猫の去勢・避妊手術について【獣医師が解説】

メス猫の子宮や卵巣を取り除く避妊手術。さまざまなメリットがあり猫の寿命を延ばしてくれる手術ですが、「いつやったらいいの?」「どんなふうにやるの?」「いくらくらいかかるんだろう?」と思っている飼い主さんも多いと思います。

今回は、聞きたくても聞けない避妊手術の実際についてお話しします。

避妊手術のメリット

猫の病気の予防のために避妊手術・去勢手術がおすすめだと聞いたことはありませんか?

「健康な子に手術なんてかわいそう……」と思う飼い主さんも少なくないと思います。しかし、避妊・去勢手術にはそれぞれ大きなメリットがあり、手術をすることで元気にストレスなく、長生きできる可能性が高いのです。

今回はそんな避妊・去勢手術のメリットについて、いくつかのデータをもとに解説しますので、愛猫のためにこれらの手術の必要性を理解しておきましょう。

まず、メス猫の不妊手術である避妊手術のメリットを見てみましょう。

妊娠させない

外へ行く猫の場合、避妊手術をしていない雌で発情していると、ほぼ100%の確率で妊娠をします。

妊娠・出産は人でもそうですが、猫でも体力を使いますし、難産によって命の危険が起こる可能性もあります。

避妊手術は最も確実に妊娠・出産を防ぐ方法ですね。

乳腺腫瘍の予防

猫の乳腺腫瘍は、猫の全腫瘍の中で3つ目に多い腫瘍であり、メス猫では非常にリスクの高い腫瘍になります。

猫の乳腺腫瘍の約9割が悪性腫瘍(いわゆる乳がん)であると言われており、乳腺腫瘍は猫の命に関わる重大な病気です。

乳腺腫瘍の発生にはホルモンが大きな影響を及ぼすことがわかっており、早めに避妊手術をすることで発生率を非常に低くすることができると言われています。

1歳未満で避妊手術をすることで乳腺腫瘍の発生率を1/10以下に減らせるという報告もあります。

乳腺腫瘍の予防効果は避妊手術が早ければ早いほど大きいので、できるだけ1歳までに手術をすることをおすすめします。

子宮・卵巣の病気の予防

避妊手術では、卵巣のみもしくは卵巣と子宮を同時に切除します。

そのため、卵巣腫瘍や卵胞嚢腫等の卵巣の病気、子宮蓄膿症や子宮水腫、子宮筋腫などの子宮の病気の予防ができます。

猫では卵巣や子宮の病気は多くはないですが、これらの病気の予防ができるのもメリットの一つです。

発情のわずらわしさの解消

メス猫は、季節発情動物であり、決まった季節(春と秋が多い)になると発情を繰り返すことが多いです。

また、一度発情すると、交尾の刺激がないと排卵しない「交尾排卵動物」であるため、発情は数週間続くこともあります。

発情期には異常にしつこく鳴いたりずっとくっついてきたりと、時に飼い主さんの生活の支障になることもあります。

また、発情中は性欲が非常に強くなっているのに何もできないというストレスから、食欲が落ちたりス、トレスによる膀胱炎などの病気が引き起こされることがあります。

避妊手術をして発情を無くしてしまうことで、飼い主さんも猫もストレスの少ない生活を送ることができるようになるんです。

糖尿病の予防

発情中は卵巣から女性ホルモンが活発に出ますが、女性ホルモンは血糖値を下がりにくくし、糖尿病のリスクを高めてしまいます。

メスの猫の場合、発情のたびに糖尿病が悪化するという子もおり、避妊手術をしないと糖尿病がうまくコントロールできなくなってしまいます。

避妊手術をすることで、糖尿病のリスクを減らしたり、糖尿病をうまくコントロールができるというのも避妊手術のメリットです。

寿命が延びる

アメリカの大手動物病院「バンフィールドペットホスピタル」の調査によると、避妊したメス猫は、避妊していないメス猫に比べ、平均39%長寿であるという結果が出ています。

