2017年8月3日更新

【獣医師が解説】犬も風邪をひく?犬の風邪と勘違いしてしまう症状や病気

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風邪とは正確には特定の疾患を示すような医学用語ではなく、寒さなどで抵抗力が落ちた際に起こる、急性の上部呼吸器系の疾患を総称する便宜的な言葉です。

私たちが風邪をひくと、喉が痛い、咳や鼻水が出る、頭痛や発熱などの症状が現れますが、犬の場合はどうでしょうか。今回は、犬と風邪について、人との比較もしながら、お話したいと思います。

 

犬の風邪?

犬は風邪をひくの?

犬は風邪をひくのでしょうか?

犬でも私たちの風邪に似た症状を示すことがあります。しかし、人間と違い、犬には喉や頭が痛いなど、言葉に出して訴えることができません。

もし、体調が悪ければ、元気がなく動かない、食欲が低下する、などの何らかのサインを出してくれることもありますが、痛みがある部位を正確に確定することは困難ですし、そのため、原因までは分からないことも多いものです。

また、犬の場合、私たちが考えるような一般的な風邪の症状、咳や鼻水などは他に原因があることが分かっており、その割合も多いのです。

風邪だと思っていたのに、実は怖い病気の兆候だった、ということもあり得ます。

まずは、風邪だと勘違いしてしまう症状、そして風邪だと思われがちな病気について紹介します。

風邪と思ってしまう症状

動物病院に来られる患者さんが、風邪を疑っておられる時の代表的な症状です。

くしゃみ・鼻水

急にくしゃみをするようになった、鼻水が出ている。特に黄緑色の粘稠性の高い鼻水が出ている時

連続して咳き込む、激しく咳き込み、えづいてしまったり、戻してしまう時

震え

体が震えている、震えて元気がない時

 

風邪と思われてしまう病気

くしゃみ、鼻水といった症状が出る主な病気

歯周病

犬は、自分で歯を磨きません。また、唾液がアルカリ性で、虫歯は防ぎますが、歯石が付着しやすい性状をしています。

そのため、歯周病が進行し、歯が生えている骨にまで歯周病菌の感染が進みます。

上顎の場合、歯の奥は鼻腔に隣接しますので、鼻の奥に歯周病由来の炎症が起き、くしゃみや鼻水、時には鼻出血というような症状が出ます。

この場合、根本的に解決するには、こまめに歯を磨く、悪い歯は抜歯・歯の治療を行わなければなりません。

犬の歯周病の原因、歯垢や歯石の対処法【獣医師が解説】

鼻炎

犬でも鼻炎はあります。私たちと同様に時として、花粉などが原因のアレルギー性の場合もあります。

【獣医師監修】犬の鼻炎。原因・症状から治療法まで

腫瘍

鼻腔内腫瘍は、歯周病に続き、くしゃみ、鼻水、鼻出血の原因として多いものです。

片側だけに異常がみられることもありますし、両側のこともあります。進行すると顔面が腫れ、変形してしまうこともあります。

高齢犬には腫瘍性疾患が増えますので、鼻に症状がでた場合には腫瘍の可能性もあるということを頭の片隅に置いておいてください。

咳が出る主な病気

気管気管支炎(ケンネルコフ)

特に子犬でみられることが多いです。人間の風邪症状に1番近い病気です。ウイルスが原因となっており、そこに細菌の二次感染が起きます。

通常であれば、咳以外の症状は示さず、元気も食欲も落ちません。咳のコントロールを行い、10日前後で良くなることがほとんどです。しかし、抵抗力の弱い子犬、ワクチンが未接種の子犬の場合はこじれてしまい、肺炎に進行することもあります。

【獣医師監修】子犬は特に要注意!ケンネルコフの症状・原因・治療法について

心臓病

弁膜症は高齢犬でよくみられる疾患です。進行すると心臓の肥大により咳がみられるようになります。梅雨時期や季節の変わり目には咳がひどくなる傾向にあります。

震えの症状が出る主な病気

背部痛

犬では体のどこかに痛みがある場合、震えることがよくあります。特に、背中、腰などの痛みの場合には背中を丸めて震えるという症状がみられることがあります。

それと同時に元気や食欲も落ちてしまうことがあり、風邪と勘違いされがちです。

ミニチュア・ダックスフンドやウェルシュ・コーギーなど足の短い犬種では、その体型から、背部を痛めやすい傾向にあり、椎間板ヘルニアの好発犬種でもあります。

また、どんな犬種でも高いところに上る、人間に飛びつく、など、後脚だけで立ち背中を反らせるような姿勢は腰を痛めやすいものです。愛犬が日頃からそのような姿勢を取る癖がある場合には注意をしてください。

