2017年6月24日更新

【獣医師が解説】麻酔をかけずに犬や猫の歯周病をなんとかしたい。

馬殿 達也



獣医師

北里大学獣医学科卒業。皮膚科・漢方薬に興味を持ち各種学会・勉強会に参加しております。漢方薬は人医療の研究会にも参加し医師・薬剤師の方々とともに研鑽を積んでおります。動物だけでなく植物も好きで、趣味の家庭菜園や果樹栽培などもやっております。

 

こんにちは
今回のコラムは歯周病の内科的なケアです。

他の獣医師に怒られそうなタイトルではありますが、現在の獣医学ではきちんと歯周病を治療するならば麻酔をかけての口腔治療が最善です。しかし、飼い主さんのお話を聞いてると麻酔が心配という声をよく耳にします。

最近ではそれにつけこんで『無麻酔で歯石を取ります』というペットショップやらトリミングサロンやら果ては獣医師さえいます。無麻酔では歯石は取れなくはないですが歯周病に対してきちんとケアをしようと思うと歯周ポケット内もきちんとケアしないといけないので無麻酔で非常に困難です。

メリットが乏しい上にデメリットが盛りだくさんのため、絶対やめてください。ほとんどの場合、無麻酔でのまともな治療は不可能です。

ちなみに法律上では”動物病院の歯石除去=医療行為”他のペット施設での歯石除去=美容(傷をつけた時点で医療行為になるため行政処分の対象にも飼い主様からの訴訟対象にもなるため大したことができません。)

と区別されています。

参考:獣医歯科研究会からの無麻酔歯石除去に対する注意文

 

しかしながら「ペットに麻酔をかけたくないけれど、口臭や歯槽膿漏をなんとかしたい」といったお声も多く、少しでもお力になれるよう内科的な治療をご紹介します。

 

まずは誤解のないようにご説明させていただきます。私がお勧めする内科治療は歯石を取る効果はありません。だから歯の汚れが落ちるわけではありません。でも歯肉の炎症が落ちつくと歯槽膿漏で膿んでいるところが良くなり歯周病がマシになります。

別のコラムでお話しましたが、歯石自体は歯周病を直接引き起こすのでなく歯石を住処にしている歯周病菌=歯垢の出す毒素が歯歯肉に炎症を起こし、膿んできます内服薬は歯石は取れないが、歯周病の症状を抑えることができるのです。

 

どういった内科治療があるのでしょうか?

 

①西洋薬:

抗生剤や炎症を抑える薬で歯周病菌を抑え、炎症を鎮めていく。この方法には大きな欠点があります。抗生剤は通常、長期間投与するものではなく、歯周病自体は抗生剤で一時的に症状を押さえ込むだけです。

ですので、歯石除去を行うまでの間の短期間だけ使って症状をコントロールするといった方法で使われることが多いです。最近では口腔内の免疫を上げるためにインターフェロンや乳酸菌サプリを使う獣医師もいらっしゃいます。

また、猫ちゃんの歯周病は原因が不明なものや猫エイズによるものなどもあります。これらの場合は疼痛緩和を目的としてレーザー治療やインターフェロン、ステロイドなどを用いることがあります。これらについては今後のコラムでお話ししていきます。

②漢方薬:

歯周病を起こしやすい体質を補正し、口腔内の免疫を高めるとともに炎症を鎮め、膿を除去していきます。漢方薬は長期間飲んでも大丈夫な上、体質改善によって全身の体調を良くすることができるのが魅力的です。特に老化型歯周病は腎の気虚からくるものが多く、そこの補正により>高齢期にありがちなトラブルもケアすることが可能です。

 

当院では短期間の場合は西洋薬・漢方薬を併用し、長期間のケアを行う場合は漢方薬を使ったケアをご提案しております。漢方の視点から考える歯周病は今後のコラムで詳しくお話ししますね。