おそらく、避妊手術をしている子は生活水準も高く、事故などのリスクも低いということもあるとは思いますが、避妊手術をすることで、ストレスや病気のリスクが減ることで長生きできるんですよ。

去勢手術のメリット


次にオス猫の不妊手術である、去勢手術のメリットを見ていきましょう。

スプレー行動の防止

オス猫は、性的に大人になる性成熟を迎える5~6か月あたりから、尿でにおいをつけるマーキング行動を部屋中ですることが多いです。

マーキング行動は性行動の一種だと言われており、マーキングが始まる前に去勢手術をすると、マーキングはほとんど出ません。

マーキングが癖付いてしまうと、去勢手術をしてもマーキングが残ってしまうこともあるので、手術をするなら6カ月齢くらいの早めの時期にすることをおすすめします。

性格の温厚化

男の子の場合、去勢手術をすることで、性格が穏やかになり、噛んだり暴れたりする頻度が減ることが多いです。

中にはあまり変化がなかったり、むしろ去勢手術後の方が凶暴になったという子もいるようですが、全体的には大人しくなって飼いやすくなることが多いです。

外に行きたがらなくなる

オス猫は、メス猫を求めて放浪したがる子が非常に多いですが、去勢手術をすることで外に行きたいという衝動が少し落ち着きます。その衝動が少なくなれば、外に行けないストレスもましになり、性格が穏やかになるケースもあります。

去勢手術をしただけで全く外に行きたがらなくなるということはありませんが、外に行きたがる子には去勢手術は有効な手段ですよ。

寿命が延びる

先ほど紹介した晩フィールドペットホスピタルの報告によると、去勢したオス猫は、去勢していないオス猫に比べてなんと62%も長寿になるようです。

おそらく、外に行って交通事故や感染症、けんかの傷などのリスクが少なくなることが主な原因だと思いますが、去勢手術によってストレスの軽減や健康な生活送れることで、寿命も長くなるんですね。

去勢手術とは

オス猫の不妊手術である「去勢手術」。去勢手術は、単に妊娠能力を無くすだけでなく、問題行動を減らして、猫の寿命を延ばしてあげるための大切な手術です。

オス猫の睾丸を取り除く去勢手術ですが、今回はその方法や費用など去勢手術の実際について解説します。

オス猫の去勢手術は全身麻酔をかけて行う手術になります。

基本的にはメスのようにお腹を開ける必要はなく、手術時間も避妊手術に比べると短く済むため、避妊手術よりも猫の負担の少ない手術になります。

  1. 全身麻酔をかける
  2. 麻酔を維持しながらモニターをつけて異常がないかを確認する
  3. 問題がなければ陰嚢(いわゆる玉袋)の毛を刈って消毒する
  4. 睾丸が出せる程度の切開を陰嚢に行う
  5. 睾丸につながる血管や精管を糸で縛り、切断し、睾丸を摘出する
  6. もう一方も同じように摘出する
  7. 陰嚢を糸で縫合する(縫合しない病院もあり)
  8. 麻酔から覚まして終了

去勢手術は猫の睾丸を取り出せるくらいの切開で十分ですので、1~3針縫うだけの非常に小さい傷になります。

手術時間は10分程度、麻酔をかけ始めてから覚醒までも30分程度で終わってしまうことが多いです。

最近では血管や精管の結紮に糸を使わないシーリングシステムを採用している病院も多く、糸が原因となる炎症や感染のリスクを減らし、手術時間の短縮にもなるおすすめの方法です。

