2017年8月1日更新

【獣医師が解説】犬がチョコレートを食べてしまったら…?中毒の症状と行うべき対処方法は?

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私たち人間にとっては美味しい食べ物でも、犬が摂取すると中毒を起こしてしまう物質がいくつかあります。チョコレートもその一つに挙げられます。室内で飼われる小型犬の割合が増加し、動物病院にもチョコレートを食べてしまう犬がよく来院します。チョコレート中毒は通年を通して発生しますが、クリスマスやバレンタインなどのイベントがある冬場が多いのも特徴です。

犬を飼っている方の意識も高まり、チョコレートで中毒症状を起こすことをご存知の方も多いと思います。今回は、犬のチョコレート中毒について、その症状から対処法、また食べてしまわないための対策などをお話ししていきたいと思います。

 

犬がチョコレートを食べてしまった時の対処法

応急処置

チョコレートを食べてしまった場合、自宅で行える応急処置は残念ながらほとんどありません。チョコレートを食べた場合には、速やかに動物病院に連れて行ってください。

病院での治療

病院での治療の目標は、起こっている症状に対する治療を行うこと、そして、これ以上中毒物質を体に吸収させないこと、最後に、中毒物質を排泄させるよう促すこと、の三段階に分けられます。

起こっている症状に対しての治療

発作が起きている場合には、鎮静剤、場合に応じて麻酔薬の投与が行われます。不整脈が起きている場合には、点滴を行い、心電図モニターをしながら、薬剤の投与を行います。

中毒物質を体に吸収させないため、中毒物質を排泄させるための治療

生死に関わる量を食べたとの申告があった場合には、摂取後、8〜12時間以内であれば催吐処置が有効とされています。意識がはっきりしている場合には催吐処置を行います。活性炭を投与し、中毒物質の吸着も行います。点滴を行い、尿からの排泄も促します。

チョコレートは砂糖、脂肪分が多い食べ物です。摂取により、中毒だけでなく、急性膵炎の原因にもなり得ます。急性膵炎が疑われる場合には、血液検査をし、点滴と抗生物質投与など、膵炎の治療も並行します。

獣医師に確認すること

発作を起こす、不整脈が出るなどの重篤な症状が出た場合、予後が良くない場合があります。後遺症について確認しておくとよいでしょう。また、急性膵炎を発症した場合には、フードによる管理が必要になりますので、フードについても確認しておきましょう。

犬とチョコレート

なぜ犬にチョコレートは危険なのか?

チョコレートの原材料、カカオには、テオブロミン、カフェイン、といった化学物質が含まれています。これらは、過剰摂取すると主に、神経、心臓に過剰な作用をし、中毒症状を起こします。また、チョコレートには砂糖や脂肪が多量に含まれ、急性膵炎を発症すると可能性もあります。

危険な量はどれくらい?

チョコレート中毒というものの、正しくはチョコレートに含まれるカカオの成分が原因になります。従って、チョコレートだけでなく、ココアパウダーなど、カカオを含む食べ物を摂取した場合、中毒になり得ます。

特にココアパウダー場合、カカオの純度が高いので注意が必要です。カカオは、もちろん人でも過剰摂取は危険です。どんな薬物、化学物質でも体重あたりの摂取量で作用が決まります。人と比べて明らかに体重の少ない犬の場合、少量摂取でも症状が出やすいのです。
では、実際にどのくらい摂取したら危険なのかについて解説します。

テオブロミンとカフェインの合計摂取量

1kgあたり、20〜40mg で軽度から中程度の症状
1kgあたり、40〜50mg で心臓不整脈(致死性の場合もあります)
1kgあたり、60mg以上 で発作

製品ごとのテオブロミン、カフェイン含有量

1gあたりに含まれるテオブロミン、カフェインの含有量が多い順に
・ココアパウダー
・チョコレート焼き菓子
・セミスイートチョコレート
・スイートダークチョコレート
・ミルクチョコレート
・ホワイトチョコレート
と言われています。(クリニカルベテリナリーアドバイザーより)

体重あたりで考えますので、同じ量を食べても小型犬であればあるほど危険だと言えます。

また、同じチョコレートでも、カカオ含有量が多いチョコレートの方が危険だと言えます。少し分かりにくいので、具体的に計算してみましょう。

1枚 50gのミルクチョコレートの板チョコを体重それぞれ3kg、5kg、10kg、の犬が食べた場合です。

ミルクチョコレート1gあたりテオブロミン、カフェインの合計含有量は1gあたり2.1mgです。従って、50gの板チョコ1枚では、50g×2.1mg=105mg 含まれることになります。1危険があたりにかんさんすると、