犬の熱と体温の計り方

犬の平均体温は、だいたい38.5度前後です。子犬では少し高めです。

犬の体温を正確に計るためには、肛門に体温計を差し入れ、直腸で計ります。犬種により深さを変える必要がありますが、肛門に体温計を2cm〜4cmほど差し込み計測します。

体温計を挿入する際には尻尾を上げると分かりやすいですが、犬は尻尾を握り続けられることを嫌いますので、体温計を固定したら尻尾は下げてあげてください。

自宅で計測する場合、直腸温で計ることは困難であることも多いので、人と同じように脇の下でもよいです。しかし、この場合、正確な体温は計れませんので、日頃から検温していただき、健常時の脇の下での体温を知っておくことが大切です。

健常時の体温よりも1度以上高い場合には発熱の可能性があります。体温は日内変動もしますし、興奮したり運動後には上がるので、1回の検温でいつもより熱が高くても、元気があり、熱以外の症状がなければ様子をみていただいてもよいでしょう。

元気がなかったり、熱以外の症状がある場合、時間を置いて何度計っても高い場合には病気かもしれません。また、犬は体温調節が上手ではありませんので、熱中症にもかかりやすいです。40度以上の高熱がみられる場合には、すぐに動物病院にお連れください。

【関連記事】

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風邪と思わず対応を!

応急処置

まずは安静を心がけます。また、室温を適度な温度に保ち、エアコンや扇風機の風が直接当たらないように気をつけてあげましょう。熱が高い場合には、脇の下、足の付け根など、太い血管が走行している部位を保冷剤などで冷やしてあげましょう。

なお、ぐったりしている、呼吸状態が悪い、など、緊急性の高い状態の場合には、開いている動物病院を探して速やかに診察を受けましょう。

絶対やってはいけないこと

自己判断での投薬はやめましょう。また、どのような症状であれ、犬が普段とは違う様子をみせているのであれば、毎日ルーチンで行っていても、体に負担のかかること、例えば散歩、激しい運動などはやめておきましょう。

シャンプーやトリミングの予定があっても中止してください。

背部痛が疑われる時には、背中を反らさないよう、抱っこする時にも注意が必要です。脇を持つのではなく、お腹に手を入れ、背中を丸め、抱えるように抱っこしてあげてください。

犬を安静にする方法

犬を安静にさせるには、ケージやサークルの中に入れ、行動範囲を制限することが大切です。ケージに入れて間もなくは落ち着きなく、鳴いたりすることもあるでしょう。

しかし、こちらが優しく声をかける、または、あまり構わないようにすることで、しばらくすると諦め、大人しくなります。おもちゃを投げ入れたり、遊びに誘ったりすることはやめましょう。

動物病院での診察

動物病院で伝えて欲しいこと

症状について、具体的に
・︎いつから症状があるか
・何か思い当たるきっかけはあるか
・どんな時に症状が出るか
・ひどくなっているか
・元気や食欲はどうか

などが分かると担当した獣医師も診察が進めやすいです。また、嘔吐や下痢がみられる場合には、実際の嘔吐や下痢の回数などもわかるとよいですね。

嘔吐がある時には、食後どのくらいの時間が経ってから、どんなものを嘔吐したのかを便の異常がある時には、検便を行うこともありますので、なるべく新鮮な便を乾かないようにして持参してください。

獣医師に確認しておくべきこと

日常生活で気をつけること、例えば、食事の与え方やシャンプーの可否、生活環境の改善などを確認するとよいでしょう。

獣医師の料金

動物病院に受診すると、まずは、体重測定や検温、一般的な身体検査を行います。視診、聴診、触診を行い、場合によっては血液検査やレントゲンなど必要な検査を追加して行います。

確定診断がつく場合には疾患に合った治療を行います。確定診断がつかない場合にも、症状に応じて対症療法を行います。治療は、具体的には、注射による薬剤の投与、点滴、ネブライザー(吸入)、内服薬の投薬、などです。

病院により多少の差はありますが、診察料に加え、検査や治療にはそれぞれに金額が発生します。

まとめ

私たちの風邪も、症状が多岐に渡り、医学的な診断名ではないため、犬にその概念を当てはめることが難しいことがお分かりいただけましたか。

犬は私たちのように言葉で症状を伝えることはできません。一見、風邪のような症状も、少し怖い病気の症状の可能性もあります。

風邪と決めつけず、まずは動物病院に行きましょう。何もなければそれで安心ですし、何かあっても早期の対処が可能です。

 
 

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