2017年8月4日更新

【獣医師が解説】猫の皮膚病。病気の原因や症状、対策

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猫の皮膚病も、ノミやダニなどの外部寄生虫が原因となるもの、猫に特に多くみられるもの、など、多岐に渡ります。皮膚病の中には私たち人にも感染してしまうものもあります。

同じ室内で生活し、抱っこをしたり、一緒の布団で寝たり、と密着して生活しているという方もおられるでしょう。

もし、愛猫が皮膚病にかかっていたら、知らず知らずのうちに家族中に拡がってしまう、なんて恐ろしいことにもなりかねません。猫が病原体を保有している場合には、人の病変を治療しても根本解決にならないこともあります。

たかが猫の皮膚病、などと軽く見るととんでもない目に遭うかもしれません。今回は、人にもうつる猫の皮膚感染症を中心とした猫の皮膚病をいくつかご紹介します。猫から感染する可能性のある人獣共通感染症についての知識を身につけ、愛猫が感染しても慌てないようにしてください。

 

猫の皮膚病

猫の皮膚病の症状

痒み

初期は痒みのない場合でも、時間の経過につれ、痒みが出ることが多いです。

脚で掻くこともありますが、届かない部分は舐めてしまいます。皮膚病の種類によっては強い痒みの出るものもあるので、引っ掻いて皮膚を傷つけてしまっていることもあります。

皮膚を傷つけてしまうと、皮膚本来のバリア機能が損なわれ、二次的に細菌の感染を招いてしまいます。このため、元々の病変が分かりづらく、病気の確定診断が得られるのに時間がかかってしまうこともあります。

発疹

猫は被毛があるため確認しづらいですが、初期症状として発疹がみられることがあり、発疹は痒みの部位に一致していることが多いです。発疹は、ダニや真菌の感染の初期症状のほか、アレルギーでもみられる兆候です。

脱毛・切れ毛

炎症が毛根にまで及ぶと脱毛します。また、皮膚糸状菌に感染すると被毛が弱くなってしまうので、毛づくろい時に当たる舌の力で被毛が短く切れてしまうことがあります。

脱毛していると、その部分の皮膚の状態が分かりやすくなります。皮膚の状態により、炎症性脱毛か、非炎症性脱毛かに分けます。炎症性脱毛では、発赤、発疹などの炎症兆候がみられ、感染を伴えばフケが出ることがあります。

どんな場所に出やすいのか?

罹患している皮膚病によっては好発部位があります。例えば、猫カイセンであれば、頭部、顔面、また、ノミアレルギー性皮膚炎では腰背部が好発部位になります。食物アレルギーは顔面に出やすく、好酸球性皮膚炎は、口唇部、顔面、内股などを中心に症状が出ます。
猫は被毛があるため皮膚病の発見も遅れがちです。日ごろから遊びながらでも、皮膚のチェックができるとよいですね。

 

猫がこんなことをしていたら要注意

猫は普段から全身の毛づくろいを念入りにします。毛づくろいをしていても、体の特定の場所だけを時間をかけて舐めている場合には、痒みなど、何か皮膚病の症状が出ている可能性もあります。そのような様子が見られたら、皮膚の状態をチェックしてあげてください。

皮膚病の種類と治療方法

カビや菌が原因の場合

皮膚糸状菌症

症状

皮膚のバリア機能に問題のある若齢猫や長毛種猫に好発する傾向にあります。病変は鱗屑を伴う脱毛班として確認されます。通常は痒みを伴わないですが、二次感染を起こすと痒みを伴います。

長毛種では、毛包(毛穴)に感染することがあり、その場合には発疹が出ます。

感染経路

皮膚糸状菌に感染した猫に触れることで感染します。皮膚糸状菌症は人獣共通感染症ですので、猫同士だけてなく、猫から人へ、また逆に、人から猫への感染もあり得ます。

治療

病変が体の一部分であれば、外用薬を使用する場合もあります。

しかし、内服薬を用いた全身的な治療が推奨されています。皮膚糸状菌は健康な皮膚を好み、胞子とよばれるカビの卵のようなものを飛ばしますので、体全体が汚染されている可能性があるからです。可能であればシャンプーも併用します。

また、重症な場合や長毛種では、全身の被毛をカットする必要がある場合もあります。治療は1ヶ月以上かけて行い、培養検査が陰性になるまで続けます。

ノミ・ダニが原因の場合

猫カイセン(ショウヒゼンダニ・小穿孔疥癬)

症状

目に見えない小さなダニが原因で頭部と耳介に強い痒みが出ます。この痒みは、ダニに対するアレルギーであると考えられています。初期症状では耳介の辺縁に発赤や湿疹が出現しますが、すぐに灰色がかったカサブタが作られ、痒みによる自傷行為で感染が広がります。

