2017年8月6日更新

尿が赤い!猫の血尿の原因や治療とは【獣医師が解説】

後藤大介



獣医師

 

猫には血尿を起こす病気が多く、人に比べて血尿が出やすい動物です。かなり派手に血尿が出ても自然に治ってしまうこともありますが、血尿を起こす病気の中には命に関わる病気もあり、そのまま様子を見ていると悪化して亡くなってしまうなんてこともあるんです。

今回の記事では、そんな怖い血尿の症状や治療法、お家でできる予防法などをご紹介します。血尿を発見できなかったり、気付いていても放置したりして取り返しのつかないことにならないよう、しっかり猫の血尿について知っておきましょう。

 

血尿の見つけ方

まず、猫が血尿かなと思った時にどのように確認したらいいのかを考えてみましょう。

トイレのチェックを忘れずに

血尿があるかどうかは通常トイレで確認できることが多いため、必ずトイレのチェックを行いましょう。白いペットシーツや白い砂の上に尿をしている場合は、その色の変化で比較的簡単にわかります。血尿や黄疸など、尿の色の変化がわかりやすいので、トイレの砂を使うなら白色の砂を使われることをおすすめします。

砂が黒っぽい場合は、トイレの見た目だけでは判断できません。その場合は

  • まだ砂が濡れていれば、ティッシュをつけて赤やピンクにならないか
  • においを嗅いで「鉄」のようなにおいがしないか
  • オキシドールをかけて泡立つか(オキシドールは血液に反応して泡立ちます)

などの方法で血尿の有無を判断することもできます。ただし、これらの確認方法で100%血尿を見つけることができないことは頭に入れておきましょう。

ペニスや陰部でも血尿チェック

また、猫のペニスや膣でも血尿のチェックができることがあります。ペニスや膣を濡れティッシュで拭くと、血尿があるときにはピンクや赤っぽく染まってくることがありますので、トイレで確認できない場合は一度試してみてください。

血尿と同時に出やすい症状も覚えておこう

血尿を発見するためには、血尿と同時に出やすい症状を知っておくことも大切です。以下のような症状がある場合は、血尿が出ている可能性があるので、トイレや陰部のチェックをしてみましょう。

  • 何度もトイレに行く「頻尿」がある
  • 排尿時間が長くなる(トイレにこもる時間が長くなる)
  • ペニスや陰部を気にして舐めている

血尿の原因は?


猫に血尿を起こす原因はいくつかあります。血尿と見た目が同じになる「血色素尿」についても併せて覚えておきましょう。

膀胱炎

猫の血尿の最も一般的な原因は膀胱炎です。膀胱炎には細菌性膀胱炎やストレス性膀胱炎などがありますが、いずれにしても膀胱の中で炎症が起こり、膀胱粘膜から出血することが多いです。膀胱炎があると常に残尿感を感じるため、トイレに頻繁に行き、少量の尿を何度もします。膀胱炎に好発年齢はないため、若い猫~高齢猫までどの年齢の猫にも膀胱炎は多く発生します。

膀胱結石

膀胱結石も、猫の血尿の代表的な原因の一つです。膀胱炎と膀胱結石の症状は非常に似ているため、症状から膀胱炎か膀胱結石かを区別することは不可能です。1歳未満でも膀胱結石ができることがあるため、若い猫でも注意が必要です。

膀胱腫瘍

猫では膀胱に腫瘍ができることも珍しくなく、その場合にも腫瘍から出血して血尿を起こすことがあります。高齢の猫で血尿が出た場合は膀胱腫瘍の可能性も考えておいた方がいいでしょう。

尿道閉塞

猫の血尿で一番怖いのが尿道閉塞です。メス猫ではかなり稀ですが、オス猫では比較的多くみられます。尿道閉塞の場合は全く尿が出ない完全閉塞になることもありますが、わずかに隙間があると、少量の血尿が漏れ出て来ることもあります。

尿道閉塞の症状は膀胱炎の症状に似ていますが、腹痛や元気の低下、嘔吐などが併発することが多いです。また、寝た状態で血尿が漏れてきたり、しきりにペニスを舐めている場合には尿道閉塞の可能性が高いため、すぐにでも動物病院で診てもらった方がいいでしょう。

血色素尿に要注意

血色素尿は厳密には血尿とは区別されますが、血色素尿でも尿が赤くなるため、見た目では血尿と区別することはできません。ただし、最初の尿はきれいなのに最後の尿が赤いという場合は血色素尿ではなく膀胱炎などによる血尿の可能性が非常に高くなります。血色素尿では、尿すべてが均等に赤くなります。

血色素尿の原因は、赤血球が壊される溶血です。血管の中で赤血球が溶血すると、その色素(血色素)が尿中に漏れ出し尿が赤くなります。血色素尿の場合は膀胱は正常であり残尿感がないため、頻尿や少量尿にはなりません。

血色素尿の原因である溶血を引き起こす病気は、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)や玉ねぎ中毒、ヘモプラズマ感染症など命に関わる病気であることが多いです。尿道閉塞以外の血尿に比べると、血色素尿は緊急性や重症度が高い病気であることが多いため、血色素尿が疑われる場合は早く病院で診てもらった方がいいでしょう。

 

動物病院に行くときの注意点


猫が血尿をしていた場合には動物病院へ連れて行く必要がありますが、いくつかの注意点があります。

血尿は様子を見ても大丈夫?

