2017年7月13日更新

病院へ連れていくべき犬の下痢とは? 犬の下痢~原因・対処法【獣医師が解説】

ペット生活



編集部

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人と同じく、犬にもお腹が丈夫な子もいれば弱い子もいます。そのため、ちょっとしたことですぐに下痢をしてしまう子から、高齢になるまで一度も下痢をしたことのない犬まで、便の状態はその子によってさまざまなんです。

犬の下痢を起こす原因や病気は非常に多いため、同じ下痢でも少し様子を見ていてもいい場合と、一刻も早く病院で診てもらった方がいい場合があります。今回は、犬の下痢についてその原因や対処法などを考えてみましょう。

 

犬の下痢の原因

下痢にはさまざまな原因があるため、「下痢があればこうする」という対処方法はありません。まずは下痢の原因にどのようなものがあるのかを見ていきましょう。犬に多い下痢の原因は以下の通りです。

  • 胃腸炎:消化不良・ストレス・感染(細菌/ウイルス/寄生虫)・アレルギー
  • 胃腸の腫瘍
  • 膵炎/膵外分泌不全
  • 胃腸内異物
  • 前立腺疾患(オス)
  • 子宮蓄膿症(未避妊メス)など

他にも下痢を起こす病気はたくさんありますが、比較的よくみられる下痢の原因をあげてみました。このうち、膵炎や胃腸内異物、子宮蓄膿症などは数日で命に関わる可能性もある怖い病気です。「下痢なら大丈夫」と様子を見ていると、取り返しのつかないことになることもあります。下痢を起こす原因には、危険な病気もあるということは頭に入れておきましょう。

犬の下痢のタイプ

下痢は、「便の中の水分が増えて柔らかい状態」を指します。そのため、下痢と言っても程度によっていくつかのタイプに分かれます。

便の硬さ(下痢のひどさ)による分類

軟便~水様便になるほど便の中の水分の量は多くなります。軟便だから大丈夫とか、水様便だと危険だということではありませんが、下痢がひどくなればなるほど水分が多くなり形が無くなってきます。下痢のひどさによって、便の性状を3つほどにわけることができます。

  • 軟便:形があってつかめるがいつもより柔らかい便
  • 泥状便:形がなく、泥状になっている便
  • 水様便:ほとんど水のような便

便の色による分類

下痢は硬さだけでなく、色によってもいくつかの種類に分けることができます。下痢の色は、原因や危険性を推測するのに役立ちますので重要な所見の一つです。

  • 白色便:白っぽい色をした便。
    脂肪の消化不良や胆管閉塞で見られます。
  • タール便:タールのような黒いドロドロの便。
    胃や小腸からの出血や腸粘膜の壊死など、危険な病気が原因であることも多いため、タール便が見られた場合は要注意です。
  • 血便:便に赤い血が混じる便。
    大腸のように比較的肛門付近の腸の出血であることが多いです。
  • 粘血便:便にドロッとした粘液と血が混じる便。
    大腸からの出血と粘液分泌が混じった場で、見た目は派手ですが、犬ではストレス性の大腸炎など一過性の下痢でもよく見られます。

原因の部位による分類

腸のどの部位が問題で下痢が起きているかによっても大きく2つに分けることができます。

  • 小腸性下痢:小腸に原因がある下痢です。
    排便回数はそれほど増えず、1回量が比較的多い下痢です。「しぶり」は通常起こりません。
  • 大腸性下痢:大腸に原因がある下痢です。
    少量の便を何度もすることが多い下痢です。強く便を気張る「しぶり」が出ることも多いです。

大腸性下痢は一過性で治まることもあり、元気や食欲は落ちてこないことも珍しくありません。一方、小腸性下痢はややこしい病気に伴うことも多く、しっかりとした検査が必要になることも多いです。

 

病院へ連れていくべき下痢とは?

では、犬が下痢をした場合、どんな状況の時に動物病院で診てもらった方がいいのでしょうか?

緊急性の低い下痢

まず、犬の下痢で様子を見てみてもいいケースは以下の通りです。

  • 元気/食欲が変わらない
  • 嘔吐がない
  • 腹痛がない
  • 4カ月齢以上

こういった場合は、緊急性が少なく一過性の下痢であることもありますので、少し様子を見てみてもいいでしょう。ただし、徐々に悪化して夜間に状態が悪くなるケースもあります。心配な場合は早めに動物病院で診ておいてもらった方がいいでしょう。

自然に治る下痢であれば2~3日で改善します。元気食欲があって嘔吐がなくても、3日以上続く下痢があれば動物病院で診てもらってください。

早めに診察が必要な下痢


一方、早めに診察が必要なのは以下のような下痢です。

  • 元気/食欲が低下している
  • 何度も嘔吐をする
  • 強い腹痛がある
  • 3カ月齢未満
  • 3日以上続く

嘔吐があると脱水が進みますし、元気食欲の低下や腹痛が併発している場合は重度の胃腸炎や全身的な疾患が隠れている可能性もありますので、これらがある場合はあまり様子を見ない方がいいでしょう。また、3カ月齢以下の子犬はまだ予備能力が少なく、状態が急変しやすいです。子犬の場合は元気があっても早めに診てもらった方がいいでしょう。