腹腔内陰睾の手術

猫の睾丸は、生後2カ月くらいまでの間に陰嚢に降りてきます。

これを精巣下降と呼び、生まれたてのオス猫の睾丸はお腹の中にあるのです。

しかし、まれに睾丸がお腹の中にとどまってしまう「腹腔内陰睾」と言われる状態の猫がいます。

その場合は、避妊手術と同じように開腹手術が必要となり、麻酔時間や費用などが変わってくることがあります。

愛猫の睾丸がしっかり2つ触れるか、事前にチェックしておきましょう。

もし、陰嚢の中になく腹腔内陰睾である場合は、メス猫の避妊手術と同じような方法になりますので、避妊手術の記事を参考にしてみてくださいね。

去勢手術の適齢期

現在、去勢手術をいつやったらいいかという明確なガイドラインはありません。

あまり高齢になってからでは手術のメリットが少なくなり、麻酔リスクも高くなるので、若いうちに行っておいた方がいいのは間違いないでしょう。

一部では、「早期去勢手術」という、2,3カ月齢での去勢手術を行っている動物病院もあります。

早期去勢手術には、若いうちは痛みに強いというメリットもありますが、内臓が成熟していない猫への全身麻酔のリスクや、尿道の成長不全による尿道の病気の増加のリスクが高くなってしまう可能性も指摘されています。

(これらのリスクが本当にあるかどうかには議論があります)

基本的には、生後半年~1年の間で行うことをすすめている獣医師が多いです。

手術前日・当日・術後の流れ

去勢手術を予約した場合、具体的にどのような流れで行われていくのかご紹介します。

手術前日

全身麻酔をかけるときに胃の中にフードがあると、麻酔をかけたときに吐いて気管に詰まってしまうことがあります。

そのため、手術前日の夜からフードを抜いて手術にそなえることが多いです。

絶食の時間は病院によって違いますので、手術の予約を入れたときにかかりつけの病院にしっかり確認しておきましょう。

手術当日

当日の朝に動物病院へ連れていき、お昼に手術をするという病院が多いです。

術前の検査や点滴などを行う動物病院もあるため、手術当日は必ず指示された時間までには受診するようにしましょう。

手術の見学ができる施設もありますが、ほとんどの動物病院では、そのまま猫を預けて飼い主さんは帰宅することになります。

午前中の外来診察が終わった後に手術時間を設けている動物病院が多いです。

普通の去勢手術は避妊手術に比べて負担が少く、通常はその日に帰宅することができます。日帰り手術では、午後の指定された時間に迎えに行って連れて帰ってきます。

腹腔内陰睾の場合は、避妊手術と同じように1泊入院となることも多いです。

手術当日は、お家に帰ってからもご飯を食べさせないよう指示されることもあります。

手術当日は家でも安静にして過ごしてあげてください。

術後

手術翌日からは、基本的には通常の生活をします。

ただし、傷を舐めないようにエリザベスカラーをしたり、化膿止めを飲むこともあります。

また、多くのケースでは抜糸が必要になりますが、抜糸がいらない埋没縫合(皮内縫合)や陰嚢の縫合をしない病院もあります。

抜糸が必要な場合は7~10日くらいで、動物病院で抜糸をしてもらいます。

手術後数日は少し元気がない猫もいますが、翌日から普通に食欲元気が戻っているという猫が多いです。

手術の費用

手術の費用は病院によって異なります。

安い病院が一概にいいとは言えず、費用の高い安いには術前検査の内容・手術に使う糸や道具の違い・麻酔薬の違い・手術に関わるスタッフの数・点滴や入院の有無などによっても変わってきます。

日本獣医師会が発表している「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」では、去勢手術を5,000~20,000円くらいで行っている動物病院が多いようです。

ただし、ここに別途麻酔費用(~10,000円)がかかる病院もあります。

去勢手術の費用として提示された金額に、どの費用が含まれていて、他にどんな費用が掛かるのかは動物病院によって違うのでしっかり確認しておきましょう。

術前検査は必要か?

術前検査は、動物病院によってする場合としない場合があります。

しない場合でも希望があれば追加料金(5,000円程度)を支払えば術前の血液検査をしてくれることも多いです。

若い猫の場合、麻酔事故は非常に少ないですが、万が一内臓に隠れた病気を持っていると、そのリスクが上がってしまいます。

できる限り、術前にしっかり血液検査はもらっておきましょう。

去勢手術は、猫本人にとって一生に一回の手術になります。

どんな方法で行うのか、術前検査はするのか、費用にどのようなものが含まれているのかをしっかり理解し、去勢手術を予約する場合には、その動物病院ではどうなのかも確認しておいた方がいいでしょう。

