2017年7月8日更新

犬の歯周病の原因、歯垢や歯石の対処法【獣医師が解説】

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犬の歯石は食べたものの残りに口の中の細菌やミネラル分が結合してできます。歯垢がまず歯に付着しだんだん歯石という状態になります。歯石は細菌の塊ともいわれ、この細菌が血流にのり腎臓や心臓の病気の原因になるともいわれています。歯石になる前の歯垢をできるだけ取り除くことが歯石の予防には重要で、定期的に獣医師のチェック受け、歯磨きをしっかり行いましょう。

 

犬の歯と人の歯の違い

人の歯と犬の歯には様々な違いがあります。まず、それぞれの歯の役割からお話しします。
切歯の役割は「食べ物を食いちぎったり、かじる」こと、犬歯の役割は「獲物をしとめたり、大きな食べ物を引き裂いたり、くわえて運ぶ」などです。また、臼歯には2種類あり、前臼歯は「食べ物を噛み切る」役割があり、後臼歯には「食べ物をすりつぶす」役割があります。
犬の上顎には切歯が6本、犬歯が2本、前臼歯が8本、後臼歯が4本、下顎には切歯が6本、犬歯が2本、前臼歯が8本、後臼歯が6本で合計42本あります。
人の上顎には切歯が4本、犬歯が2本、小臼歯が4本、後臼歯が6本(内2本は親知らず)下顎も上顎と同様ですで合計32本です。
人は進化の過程でだんだん道具を利用したり、火を扱うようになり切り裂く、噛みちぎることが少なくなっていきました。それにつれて歯もだんだん必要のないものから退化していったといわれています。
肉食動物の場合、臼歯の一部が裂肉歯という特殊な構造の歯があり、この歯で肉や骨をハサミのように剪断しますが、ヒトは持っていません。
 
また、口の中の環境も犬と人では大きく異なります。
pHと口の中の消化酵素が犬と人で異なることが口腔内環境の大きな違いになっています。
犬は口の中のpHが8.5~9.0でアルカリ性ですが、人はpH6.5~7.0で弱酸性~中性です。また、唾液に含まれる炭水化物を分解するアミラーゼを人は持っていますが犬は持っていません。
このような違いがあるため犬は虫歯になりにくいといわれる理由です。

犬は虫歯になりにくいのはなぜ?

それでは、なぜ犬は虫歯になりにくいのでしょうか?
虫歯は口の中にいる細菌が食べ物の残りかす(炭水化物)を分解・発酵し作った酸が歯の表面の組織を溶かし穴をあけてしまう病気です。
この細菌は酸性の環境を好みます。ところが犬の口の中はpHが8.5~9.0でアルカリ性なので、口の中で虫歯のもとになる細菌が繁殖しにくくなっています。
また、唾液の中には炭水化物の消化酵素である「アミラーゼ」が含まれています。このアミラーゼは食べ物を噛むときに混じり炭水化物を分解し糖にします。
しかし犬の唾液中にはこのアミラーゼが含まれていないため、炭水化物が含まれるドッグフードなどを食べても分解されないため、口の中に糖が残りにくくなります。
この糖分は虫歯の原因になる細菌の餌になりますので、口の中にはできるだけ糖分を残さないほうが良いのです。
また、ヒトの歯は臼状で表面に溝がありこの溝に食べたものの残りかすが付着しやすいですが、犬の歯は裂肉歯で歯の先端の形が滑らかでとがっています。
そのために、食べカスが付着しにくい構造であることも犬が虫歯になりにくい原因になります。

 

歯垢と歯石の違い


歯垢は歯の表面に付着する黄色いべたべたした汚れです。歯垢は食べ物のカスではなく、細菌と細菌が代謝した物質の塊です。歯垢1mg中には数億もの細菌が潜んでいます。何かを食べると8時間くらいで歯垢ができ、歯の表面や歯の隙間に付着します。
歯垢に唾液中のカルシウムなどのミネラルが混じり(石灰化)歯石と呼ばれる石になります。歯垢が付着して48時間たつと歯石になるので、2日に1回は歯磨きを行い歯垢を除去していくことが歯石を付着させないためには大切です。

お家でできる歯のお手入れ方法

歯磨き

歯磨きペーストを使用し、歯ブラシで歯を磨く方法が一番歯垢を除去できる方法です。歯ブラシと水で歯磨きをした場合、口の中の細菌は98%減少し、歯ブラシとペーストで磨いた場合、口の中の細菌数は100%減少したという報告もあります。犬の歯磨きペーストには歯垢を分解する酵素入りのものがありお勧めです。味は人の歯磨き粉のようにミント系のものは少なく、チキン・モルトなど犬が好むような味や香りがついているものもあります。細かく磨くのは難しいかもしれませんが根気強く歯の表面の歯垢を取り除くように磨いてあげてください。

