2017年6月13日更新

【獣医師が解説】猫エイズウイルス(FIV)の猫と一緒に暮らす時の注意点は?

後藤大介



獣医師

 

猫の慢性ウイルス病の一つ「FIV(猫エイズウイルス)感染症」。FIVはHIVと同様、1度感染が成立してしまうと完治させることはできませんが、FIVに感染していても長生きできる猫は少なくありません。

FIVの猫を元気で長生きさせるために重要なのがストレスのない生活です。今回はFIVの猫と暮らすためのポイントをいくつか考えてみましょう。

 

ストレスの少ない生活とは?


「気ままに生活している猫にもストレスなんてあるの?」と思われる方も多いと思いますが、もちろん猫にもストレスはあります。愛猫のストレスをできるだけ減らすために、多頭飼いで気を付けるポイントと、多頭飼い・単独飼育に共通するポイントをそれぞれ考えてみましょう。

多頭飼育での注意点

猫は基本的に単独行動の動物であり、多頭飼いの場合はストレスを感じる場面も多くなりますので、以下のような点に注意してください。

パーソナルスペースの確保

猫は単独行動が基本ですので、たとえ猫同士の仲が悪くなくても自分がくつろぐことのできる「パーソナルスペース」を作っておくことは非常に重要です。単に広ければいいというわけではないので、以下の条件を満たす場所をパーソナルスペースとして作ってあげましょう。

  • 玄関や廊下など、人が良く通る場所以外
  • テレビや洗濯機など音がうるさい物から遠い
  • 複数方向に壁があり体をくっつけることができる箱状のものを置く
  • 基本的には他の猫が使わない
  • 周りから見えにくい

トイレの数は「猫の数+1」

猫は清潔好きの動物です。特にトイレへのこだわりが強く、トイレが気に入らないと排尿や排便を我慢してストレス性膀胱炎などになってしまうこともある動物です。

一般的に多頭飼いの猫では、トイレの数は「猫の数+1個」必要だと言われています。もちろん、できるだけトイレを清潔に保っておくことも大切です。トイレ自体が気に入らなかったり、他の猫の排せつ物がそのままになっていることが原因で、トイレのたびにストレスを感じてしまわないよう、トイレ環境を整えてあげましょう。

落ち着いてご飯を食べられる環境

猫は安心できる環境でないとご飯を落ち着いて食べられません。ご飯を食べているときは無防備になりますので、何か恐怖や危険を感じるものがあると、ストレスを感じながら食べないといけません。

他の猫や動物などの危険を意識しないで、愛猫が自分のペースで食べられる環境を整えてあげましょう。

喧嘩をさせない

FIVはヒトのエイズを引き起こすHIVと同じく、通常の日常生活で感染することは少ないです。体液や粘膜同士の接触がなければ基本的には感染しませんので、食器の共用やグルーミングなどは問題ありません。

しかし、けんかなどで、唾液や血液と粘膜が接触すると感染してしまう可能性があります。同居の猫がFIV陰性であるなら喧嘩をしないように注意しておきましょう。相性の悪い猫同士を飼っている場合は、感染を防ぐために部屋を分けておいた方がいいでしょう。

単独飼育・多頭飼育共通のポイント

次に、単独飼育・多頭飼育に共通で、ストレスの少ない生活のために気を付けておくことを考えてみましょう。

縦の空間を確保

家の中で飼っている猫は運動不足になりがちで、そのせいでストレスが溜まってしまうこともあります。猫は床の上の平面の空間よりも、立体的な縦のスペースを使うことを好み、縦に動ける空間があるとストレスを感じにくくなります。キャットタワーやキャットステップをうまく取り入れて、縦のスペースをうまく使えるようにしてあげましょう。

静かで落ち着ける場所の確保

猫は物音に敏感です。急な物音や大きな音は猫に強いストレスを起こす原因になります。特に犬などの他の動物が鳴いていたり、工事・リフォーム・生活音がうるさいと落ち着いて生活できず、大きなストレスになってしまいます。極力静かで落ち着ける場所を確保してあげるようにしましょう。

退屈させない工夫

1日中家の中で過ごす猫は、退屈によるストレスが強くなることもあります。特に1人暮らしでかまってあげる時間が少ない場合などは、昼の時間はずっと退屈していることもあります。できるだけ猫との時間を作って、遊んであげるようにしましょう。

また、留守番中にも退屈させない工夫をすることもできます。1人で遊べるおもちゃや、フードを入れて転がしながら食べる「コング」などの知育玩具を与えてあげることも有効です。体だけでなく、頭の運動をさせてあげることで日常の刺激が増え、退屈によるストレスが解消されることもあります。

気を付けておくべき病気


FIV感染症では免疫力が低下するため、感染症や腫瘍などの発生率が上がってしまいます。特に以下のような病気を起こしやすくなるので注意してください。

難治性口内炎

FIV感染症の猫が最も悩まされるのが口内炎です。FIVが直接口内炎を起こすわけではないですが、FIVによる免疫力の低下によって、口内炎が非常に起こりやすくなり、なかなか治りくい「難治性口内炎」になってしまうことが少なくありません。歯石や歯垢が口内炎を悪化させる要因にもなるので、定期的に歯磨きをする癖をつけてあげるといいでしょう。

猫風邪(FVR)

猫風邪はFIVではなく、猫ヘルペスウイルスによって起こる病気ですが、FIVがあると慢性的な猫風邪になってしまうことが多いです。猫風邪は感染猫との直接および間接接触によってかかりますので、外に行ってうつされたり、飼い主さんの手や衣服に付いたウイルスが感染することもあります。

FIVのある猫は、3種混合ワクチンなどで猫風邪を予防しておくことをおすすめします。

その他

FIVは免疫不全を引き起こしますので、猫風邪や口内炎だけでなく、胃腸炎や肺炎などの感染症を起こしやすくなります。また、腫瘍細胞に対する「腫瘍免疫」も落ちるため、リンパ腫などのがんの発生率も高くなります。何か体調不良がないのか、できるだけしっかり体調を見てあげることも大切ですね。

 

まとめ


FIVに感染していても、ストレスの少ない生活をすることで、健康に長生きすることも可能です。猫は繊細な動物で、意外なことでストレスを感じてしまいます。ストレスは猫の免疫力をさらに下げ、ウイルスの増殖や感染症を悪化させる要因です。できるだけ環境を見直して、猫が快適にストレスなく生活できるようにしてあげましょう。

また、FIVに感染していることにより、病気のリスクも増加してしまいます。口内炎などFIVがもとで治りにくくなる病気も多いので、病気の兆候がないかしっかり様子を観察し、異常があれば早めに動物病院へかかるようにしてくださいね。

 
 

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