値段が安いからというだけで決めてしまって、後悔しないように注意してくださいね。

避妊手術とは

メス猫の避妊手術は全身麻酔をかけて行う開腹手術になります。

卵巣のみを摘出する「卵巣摘出術(卵摘)」と、子宮と卵巣をすべて取る「子宮卵巣全摘出術(全摘)」があります。

どちらを選ぶかは病院によって異なり、また年齢や子宮の状態によっても違ってきます。

避妊手術の方法

まずは全摘の方法をご紹介します。

  1. 全身麻酔をかける
  2. 麻酔を維持しながらモニターをつけて異常がないかを確認する
  3. 問題がなければお腹の毛を刈って消毒する
  4. お腹の皮膚や腹筋を3~5㎝ほど切開して、開腹し、卵巣を探す
  5. 左右の卵巣につながる血管や靭帯を結紮して切る
  6. 2股になっている子宮が1つになる部分(子宮体・子宮頸管部)を糸で結紮し切断する
  7. 子宮と卵巣を一緒に摘出したら、腹筋や皮膚を縫合する
  8. 麻酔から覚まして終了

一方、卵摘では、子宮を結紮したり切断する手間が少なくなり、傷口が小さく(2㎝程)短い手術が可能になります。

最近では卵巣や子宮の結紮に糸を使わないシーリングシステムを採用している病院も多く、縫合糸に起因する感染や炎症のリスクを減らしたり、手術時間の短縮が可能になっています。

通常、手術時間は30分以内、麻酔をかけ始めてから覚めるまで1時間程度で終了することが多いです。

全摘と卵摘はどちらがいいのか?

メス猫の避妊手術には、子宮を取るかどうかで全摘と卵摘に分かれます。

子宮を取るメリットは子宮の病気が起こる可能性が無くなることです。

一方で卵摘は傷口が小さく、手術時間も数分短く行えるため猫の負担が少なくなります。

どちらがいいのかについては意見が分かれており、その病院の考えによってどちらかの方法を取ります。

一般的に、若いうちに卵巣を取ってしまえば、女性ホルモンもかなり減るため、子宮の病気のリスクはかなり少ないと言われています。

私は、若いころに卵摘をしたメス猫で、子宮の病気になった猫を見たことがないため、卵摘でも問題ないと考えています。

ただし、ある程度の年齢になってからの避妊手術の場合はすでに子宮の病気を持っている可能性もあるため、子宮も摘出する必要性は高くなります。

いつ避妊手術をしたらいいのか

猫の避妊手術の時期については、明確なガイドラインはありません。

ただし、避妊手術による乳腺腫瘍の予防効果は、発情が来るたびに弱くなってしまうため、若いうちにしておいた方がいいのは間違いないでしょう。

一部では、生後3~5か月のうちに避妊手術を行う「早期避妊手術」を推奨している病院もあります。

かなり若いうちに手術を行うことで病気のリスクが少なく、痛みも少なくて済むというメリットもありますが、内臓機能が大人よりも弱い猫への全身麻酔のリスクもあり、早期避妊手術の是非に関しては、議論が分かれています。