3kgの犬では、105mg÷3kg=35mg
5kgの犬では、105mg÷5kg=21mg
10kgの犬では、105mg÷10kg=10.5mg

となります。同じ量のチョコレートを食べてしまっても、体重によって摂取量が違うのが分かります。

3kgの犬では、軽度〜中程度の症状が出ます。感受性の高い個体では不整脈を起こすかもしれません。体重5kgの犬でも軽度の症状が出ます。

しかし、10kgですと、板チョコ一枚では症状が出ません。体重3kgの犬でも、半分では症状発生出ない可能性が高いです。

つまり、ミルクチョコレートであれば、かなりの量を食べないと中毒症状は出ないことが分かります。とは言っても、少しでもチョコレートを食べさせるのはやめてください。

 

犬がチョコレートを食べたがるのはなぜ?

犬は、群れで狩りをしながら生活をしていた狼が祖先です。獲物が捕れない期間が長く続くこともありますので、ご飯は食べられるだけ食べる、という本能があります。

つまり、食に対して貪欲なのは本能です。そのような特性に加え、私たちと生活するようになり、人の食べ物にも興味を示すようになり、人の食べ物を同じように食べたいという欲求が出てきました。

好き嫌いはあるかもしれませんが、チョコレートは美味しいものです。それは犬にとっても同じです。一度チョコレートを摂取した犬は味を覚え、チョコレートを探して食べるようになることもあります。

食べ合わせでもっと危険になるかもしれないもの

ナッツ入りチョコレート

ナッツの中にも中毒の原因になるものがあります。その代表的なものにマカダミアナッツがあります。また、ナッツは高脂肪で消化も良くありません。消化不良の原因になり得ます。

ドライフルーツ入りチョコレート

ドライフルーツの中にも中毒の原因になるものがあります。犬がレーズンを摂取すると急性腎不全を起こす危険があります。

お酒入りのチョコレート

チョコレートと洋酒は合いますので、洋酒入りのチョコレートもよく見かけます。洋酒はアルコール度数が高いものが多く、急性アルコール中毒を起こす危険があります。

チョコレートの包装紙

個包装のチョコレートでは、包装紙ごと犬が食べてしまう危険があります。どのような素材であっても食べ物ではありません。体格の小さな犬ほど消化管も細く、大量摂取による腸閉塞の危険が伴います。

チョコレートを食べた時の症状

チョコレートを摂取して症状出現までは幅がありますが、おおよそ6時間〜12時間ですので、摂取した時間が分かると症状発現の推察ができます。しかし、チョコレート中毒での典型的な症状があるわけではありませんので、あくまで、包装紙が落ちていた、チョコレートの入った容器が荒らされていた、など疑わしい状況と合わせて特定することが必要です。

では、実際、どのような症状が出るのか挙げます。

落ち着きがなくなる

初期の神経への作用です。

興奮・震え・硬直・運動失調・発作

重篤な神経への作用です

頻脈・頻呼吸

脈や呼吸が早くなります

高熱、心臓不整脈

聴診や心電図で確認が必要ですが、失神したり、突然死の可能性もあります。

症状があった場合の対処は?

どのようなタイプの食べ物、例えばミルクチョコレート、ココアクッキーなど、「何を」、「いつ」、「どのくらいの量」、食べたのかを把握し、速やかに動物病院へ行く必要があります。

犬がチョコレートを食べないために

犬は基本的に、食に対して貪欲です。食べたいという欲求があると、私たちが考えられないような力を発揮し、食べ物を手に入れます。

従って、絶対に食べさせてはならない危険なものは、犬に届くようなところに保管しないようにするというよりは、犬の目につかないところに隠すよう徹底すべきです。

ゴミ箱も蓋つきのものにするなど、対策を講じる必要があります。犬の誤食の責任は私たち人間にあるということを頭に入れておいて下さい。

散歩中の注意

家の中だけでなく、散歩中にも落とし穴は潜んでいます。散歩コースに公園などを含めていませんか?人が多く集まる場所、ゴミ集積所などは食べ物が落ちている可能性があり、拾い食いをする危険があります。

チョコレートに限らず、食べたら危険なものが落ちている可能性もありますので、注意が必要です。

散歩中はこちらが気づかないうちにいつの間にか拾い食いをしていることがありますので、拾い食いによる事故を最小限にするためにも、散歩コースの選択は大切です。

まとめ

チョコレート中毒について、いかがでしたか。チョコレートだけでなく、私たちの食べ物の中には犬にとっては有害なものがたくさんあります。そして、体が小さいため、少しの摂取量でも命に関わる可能性もあります。自分たちの常識を当てはめるのではなく、犬の中毒について正しい知識を身につけ、ご家族全員で話し合い、対策をして下さい。家族同然の小さな命は、私たち、人間が守ってあげる必要があるのです。