2017年8月10日更新

家の中がめちゃくちゃ!もしかしたらうちの犬は分離不安?その原因と対処方法。

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家に帰ってきたら、壁紙が引きはがされて、クッションの中身が出て散乱している。なぜこの場所に?と思うところにおしっこやうんちがしてある。
もしも、このような状況を愛犬が起こしているならば、分離不安という状態かもしれません。
分離不安とは何が原因で起こり、どのように対処すればよいのか解説します。

 

分離不安とは


分離不安は問題行動の一種で、飼い主様と離れることで極端な不安感が起こりパニック状態になることを指します。
犬の分離不安の症状とは、飼い主さまがいなくなると、「物を破壊する」「ずっと鳴き続ける」「あちこちに排泄する」などの行動を起こしてしまうことです。飼い主さまがいるときにはそのような行動を起こさず、飼い主さまが不在になって30分後位から問題行動が起こることが特徴です。

分離不安のよくある症状

  • ずっとほえ続ける
  • 物を壊す
  • ゴミ箱などをひっくり返しあさる
  • あちこちに排泄する
  • 嘔吐・下痢
  • 自分の手足を舐める
  • 暴れて怪我をする

など

分離不安の原因

分離不安が起こる原因にはどのようなものがあるのでしょうか?

外出や長期不在

飼い主さまが外出すると一人きりにされた孤独感や苛立ちが生じます。飼い主様に対する依存度や距離感が密な犬ほど一人で過ごすことに慣れていないために分離不安がひどくなる傾向が出ます。

苛立ちをぶつけるように物にあたり破壊したり、飼い主様を呼ぶように鳴き続けます。言葉が通じない分、「態度」「吠える」ことで自分の感情を表現したり訴えかけるようになります。

過度にかわいがる

飼い主さまと接触する時間が長く、四六時中一緒飼い主さまと行動を共にする犬の場合分離不安になりやすくなります。飼い主様に対する依存度が高く、姿が見えないと不安になってしまい吠えて呼ぶなどの行動が起こります。

同じベッドで寝る、トイレに行くときも連れていく、おんぶ抱っこひもで抱っこしている、食事も同じテーブルでとる、留守番させないで出かけるときはいつも一緒などが常習化すると起こりやすくなります。

用事のために飼い主様が外出しても、一緒にいることが当たり前になっている犬には事情が分からず、「置いて行かれた」極端な場合は「裏切られた」かのような感情になり、問題行動が起こりやすくなります。

新しい家族が増えた、家族が減った

新しい家族は「人」「動物」どちらにも当てはまります。増えて分離不安が起こる例としては「結婚して家族が増えた」、「子供が生まれた」、「新しい犬や猫が増えた」などが多く、家族が減った場合は「結婚、進学、就職で家族が別居した」、「亡くなった」などがあります。このような出来事は人には事情がつかめますが、犬にとっては突然の出来事です。

新しい家族を恐れたり、いなくなった人や動物を探す行動は自然なことです。失った家族に対してはだんだん諦める気持ちが芽生えます。新しい家族に対しては慣れていくケースもありますが、反対に攻撃的になってしまう場合があります。特に、今までかわいがられていた犬への対応が後回しになってしまったり、疎外感を感じさせるような態度になってしまった場合は問題行動がひどくなり、犬との関係が修復不可能になることもあります。

運動不足などでストレスがたまっている

犬は牧羊犬、使役犬、愛玩犬などのグループ分類ができます。牧羊犬は羊や牛の群れなどを統率・監視する犬たちで、1日にかなりの距離を歩いたり走ったりしていました。現在では牧羊犬であっても仕事としてそのような働きをせず一般家庭のペットとして暮らしている犬が多くなりました。そのため、本来運動量が多い犬種にかかわらず運動不足になりストレスが溜まり、ストレス発散のために室内を荒らすことがあります。

老化

高齢になると目が見えにくくなる、臭いがわかりにくくなる、耳が聞こえにくくなるなど周りの状況がわかりにくくなります。すぐに視覚・嗅覚・聴覚が悪くなるわけではなく、徐々に悪くなっていきますので、老化の最初のころには普段とあまり変わらない生活を送ります。

さらに症状が進むと、周りの状況がわからなくなり不安感が強くなるので、飼い主様の後を追うような行動や、飼い主様から離れたがらないなどの行動の変化が起こります。

 

