2017年5月10日更新

もうすぐ愛猫の避妊手術!!その前に知っておきたい知識とは(メス)【獣医師が解説】

後藤大介



獣医師

 

メス猫の子宮や卵巣を取り除く避妊手術。さまざまなメリットがあり猫の寿命を延ばしてくれる手術ですが、「いつやったらいいの?」「どんなふうにやるの?」「いくらくらいかかるんだろう?」と思っている飼い主さんも多いと思います。今回は、聞きたくても聞けない避妊手術の実際についてお話しします。

 

避妊手術とは

メス猫の避妊手術は全身麻酔をかけて行う開腹手術になります。卵巣のみを摘出する「卵巣摘出術(卵摘)」と、子宮と卵巣をすべて取る「子宮卵巣全摘出術(全摘)」があります。どちらを選ぶかは病院によって異なり、また年齢や子宮の状態によっても違ってきます。

避妊手術の方法

まずは全摘の方法をご紹介します。

  1. 全身麻酔をかける
  2. 麻酔を維持しながらモニターをつけて異常がないかを確認する
  3. 問題がなければお腹の毛を刈って消毒する
  4. お腹の皮膚や腹筋を3~5㎝ほど切開して、開腹し、卵巣を探す
  5. 左右の卵巣につながる血管や靭帯を結紮して切る
  6. 2股になっている子宮が1つになる部分(子宮体・子宮頸管部)を糸で結紮し切断する
  7. 子宮と卵巣を一緒に摘出したら、腹筋や皮膚を縫合する
  8. 麻酔から覚まして終了

一方、卵摘では、子宮を結紮したり切断する手間が少なくなり、傷口が小さく(2㎝程)短い手術が可能になります。

最近では卵巣や子宮の結紮に糸を使わないシーリングシステムを採用している病院も多く、縫合糸に起因する感染や炎症のリスクを減らしたり、手術時間の短縮が可能になっています。通常、手術時間は30分以内、麻酔をかけ始めてから覚めるまで1時間程度で終了することが多いです。

 

全摘と卵摘はどちらがいいのか?

メス猫の避妊手術には、子宮を取るかどうかで全摘と卵摘に分かれます。子宮を取るメリットは子宮の病気が起こる可能性が無くなることです。一方で卵摘は傷口が小さく、手術時間も数分短く行えるため猫の負担が少なくなります。

どちらがいいのかについては意見が分かれており、その病院の考えによってどちらかの方法を取ります。一般的に、若いうちに卵巣を取ってしまえば、女性ホルモンもかなり減るため、子宮の病気のリスクはかなり少ないと言われています。私は、若いころに卵摘をしたメス猫で、子宮の病気になった猫を見たことがないため、卵摘でも問題ないと考えています。

ただし、ある程度の年齢になってからの避妊手術の場合はすでに子宮の病気を持っている可能性もあるため、子宮も摘出する必要性は高くなります。

いつ避妊手術をしたらいいのか


猫の避妊手術の時期については、明確なガイドラインはありません。ただし、避妊手術による乳腺腫瘍の予防効果は、発情が来るたびに弱くなってしまうため、若いうちにしておいた方がいいのは間違いないでしょう。

一部では、生後3~5か月のうちに避妊手術を行う「早期避妊手術」を推奨している病院もあります。かなり若いうちに手術を行うことで病気のリスクが少なく、痛みも少なくて済むというメリットもありますが、内臓機能が大人よりも弱い猫への全身麻酔のリスクもあり、早期避妊手術の是非に関しては、議論が分かれています。

一般的には生後6か月での手術がすすめられていることが多いです。

手術前日・当日・術後の流れ

実際に避妊手術の予約を入れて手術をした場合に、どんな流れになるのかを見ておきましょう。

手術前日

全身麻酔をかけるときにお腹にご飯が入っていると、麻酔をかけたときにおう吐して気管に入ってしまうこともあるため、前日の夜からの絶食を支持されることが多いです。病院によって絶食の時間は決まっていますので、かかりつけの病院にしっかり確認しておきましょう。

手術当日

避妊手術の当時は、朝に動物病院へ連れていき、お昼の時間の手術に備えるという病院が多いです。術前の検査や点滴などを行う病院もあるため、必ず指示された時間までには受診するようにしましょう。術前の検査で異常が出た場合は手術が中止や延期になることもあります。

一部の病院では手術の見学ができる施設もありますが、ほとんどの動物病院では、猫を預けて飼い主さんはいったん帰宅します。手術は午前診と午後診の間に行われることが一般的です。

手術が終わったら、そのまま1泊入院をする病院が多いですが、その日に帰れる場合もあります。どちらになるのかも事前に聞いておきましょう。日帰りになる場合は指定された時間に、1泊入院になる場合は翌日に退院となります。

術後

退院してからは基本的には普通通りに生活できますが、傷を舐めないようにエリザベスカラーをしたり、化膿止めを飲むこともあります。また、傷口を清潔に保つために服を着せてくれる動物病院もあります。

基本的には1~2週間後に抜糸が必要になります。抜糸の必要のない埋没縫合(皮内縫合)を実施している病院もありますので、希望がある場合は聞いておきましょう。

手術の費用


手術の費用は病院によって異なります。安い病院が一概にいいとは言えず、費用の高い安いには術前検査の内容・手術に使う糸や道具の違い・麻酔薬の違い・手術に関わるスタッフの数・点滴や入院の有無などによっても変わってきます。

日本獣医師会が発表している「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」では、卵摘も全摘も15,000~25,000円くらいで行っている動物病院が多いですが、若干卵巣子宮全摘出術の方が高い傾向にあります。

血液検査まで合わせると25,000~30,000円程度になる病院が多いです。手術の費用は、動物病院に聞けば教えてくれるので、その価格にすべての費用が含まれているのか、追加費用が掛かる場合はいくらくらい必要なのかは、事前に必ず確認しておきましょう。

手術前の血液検査は必要か?


手術前に血液検査をする病院としない病院があります。また、飼い主さんの希望があればするという病院もあります。血液検査をするかどうかで5,000円程度費用は変わってきます。

術前の血液検査はできるだけ受けるようにしましょう。若い猫ではほとんどは検査を受けなくても問題なく手術は終了します。ただし、肝臓や腎臓などに問題がないかどうかは身体検査だけではわからないことも多く、血液検査をしてみて初めてわかるということもあります。

万が一、内臓に大きな異常があって手術をした場合は、麻酔事故のリスクが高くなったり、術後に調子を崩す原因にもなります。猫にとっては一生に一回の避妊手術です。数千円を節約するために愛猫のリスクを高くしてしまわないよう、極力術前検診はしっかり受けるようにしてください。

まとめ


メリットのたくさんある避妊手術。動物病院によって避妊手術の方法や費用、術前検査の内容などは異なります。それらの手術に関わることをしっかり確認したうえで、納得して手術をしてもらうようにしてくださいね。

今回の記事が、どんなことをするんだろうと不安な飼い主さんの理解につながれば幸いです。