一般的には生後6か月での手術がすすめられていることが多いです。

手術前日・当日・術後の流れ

実際に避妊手術の予約を入れて手術をした場合に、どんな流れになるのかを見ておきましょう。

手術前日

全身麻酔をかけるときにお腹にご飯が入っていると、麻酔をかけたときにおう吐して気管に入ってしまうこともあるため、前日の夜からの絶食を支持されることが多いです。

病院によって絶食の時間は決まっていますので、かかりつけの病院にしっかり確認しておきましょう。

手術当日

避妊手術の当時は、朝に動物病院へ連れていき、お昼の時間の手術に備えるという病院が多いです。

術前の検査や点滴などを行う病院もあるため、必ず指示された時間までには受診するようにしましょう。

術前の検査で異常が出た場合は手術が中止や延期になることもあります。

一部の病院では手術の見学ができる施設もありますが、ほとんどの動物病院では、猫を預けて飼い主さんはいったん帰宅します。

手術は午前診と午後診の間に行われることが一般的です。

手術が終わったら、そのまま1泊入院をする病院が多いですが、その日に帰れる場合もあります。

どちらになるのかも事前に聞いておきましょう。日帰りになる場合は指定された時間に、1泊入院になる場合は翌日に退院となります。

術後

退院してからは基本的には普通通りに生活できますが、傷を舐めないようにエリザベスカラーをしたり、化膿止めを飲むこともあります。

また、傷口を清潔に保つために服を着せてくれる動物病院もあります。

基本的には1~2週間後に抜糸が必要になります。

抜糸の必要のない埋没縫合(皮内縫合)を実施している病院もありますので、希望がある場合は聞いておきましょう。

手術の費用

手術の費用は病院によって異なります。安い病院が一概にいいとは言えず、費用の高い安いには

  • 術前検査の内容
  • 手術に使う糸や道具の違い
  • 麻酔薬の違い
  • 手術に関わるスタッフの数
  • 点滴
  • 入院の有無

などによっても変わってきます。

日本獣医師会が発表している「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」では、卵摘も全摘も15,000~25,000円くらいで行っている動物病院が多いですが、若干卵巣子宮全摘出術の方が高い傾向にあります。

血液検査まで合わせると25,000~30,000円程度になる病院が多いです。

手術の費用は、動物病院に聞けば教えてくれるので、その価格にすべての費用が含まれているのか、追加費用が掛かる場合はいくらくらい必要なのかは、事前に必ず確認しておきましょう。

手術前の血液検査は必要か?

手術前に血液検査をする病院としない病院があります。

また、飼い主さんの希望があればするという病院もあります。血液検査をするかどうかで5,000円程度費用は変わってきます。

術前の血液検査はできるだけ受けるようにしましょう。若い猫ではほとんどは検査を受けなくても問題なく手術は終了します。

ただし、肝臓や腎臓などに問題がないかどうかは身体検査だけではわからないことも多く、血液検査をしてみて初めてわかるということもあります。

万が一、内臓に大きな異常があって手術をした場合は、麻酔事故のリスクが高くなったり、術後に調子を崩す原因にもなります。

猫にとっては一生に一回の避妊手術です。数千円を節約するために愛猫のリスクを高くしてしまわないよう、極力術前検診はしっかり受けるようにしてください。

猫の避妊手術や去勢手術が終わってからの変化

避妊・去勢手術後は、卵巣や精巣が無くなることによって、猫の体にさまざまな変化が見られます。

今回は、手術が終わった後に気を付けておいた方がいいことや、どんな変化が起こるのかについてお話しします。

避妊・去勢手術後にトラブルなく健康的な生活を送れるよう、術後の変化や注意点をしっかり知っておきましょう。

太りやすくなる

避妊・去勢手術にはたくさんのメリットがありますが、最も大きなデメリットは太りやすくなることです。

手術後に急激に体重が増えて肥満になってしまう猫も多いので、しっかり注意しておく必要があります。

避妊・去勢手術をすると

  • 性欲が無くなり、発情のストレスから解放されるため食欲が増す
  • 体の中での性的な活動が無くなるため、代謝が落ちる

という2つの理由から太りやすくなります。猫の肥満は糖尿病や肝臓病、関節炎のリスクを高めてしまいます。

避妊・去勢手術をすることで、猫の寿命が長くなるというデータがありますが、肥満は猫の寿命を短くしてしまうことも知られているため、太ってしまえば、避妊・去勢手術によって長生きできるというメリットが減ってしまいます。

そのため、避妊・去勢手術後は体重が増えてきていないのかしっかりチェックして、フードの種類や量にしっかり注意してあげましょう。

具体的におすすめしたいのは、避妊・去勢手術後用の、少し太りにくいフードへの変更です。

また、同じフードを食べる場合は、避妊・去勢手術によって代謝が落ちることによって減った消費カロリー分、フードの量を1~2割減らすといったことが必要になることもあります。