動物病院へ行くときの注意点

動物病院へ行くときは、下痢便そのものがあるとその性状の確認や検便などができ、診断の助けになります。ペットシーツや拭いたティッシュごとでかまいませんので、便を持って動物病院を受診するといいでしょう。

また、「お尻が汚れたからシャンプーをして動物病院へ連れてきた」という飼い主さんもいますが、ひどい下痢をしてお尻が汚れていても、全身のシャンプーはしないようにしてください。シャンプーによるストレスや体温低下によって状態が悪化してしまうことがあります。お尻が汚れた場合は蒸しタオルで拭くくらいにしておいてください。多少お尻が汚れていても動物病院で怒られることはありませんので安心してください。

下痢をひどくしないための方法

犬が下痢をした場合の最も確実な対処方法は、動物病院へ行くことです。もし、少し様子を見る場合は以下のような対策を取ってみると効果があるかもしれません。

フードをふやかす

ドライフードを食べているのであれば、それをお湯でふやかして与えてみてください。ドライフードをふやかすことで、消化が良くなり下痢が改善することもあります。

1回量を減らす

消化不良であったり、大腸が過敏になっている場合は、1回量を1/3~1/2に減らすのも効果的です。一気にたくさん食べると消化が悪くなるので、下痢の場合は少量頻回の給餌がすすめられます。

1日以上の絶食は避ける

ご飯を与えないと下痢は少しましになるケースが多いです。ただし、それは腸の状態が良くなったわけではなく、単に出るものが無くなっただけなんです。腸には、栄養を吸収するための絨毛と言われる構造がありますが、絶食をすることで絨毛が短くなって余計に消化吸収能力が落ちたり、腸内細菌のバランスを崩す原因となることがわかっています。

以前は、「下痢は絶食すれば治る」と信じられていましたが、現在はそういったことは否定されています。成犬であれば半日程度の絶食は問題ありませんが、1日以上の絶食は胃腸の状態を悪化させることがありますので、やめておいてください。また、子犬の場合は絶食による低血糖の心配もあるので、絶食はしない方がいいでしょう。

サプリメントを与える

ペットショップには、犬用のサプリメントとして乳酸菌やビフィズス菌、オリゴ糖などのサプリメントが販売されています。サプリメントはすべての下痢に有効ということもありませんし、重度の病気が隠れていればこれを与える意味はありませんが、腸内環境の改善のためには使ってみる価値はあります。品質に問題がなければこれらのサプリメントを与えるデメリットはほとんどありませんので、軽度の下痢であればサプリメントを試してみてもいいでしょう。

下痢を起こさせないために普段からできること

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下痢の原因はさまざまです。その原因をまず知ってその原因に合った対処方法を取ることが大切ですが、一般的に下痢をしやすい子で普段気を付けることは以下の通りです。

フードの種類を考える

体質によってはフードの種類を変えることで下痢をしにくくなることがあります。下痢をしやすい子では以下のようなフードが効果的であることがあります。

  • 高消化性フード
  • 低脂肪食
  • 高繊維食

これらのフードを2~4週間続けて、便の状態を確認してみて下さい。2~4週間で改善が見られない場合は、そのフードを続けていてもあまり効果が出ない可能性が高いです。もし、便の状態が良くなったり下痢の頻度が減る場合は、そのまま続けてみましょう。

いろいろなものを与えない

フード以外におやつや人のご飯を与えている場合、それが消化不良やアレルギーの原因になる可能性があります。お腹が弱い子は一度フード以外に何も与えないで2~4週間様子を見てみましょう。もしそれで下痢をしないのであればおやつなどが原因になっている可能性も高いです。

フードを少量頻回で与える

ドッグフードを少量頻回で与えることは、消化の弱い犬の腸に優しい給餌方法です。1回量を減らして回数を増やすことのデメリットはありませんので、手間をかけられるのであれば、1日トータルの量は同じにして、3~4回に食事回数を増やしてみましょう。

少量頻回の給餌は、空腹感を減らし、拾い食いなどのリスクも減らしてくれます。そのため、拾い食いの癖がある子にもその予防として有効な手段になります。

普段からサプリメントを与える

対処法のところでもご紹介しましたが、乳酸菌やビフィズス菌、オリゴ糖などのサプリメントには基本的にデメリットはありません(品質に問題がある場合を除く)。そのため、普段からこれらのサプリメントを食餌に混ぜて食べさせることで、消化管の環境を改善し、下痢をしにくい体作りに役立つ可能性がありますね。

まとめ


犬を飼っていると下痢をしてしまう子とは珍しいことではありません。下痢をした場合は動物病院で診てもらうことが一番いいのですが、「下痢だけで毎回動物病院に行くのは……」という気持ちもわかります。

危険な下痢があることを理解したうえで、様子を見る場合は正しい下痢の対処法を実践できるようにしましょう。また、下痢をしやすい子では、普段から下痢をしにくくするために、もう一度愛犬の食生活を見直してみることも大切ですよ。