おもちゃ

歯石や歯垢をおもちゃをかむことでこすり落とす効果があります。噛む方向や癖がありますので全体的に歯垢を落とすことは難しいです。

ガム

牛革や豚皮を加工したものや、歯垢を分解する酵素入りのものなどがあります。噛む方向や噛み癖などがありますので全体的に歯垢を落とすことは難しいです。口臭が軽減することは期待できます。ガムは沢山あげすぎると下痢を起こすこともありますので、各商品の袋に記載されている1日の投与量をしっかり守ってください。時間的には食後にあげ、歯の表面に付着する歯垢をできるだけ減らしていきましょう。

スプレー

歯の表面にスプレーすることで、歯石が少しずつ剥がれ落ちる効果があるものもあります。スプレーの刺激を嫌がる犬もいますので、スプレーを手にとって歯の表面に塗るなど、徐々に使っていく方がよいでしょう。

塗るタイプ

口腔内にまんべんなく塗り洗い流したり磨いたりしないタイプです。歯垢の多い歯の部分や、歯と歯茎の間口の中の細菌数を減らし、口の中を清潔に保つことで口臭を抑えるタイプです。

ガーゼや歯磨きシートでこする


最初から歯ブラシを使うのは困難なことが多いので、指にガーゼを巻きつけて歯の表面のべたべた汚れを拭い取るようにします。歯垢にミネラル分が混じり歯石になりますので、歯垢を減らすことで歯石の付着を防ぐことができます。
一番歯垢が落ちるのは歯ブラシを使うことですが、ガーゼや歯磨きシートでこすることは歯ブラシの次に歯垢が落とせます。歯ブラシをおもちゃにしてしまったり、歯ブラシを嫌がる場合はガーゼや歯磨きシートで歯の表面のべたべたをしっかり拭いてあげましょう。歯と歯の隙間や歯と歯肉の隙間はやはりブラシのほうがとりやすいですが、できるだけ隙間を意識してふいてあげてください。

歯石がついてしまった場合におこる症状

歯石は細菌の塊です。この細菌が毒素を出し、歯肉に炎症を起こし歯肉炎を引き起こします。
また、歯石は歯の表面に付着しているだけでなく、歯と歯肉の間の歯周ポケットという隙間に入り込みながら大きくなっていきます。
歯周ポケットが大きくなるとだんだん歯肉が後退し、歯の支えが少なくなり歯がぐらぐらと動揺するようになります。
さらに歯周への細菌感染がひどくなると歯を支える歯槽骨が溶けてしまったり、歯肉の中や歯の根(歯根)に膿がたまることもあります。
歯肉には血管が多数ありますので、細菌が血管内に入ってしまうと全身に運ばれ心疾患や腎疾患の原因になることもあります。

獣医師でのお手入れとは


歯石の付着が重度ではない場合には、動物病院で歯ブラシを用いて歯磨きを行います。歯と歯の隙間、歯と歯肉の間などを重点的に磨きます。
頻度は理想的には1~2か月に1回程度ですが、歯石の付着度合い、口臭の程度によって変動します。
重度の歯石付着がある場合は歯ブラシでは落とせないので、機械を使用してのスケーリングを行います。
1歳までの若い犬たちでは歯石の付着は少ないですが、年齢を重ねるにつれ歯石が付着してしまいます。
経験的には小型犬ほど早く歯石が付着する傾向がありますので、小型犬の歯のお手入れは習慣化したほうが良いでしょう。

無麻酔のメリット・デメリット

メリット:

高齢の犬や持病があり麻酔をかけるリスクが高い場合には無麻酔で行える歯石除去が安全です。

デメリット:

痛みがひどい場合や歯石が歯にがっちりついている場合などはしっかりとれないこともあります。
また、出血がひどい場合や歯石の付着がひどく歯が抜けてしまった場合など圧迫止血を行います。ある程度の時間しっかり押さえる必要がありますので、無麻酔下では動いてしまい止血が困難になる可能性もあります。

歯周病や歯石がひどい場合の治療

歯周病や歯石がひどくなった場合にはスケーラーという機器で歯石を除去し、ぐらつきのある歯は抜歯したほうが良いでしょう。血液検査を行い麻酔をかけても問題がないことを確認したうえで行うことが望ましいです。歯周病がひどい場合には抗生物質や消炎剤の内服投与も必要になります。歯石が付着している場合歯磨きや歯石除去用のスプレーでは限界があります。いったんスケーリングで除去し、歯磨きをしっかり行うことをお勧めします。

歯石の防ぎ方

歯石は口の中の細菌叢に左右されるといわれますが、食生活も大きな影響を与えます。
缶詰よりもドライフードのほうが歯石が付きにくく、だらだら食べるよりも1日2食でメリハリがあるほうが良いといわれます。
1日中だらだら食べると口の中に残渣が残りやすくなり、細菌繁殖の原因なりやすくなります。

歯石がつきやすい犬種


歯石は小型犬に付着しやすく、「プードル」「ヨークシャテリア」「ダックス・フント」「マルチーズ」「チワワ」は多い傾向があります。
体質的なこともあると思いますが、室内犬で飼い主様からおやつや人の食べ物をもらう機会が多いことも一つの原因と思われます。
また、プードルやヨークシャテリア、チワワに多いですが、遊びながら少しづつ1日かけて食べるケースが見受けられます。このような食べ方をする犬は歯石がつきやすい傾向があります。