな団体で統括されています。

たとえば17世紀より山岳救助犬の歴史を持つことから、災害救助犬が始まった国と言われるスイス。
スイスの救助犬は陸軍によって育成され、世界最高レベルの救助犬と名高い精鋭たちです。
その多くはバーニーズマウンテンやセントバーナード。首元に小さな樽を下げた姿を写真などで見かけたことはありませんか?

中でもセントバーナードのバリーは生涯で40名もの遭難者を救助したというレジェンドです。

遅れをとる日本の災害救助犬事情

一方日本では1995年1月の阪神淡路大震災の際、海外から災害救助犬が派遣され関心が高まります。

しかし日本国内ではまだ歴史が浅く、1990年にジャパンケネルクラブが事業計画を開始。その後4団体の大きな災害救助犬組織が出来上がります。
東日本大震災、熊本地震、また土砂崩れや雪崩での行方不明者の捜索、ネパール地震やパキスタン大地震と海外へも活動の幅を広げています。

ただ現在のところそれぞれの団体で認定基準はバラバラでレベルに差があり、まだ発展の段階にあるともいえるでしょう。

 

多岐に渡る捜索訓練


決まった臭いのお手本があり追っていく警察犬とは違い、災害救助犬の場合は不特定多数の生きた人間、もしくは亡くなった方を探さなくてはなりません。
また現場には救助の方やすでに救助された方も多数いる中で探すという、非常に訓練が難しいものです。

更に臭いを探す訓練だけではなく、実際に災害現場で捜索を行う災害救助犬の訓練は様々な危険のある場面を想定して行われます。

クリープ

伏せたまま狭い隙間をかいくぐっていきます。
瓦礫の間を捜索するための訓練です。

障害物

瓦礫や土砂が重なる中でも進んで行けるよう、階段やシーソーなどを使って不安定な場所も怖がらずに進めるようにする訓練です。

遠隔捜索

指示で左右、前へと進むようにする訓練です。人が進んでいけないような場所でも広範囲に捜索できます。

瓦礫捜索

倒壊したビルや家屋を想定して、現場と同じ環境で足場が不安定な中、訓練をします。

土砂捜索

臭いの探知が難しい、土砂の中に人が埋まってしまった場合を想定して行う訓練です。

水難捜索

落水者や溺れている人のところへ浮き輪を持っていき、引っ張ってくる訓練です。

雪難捜索

雪崩や雪山での遭難者を想定し、雪に埋まっている人、倒れている人に反応するように訓練します。

ホイスト

災害地へ車で入っていけない場合に、ヘリコプターで上空から降下することを想定した訓練です。

災害救助犬が怪我をしてしまうことも


訓練内容だけでもヘリコプターで高いところから降り、水の中を人を引いて泳ぎ、雪や瓦礫の中を捜索したりと、とてもハードなお仕事。
実際の現場では犬自身が怪我をしてしまうことも少なくありません。

広島土砂災害の際、出動した84頭の災害救助犬が泥まみれになりながら働く姿に心打たれた方もいることでしょう。
その際に瓦礫の中で犬たちが怪我をするのではと多くの声が寄せられたといいます。

アメリカのニューヨーク同時多発テロの際、救助犬たちはブーツを着用して捜索している姿がニュースで見られました。
日本でも各ハンドラーがブーツを携帯し、状況により履かせるか否かを判断しているようです。ただぬかるんでいる場所などでは肉球や爪の役割は大きく、ブーツを履かせることで犬が転倒することもあるかもしれません。
判断が難しいところではありますね。

できることなら…

災害救助犬に命を救われた、家族を助けてもらったという方は世界中に沢山います。
こと震災の多い日本では、災害救助犬の数もトレーナーもまだまだ不足しています。一般の家庭犬が災害の際には活躍できるような体制を整えることも期待されています。

しかしできることなら、犬が危険な場所で仕事をすることがない日が来てくれればいいなと、機械の進歩を願って止みません。

 
 

関連カテゴリ