まず、通常の膀胱炎や膀胱結石、膀胱腫瘍の場合はそれほど緊急性はありません。血尿があっても元気や食欲があり、尿がしっかり出ているのであれば、少しだけ様子を見ても大丈夫であることが多いです。ただし、単なる膀胱炎だとしても、経過が長くなると治りが悪くなったり、腎臓へ細菌が移行して腎盂腎炎を起こすことがあるので、放置せず早めに動物病院で診てもらいましょう。

一方で、緊急性のある血尿もあり、その場合はすぐにでも動物病院を受診しないと危険です。以下のような症状は、緊急性が高い血尿であるサインですので、以下の点に注意して見ておいてください。

  • 血色素尿を疑う症状
  • 元気や食欲がない
  • 嘔吐や腹痛がある
  • 尿が出ているかどうかわからない

どのように尿を取る?

猫の尿を取って動物病院へ持っていくと診断の役に立ちますが、猫の採尿は難しいです。一番いいのはトイレをしているときに紙皿などを下に入れて尿を採取する方法ですが、この方法をしようとすると尿をしなくなってしまう猫もいるため注意が必要です。うまく取れない場合には以下のような方法を試してください。どうしても尿を取らないといけないというわけではないので、取れない場合はその旨を動物病院で伝えましょう。

ウロキャッチャーを試してみよう

猫の尿を簡単に取るためのアイテムの一つが「ウロキャッチャー」です。ウロキャッチャーは先にスポンジが付いた棒状の製品であり、動物病院で処方してもらえます。皿などに比べるとコンパクトで、一瞬差し込めば尿の採取ができます。うまく採尿ができない人はウロキャッチャーを処方してもらいましょう。

ペットシーツを裏返しに

ペットシーツに尿をする子の場合は、ペットシーツを裏返しにしておくことで採尿が可能です。ペットシーツの裏はビニールになっており吸水しないため、そこに溜まった尿を取ることができます。

砂に付いた尿やシーツにしみこんだ尿はNG

ペットシーツや砂に付いた尿では尿検査はできません。どんな見た目の尿かを見ることはできますが尿検査はできませんので、できる限り上のような方法で採尿するようにしましょう。

尿の保管は冷蔵庫で

検査は採尿してすぐに行うのが理想ですが、すぐに動物病院へ持っていけない場合は、冷蔵庫などで冷やしておいてください。常温で尿を置いておくと変性が進んでしまい、尿検査の意味が無くなってしまうので注意してください。半日~1日くらいであればそれほど変性しないで冷蔵保存できることが多いです。

動物病院で伝えてほしいこと

猫は自分の症状を話して伝えることはできませんので、飼い主さんが猫の様子をしっかり観察して、猫の代わりに動物病院で伝えることが大切です。特に注意しておいてほしい点は以下の通りです。

  • 頻尿はあるか(トイレの回数は増えているか)
  • 尿の一回量は減っていないか(尿で濡れている範囲はいつもと変わっていないか)
  • 元気食欲は変わりないか
  • 嘔吐はないか

また、以下のような情報があると診断や治療の役に立つので、わかる範囲で整理しておくといいでしょう。

  • 今まで尿検査はしたことがあるか(あれば検査結果も)
  • 最近ストレスになることはなかったか
  • 今食べているフードの名前
  • 飲み水は水道水・井戸水・ミネラルウォーターのどれか

血尿の原因を探すための検査

血尿で動物病院へ行った場合に行う検査は以下の通りです。

尿検査

尿検査では以下のようなことがわかります。

  • 血尿か血色素尿か
  • 細菌の有無
  • 結晶(尿結石の成分)の有無とその種類
  • 腫瘍細胞の有無

血液検査

血尿で血液検査を行うことは少ないですが、以下のような目的で血液検査をすることがあります。

  • 溶血(血色素尿の原因)の有無
  • 溶血があればその原因の精査
  • 腎機能を含めた一般状態の確認

超音波検査

血尿の原因を診断するために、超音波検査は尿検査と並んで有効な検査方法です。超音波検査では以下のようなことがわかります。

  • 膀胱炎の有無(膀胱壁の肥厚や不整)
  • 膀胱結石の有無
  • 膀胱腫瘍の有無(ポリープ状のものがあるかどうか)

血尿の治療

血尿の原因がわかったら血尿の治療を行います。治療方法は、検査によって診断した原因によって大きく異なります。

膀胱炎の治療

膀胱炎の治療は基本的に投薬により行います。膀胱炎を起こした原因(細菌・ストレスなど)によって使う薬の種類は違いますが、抗生剤や消炎剤、止血剤などがよく使われます。