分離不安の治療


分離不安の治療には投薬・サプリメント・トレーニングがあります。

投薬

分離不安は飼い主様と離れることで起きる一種のパニック状態です。投薬治療は精神を落ち着かせる薬を使います。
メリットとしては投薬する薬の種類と量が決定できれば分離不安の状態が起こらず、飼い主様の心痛が減少することが期待できます。

また、犬もパニック状態になって暴れてケガをしてしまったり、食べてはいけないものを食べてしまい中毒を起こしたり腸閉塞を起こしてしまうなどのリスクの回避ができます。

デメリットは精神を落ち着ける薬なので沈鬱状態や一過性の運動失調が起こる場合があります。薬が代謝して体外へ排泄されればそのような状況は改善することがほとんどです。

サプリメント

スプレータイプやディフューザー、タブレット、首輪などがあります。これは、分娩後の母犬が産生するフェロモンで、皮膚分泌物の成分から誘導した物質で、子犬が誰かに教えられなくても母犬のお腹に向かって進んでいくことを助けます。このフェロモンは精神的に安定させる作用を持ちます。この物質の香りは犬でないとわからないもので、環境中に拡散しても他の動物には一切影響を与えません。

メリットは、環境中にこのフェロモンが拡散しても誰にも悪影響が出ないことと、副作用がほとんどないことです。
デメリットは、効果が有無に個体差があることです。効果がる場合は嘘のように分離不安がなくなりますが、反対に全く効果がない場合もあります。

トレーニング

きっかけは何だったのか?どのような性格なのかを考えながらトレーニングのプログラムを立てます。飼い主様も犬もトレーニングを受けます。
メリットは、根本的に治療ができることです。何が原因だったのかがわかればその部分を修正していきます。

デメリットは、犬が相手によって態度を変えてしまったり、トレーナの指示には従うが飼い主様の指示には全く従わないなどが起こることです。トレーニングプログラムは専門家が立てるほうが治療効果が高く、トレーニングの方向性が異なると問題をさらに悪化させてしまうこともあります。

分離不安の予防


分離不安が起きにくくするためには適度の距離感と、安心感が必要と言われています。どのように予防していけばよいのでしょうか?

  • 後追いをさせないようにマテができるようにする
  • 飼い主がいなくなっても帰ってくるという安心感を覚えさせるためにドア越しのマテができるようにする
    分離不安は「いなくなる恐怖」から始まるケースが多いので、見えなくなってもずっとではなく待っていれば帰ってくるという安心感を覚えてもらうようにします。
  • いなくなることと関連付けるような行動をしない
    犬たちが飼い主がいなくなることと関連付けやすいのは「着替え」「化粧」「鞄を持つ」「鍵の音」などです。外出するときの行動は何回か行うと犬が学習し、この行動をすると一人っきりになることと関連付けてしまいます。
    このような行動を犬の前で行わないようにすることは大事です。また、反対にこの行動を行い、出かけるふりをしてすぐ帰ってくるのも効果がある場合があります。お出かけの動作をしても必ずしも出かけないことで、
    「いつもそうではない」ことを学習することができます。
  • 外出前に声をかけない、おやつをあげない
    出かける前に「行ってきます」「お留守番」「いい子でね」などの声掛けや、外出する服装でおやつをあげるなどは「飼い主がいなくなる前の儀式」のように犬がとらえます。
    この合図があればいなくなるというように学習してしまいます。声をかけず、出かけるところを見られないということも分離不安にならないためのコツです。
  • 帰宅時に声をかけない、目を合わせない
    帰宅時に「ただいま」「ごめんね」「寂しかったね」などの声掛け、抱き上げるなどの行動は良いのですが、過剰になるのは分離不安を引き起こすことがあります。

過剰にならないようにさりげなく、何はともあれまず犬の相手という習慣がつくのはお互いに依存度が高くなるので避けたほうが良いでしょう。

分離不安は犬と飼い主の過剰な接触から引きこされてしまう場合が多いです。
破壊行動からケガをしたり、異物を食べてしまい体調を壊したり、犬にとってリスクが高くなります。

また、鳴き声に対して近所からクレームが出てしまったり、かわいいはずの犬に対してストレスを抱くようになったりという問題も起こります。
様子を見たり、悩んでいるうちにどんどん悪化してしまいこじれてしまうこともあります。行動治療の専門家に相談をし早めに治療を考えましょう。