2017年8月20日更新

フェロモンは、猫の大事なコミュニケーション手段

NEKOCLIP



ペットシッター、愛玩動物飼養管理士2級

博物館に20年勤務していた古生物学系元学芸員。猫は絶滅してしまった化石猫から イエネコ、ライオンに至るまで全部大好き。猫飼い歴ン十年の猫おばちゃんです。 飼育のお悩みから進化学に至るまで、幅広い情報と猫の素晴らしさをわかりやすく お伝えしようと思います。理学修士、ペットシッター資格、愛玩動物飼養管理士2級。 ペット用品販売会社での勤務経験もあります。

 

猫も犬には及ばないものの鋭い嗅覚をもっています。中でもフェロモンの臭いを嗅ぐために特化したヤコブソン器官という第二の嗅覚器官は犬よりも優れており、フェロモンの微妙な違いを読み取ることができるのだそうです。猫にとってフェロモンは、もしかしたら視覚などよりもたくさんの情報を教えてくれる大事なコミュニケーションツールなのかもしれません。猫にとってフェロモンとはどのようなものなのでしょう。

 

ヤコブソン器官とは

ヤコブソン器官は、両生類、ヘビ、トカゲ、そして哺乳類(霊長類、コウモリ、水生哺乳類以外)が持っている第二の鼻ともいわれる嗅覚器官です。鼻腔の下部にあり、哺乳類の場合、フェロモンの臭いを嗅ぐために発達した器官とされています。ふつう猫が臭いを嗅ぐときは、息をするのと同時に自然に流れてくる臭いの粒子をキャッチしますが、ヤコブソン器官にはわざわざ臭いの粒子を送り込まなければなりません。猫がフェロモンを取り入れるために口を半開きにする、いわゆるフレーメン反応は、ヤコブソン器官に続く管に臭いの粒子を流し込んでいると考えられています。

猫にとってフェロモンは大事なコミュニケーションツール

猫の嗅覚はヤコブソン器官に限って言えば、犬よりもかなり発達しています。臭いを受け取る受容体が犬の3倍もあるとされているのです。これはおそらく猫が縄張りを持つ動物で、夜行性で単独生活者という生態だからでしょう。闇に乗じて縄張りに侵入してくるライバルがオスなのかメスなのか、発情しているか、病気もちかなどを暗闇の中でもフェロモンから判断できるからと考えられます。この敏感なヤコブソン器官とさまざまなフェロモンを使って、猫たちは社会的な情報交換を行っているのです。
最近の研究で、もし猫がヤコブソン器官に障害を持つと、相手がどんな猫なのか情報が受け取れないため、他の猫に対して攻撃的になるという報告がなされました。それだけヤコブソン器官とフェロモンは猫社会にとって大事なものなのです。

 

猫の臭いとフェロモン

フェロモンにはいくつか種類があり、用途や感情によって異なるフェロモンが異なる臭腺(分泌腺)から分泌されます。

顔の周囲から分泌「安寧フェロモン」

猫の顔のまわり、おでこやあご、頬、そして尾のつけ根から分泌されるフェロモンは「フェイシャルフェロモン」と呼ばれ、またの名を「安寧フェロモン」ともいいます。その名の通り、フェイシャルフェロモンの臭いは猫を安心させる作用があります。猫がよく柱や家具の角に頭をこすりつたりしますが、これはマーキングとともに自分の縄張りを「くつろぎの空間」にしつらえているのです。外出から帰った飼い主さんにスリスリするのも、自分のフェロモンで外の臭いを上書きし、安心するためと考えられます。

肛門・足の裏から分泌「警戒フェロモン」

肛門と足の裏からもフェロモンが分泌されます。肛門腺からは排便時にウンチと一緒に、足裏からは爪とぎのときに分泌されたフェロモンでマーキングをしています。
また、人の冷や汗と同じように、警戒したり興奮したり(怖い感情での興奮だけでなく、甘えすぎて興奮する場合も)しても分泌されるため、「警戒フェロモン」ともいわれます。病院に行くときのキャリーバッグの中はきっとこのフェロモンで充満していることでしょう。その後もキャリーバッグを嫌がるときは、臭いが残っているからかもしれません。

尿にふくまれる「性フェロモン」

発情に関連して分泌されるフェロモンが性フェロモンです。尿に含まれていてスプレーによってつけられます。性の判別に使われるのはもちろん、メスの性フェロモンがオスの発情のきっかけとなります。また、発情した猫がどこにいるのをつきとめるのにも性フェロモンが役立っています。

まとめ

猫にとってフェロモンは、性行動を促したり、縄張りを守ったりするための「分泌液」というだけではなく、猫の個人情報がいっぱいつまった重要なコミュニケーションツールです。家の中で猫にフェロモンをこすりつけられたところが黒っぽく汚れたり、臭いもつくことがありますが、猫が安心してすごすためにも、特に顔スリスリの跡は掃除で落としすぎないようにしましょう。

 
 

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