膀胱結石の治療

尿路結石の治療には、内科的療法と外科的療法があります。

内科的療法

内科的療法はフードによる結石の溶解です。尿検査でフードで解かすことのできる「ストラバイト結石」が疑われる場合は、食餌による溶解を試みることがあります。ただし、結石がかなり大きい場合や、フードで小さくならない場合には手術が必要になります。

外科療法

内科療法ができない以下のような場合には、外科療法である膀胱結石摘出術を行います。

  • シュウ酸カルシウム結石が疑われる
  • 結石の大きさが非常に大きく、溶解させるのが難しい(かなり長い時間がかかる)
  • 結石による痛みが強い
  • 内科療法への反応が乏しい

膀胱結石摘出術では、全身麻酔によって開腹し、膀胱も切開し結石を直接取り出します。内科療法に比べて確実に結石を取り出すことができますが、全身麻酔のリスクや結石再発のリスクなどがあります。術後は、その結石を鑑定に出して結石の種類を確定し、結石再発予防のために療法食を食べていくことになります。

膀胱腫瘍の治療

膀胱腫瘍の治療法にも内科療法と外科療法があります。その他に放射線治療が選択されるケースもあります。

内科療法

膀胱腫瘍の内科療法は、薬による治療であり、抗がん剤や膀胱腫瘍に対して抑制効果を持つ消炎剤を使います。膀胱腫瘍を内科療法で完治させることはできませんが、腫瘍の縮小やある程度の寿命の延長効果などは期待できます。膀胱腫瘍では手術不適応で内科療法が選択されることも多いです。

外科療法

手術で膀胱腫瘍を取り出す方法です。膀胱腫瘍の完治の可能性のある治療方法ですが、膀胱腫瘍のできる部位や大きさによっては手術が難しいことも多く、手術適応になるケースは限られています。

尿道閉塞の治療

血尿の原因が尿道閉塞である場合、カテーテルをペニスから通し、閉塞している結石などを膀胱へ押し戻して閉塞を解除する必要があります。閉塞の解除には痛みを伴うこともあるため、鎮静や麻酔が必要になることもあります。閉塞を解除してもすぐに再閉塞してしまうこともあるため、しばらくカテーテルをつけたままにしておくことも少なくなりません。腎臓の数値が上がっている場合や再閉塞を起こす場合には、数日の入院が必要になります。

家でできる予防法と早期発見方法

猫の血尿の予防や早期発見のために飼い主さんができることは以下の通りです。

トイレを清潔に

トイレを清潔に保つことは、血尿の早期発見だけでなく予防にもつながります。

  • 血尿の早期発見

トイレを毎日きれいにしていれば、掃除の際に猫の排尿の異常に気付くことができます。色の異常だけでなく、一回量の変化(尿の塊の大きさの変化)やにおいの変化など、血尿につながる異常を見つけられることが多いです。

  • 細菌性膀胱炎の予防

細菌性膀胱炎の原因となる細菌は、外陰部から上行性に膀胱へ感染することが多いため、トイレを清潔に保つことで細菌性膀胱炎の予防につながります。特にメス猫や高齢で免疫力が低下した猫では、陰部から入った菌による細菌性膀胱炎が多いという報告があるため、トイレを清潔に保つよう心がけましょう。

また、猫はトイレが不潔だと、排尿や排便を我慢することがあります。排尿を我慢して膀胱に尿が溜まった状態が長く続くと細菌性膀胱炎などが起こりやすくなります。トイレを清潔に保って猫が快適に使えるようにしておくことも、膀胱炎予防には大切なんですよ。

ストレスを減らす


猫の膀胱炎は原因不明で起こるものが少なくなく、その多くにストレスが関与していると言われています。そのため、膀胱炎の予防のためには、猫のストレスを減らしてあげることも大切です。特に多頭飼いの場合にはストレスが溜まりやすいので、キャットタワーなどを設置してストレスが溜まりにくい生活環境を作ってあげましょう。

普段から様子をしっかり観察

普段から猫の様子をしっかり観察することで、血尿の早期発見につながります。尿の量だけでなく、トイレの姿勢や長さ、食欲や元気などを見ておくことが危険な血尿の発見につながるポイントです。

水がいつでも飲めるような環境づくり

飲水量が減ると、尿量が減って膀胱炎や尿路結石のリスクが大きくなります。常に新鮮な水を用意しておくことはもちろんのこと、水飲み場を増やしてあげると飲水量が増えるというデータがあります。いくつか水飲み場を作っていつでも水を飲めるようにしておいてあげましょう。

まとめ


猫には泌尿器系の病気が多く、血尿もその一つです。基本的に膀胱炎による血尿はそれほど危険なものではなく、例え血尿が出てしまっても焦ったり必要以上に心配することはありません。ただし、膀胱炎以外にも血尿を起こす原因はあり、時に血尿は危険な病気のサインとして出て来ることもあります。

危険な病気を見逃すことのないよう、お家でしっかり猫やトイレの様子を観察し、血尿がある場合は早めに動物病院へ連れて行ってくださいね。