手術後に食欲が増えて、どうしてもたくさん食べないと我慢できないという場合は、ダイエット用の低カロリーフードへの変更を考えた方がいいかもしれませんね。

オス猫は徐々に温厚になることが多い

オス猫の去勢手術のメリットの一つが、性格の温厚化です。

去勢手術で男性ホルモンを作る精巣を切除することで、体の中の男性ホルモンが徐々に減って、凶暴性ややんちゃさなどが落ち着いてきます。

通常、こういった変化がみられるまで、数週間~数カ月かかります。

また、発情によるイライラもおちつくため、ホルモンだけでなくストレスも性格の温厚化に影響するようです。

この性格の変化には個体差が強いため、中には手術をしてもあまり性格が変わらない子もいますし、逆に怒りっぽくなるという猫もまれにみられます(去勢手術の影響かどうかは不明です)。

メスの性格の変化はそれぞれ

メス猫では、避妊手術によって卵巣が無くなるため、女性ホルモンが少なくなります。

この影響による性格の変化はその子によってバラバラです。大人しくなる子もいれば、やんちゃになる子もいるようです。

ただし、メスの発情に伴うストレスは非常に大きいようで、そのストレスが無くなることで、ゆったりとお家で過ごせるようになる猫は多いです。

もちろん、癖付いていなければ発情行動もなくなります。

毛質が変わることもある

避妊・去勢手術をした後に、毛質が変化する猫が時々います。

ホルモンの変化による毛質の変化が考えられますが、どれ位の割合で毛質が変化するというデータは現在出ていません。

ただし、手術によって毛質が悪くなるということはほとんどありません。

私の経験では、オス・メスともに赤ちゃんのように毛質が柔らかくなることが多いです。

避妊・去勢後の注意点

手術前に発情関連行動があった場合は、しばらく野良猫などの刺激を与えない

避妊・去勢手術をすると発情関連行動(スプレー行動や大きな鳴き声、放浪)などが減るというメリットがありますが、手術前にすでにそういった行動があった場合はしばらくその行動は残ります。

特に、野良猫など発情関連行動の刺激になる存在を感じさせてしまうと、手術をしても、そういった行動が癖として残ってしまうこともあるのです。

発情関連行動を癖としてできるだけ残さないためには、手術後しばらくの間、野良猫などを見せて刺激しないことが大切です。

発情関連行動を引き起こす刺激がなければ、徐々にその行動も減少してきます。

手術で卵巣や精巣を切除することで、性ホルモンの産生は止まりますが、性ホルモンが体には残りますので、特に術後1カ月くらいは意識的に刺激を与えないようにしましょう。

オス猫の去勢後すぐに交尾をすると妊娠する可能性

オスの去勢手術では、精管と血管を縛って睾丸を切除します。

ただし、精管の一部は体に残るため、その精管の中に入っている精子が、術後数日の間受精能力を持った状態で残ります。

つまり、手術をしてすぐに交尾をした場合、体に残った精子によってメス猫が妊娠するリスクがあるということです。

もし避妊手術をしていないメス猫が同居している場合は、最低1週間程度は交尾しないよう注意してくださいね。

まとめ

メリットのたくさんある避妊手術。動物病院によって避妊手術の方法や費用、術前検査の内容などは異なります。

それらの手術に関わることをしっかり確認したうえで、納得して手術をしてもらうようにしてくださいね。

避妊・去勢手術は、病気の予防や問題行動の防止など、猫にも飼い主にもメリットの大きい手術です。

ただし、手術のメリットを最大限にし、デメリットを最小限に抑えるために、避妊・去勢手術後の変化や注意点をしっかり知っておいてくださいね。

関連記事

 
 

ABOUTこの記事をかいた人

後藤大介

岐阜大学農学部・獣医学科(現応用生物科学部・共同獣医学科 ) 卒業。大阪・北海道の動物病院に勤務し、2018年、岐阜市にアイビーペットクリニックを開業。生まれ育った地元で、ペットと家族の幸せのためのお手伝いをしたいと考えています。病気の治療だけでなく、ペットの健康のための情報発信や、地域の飼い主さん同士が交流できるような動物病院を目指しています。