感染経路

感染している猫に接触して感染します。猫同士だけでなく、人にもうつる可能性があります。しかし、人の皮膚では長く生存できないため、重症化することはまずありません。感染した場合には、発疹がみられます。

治療

注射、もしくは内服薬で駆虫薬の投与を行います。状態にもよりますが、治療を開始すればすぐに快方へ向かい、2週間〜4週間程度で改善します。

ノミ寄生

症状

体を痒がります。痒がっている猫の様子をみて、皮膚の状態を確かめると、毛の根元にノミの姿や黒っぽいノミのフンが見つかります。また、ノミは条虫の寄生を媒介します。毛づくろいして、ノミを体内に取り込むことで、猫の体内に条虫が寄生してしまいます。

感染経路

ノミが感染している猫と接触することで感染します。また、環境中に存在する虫卵などからも感染します。

治療

ノミの駆虫薬を使用します。滴下タイプの外用薬を使用することが多いですが、内服薬での駆虫も可能です。駆虫薬の投与後は速やかに効果を示します。駆虫薬は卵やサナギには効果を示さないため、継続的な使用が予防にもつながります。

アレルギーが原因の場合

ノミアレルギー性皮膚炎

症状

主に、腰背部中心に発疹が出て痒がります。痒みが強いため、異常に毛づくろいをし、脱毛します。毛づくろい中に飲み込んだ毛玉を吐き戻すこともあります。

原因

ノミの寄生が原因です。ノミが1匹でも存在していれば症状が出ます。ノミ寄生数が多い、少ないは関係ありません。少数寄生でも症状が出ますので、ノミそのものが見つからない場合もあります。

治療

治療はノミの駆除です。皮膚病変の状態に応じて、抗生物質やステロイドの投与を同時に行います。ノミ駆除剤の持続的な投薬はこの病気の予防にもつながります。また、掃除を行届かせ、環境中のノミのコントロールも必要です。

食物アレルギー

症状

猫の食物アレルギーは主に頭部、顔面に強く出ますが、全身に広がることもあります。発赤、痒み、発疹、痒みに伴う自傷による掻き傷が特徴です。

原因

猫では、一般的には牛肉、乳製品、魚類などが挙げられますが、どのようなタンパク源でもアレルギーを起こす可能性があります。

治療

アレルギーの治療目標は、痒みを抑えることです。二次感染があれば、適切な治療をし、原因となる食物を与えることは避けます。

長期的な管理はフードを中心に行います。できるだけ投薬せずにコントロールすることを目標にしますが、症状が強い場合には、ステロイドや免疫抑制剤を用いることがあります。

フードは、特定のタンパク質、および炭水化物を用いたもの、あるいは、原材料を加水分解したものを選びます。食物アレルギーの場合には、基本的に生涯にわたってフードでのコントロールが必要になります。

好酸球性皮膚炎

猫に多い皮膚病です。症状により、病型が3タイプに分かれます。いずれも、好酸球と呼ばれるアレルギーに関与する好酸球という細胞が炎症の中心になっています。

症状

病変の出現とともに痛みや痒みといった症状が出ます。初期の段階では、発疹には気付かないことが多いです。病期の進行とともに、内腿、腹部、腰部の皮膚に痒みの強い湿潤性の病変となります。

また、口唇部に潰瘍を作るタイプもあります。この潰瘍は通常痛みがありません。発赤や脱毛を伴う湿疹や線状の病変がみられるタイプもあります。

蚊の虫刺されによる過敏症では、鼻、耳介、耳の前面などに湿潤性の病変やかさぶたができます。

原因

原因ははっきりとは分かっていません。しかし、ノミや蚊などの節足動物、食べ物、環境中のアレルギー物質に対するアレルギー反応ではないかと考えられています。そのほかの病因として、ウイルスや細菌の感染、外傷、免疫反応なども示唆されています。

治療

原因を除去し、基礎疾患があればその治療を行います。痒みが強ければ症状に応じて補助治療を行います。

具体的に、原因の除去にはノミの駆除、低アレルギー食への変更などを行います。

痛みや痒みに対しては、ステロイド剤や抗ヒスタミン剤を投与しますが、反応が薄い場合などでは免疫抑制剤を使うこともあります。

痛みや痒みを伴わない若齢猫では、無治療でも良好な経過をたどると言われています。

腫瘍

扁平上皮癌

症状

紫外線の影響を受けやすい白い猫では鼻、耳介、眼周囲に扁平上皮癌の発生率が多いと言われています。

鼻では、かさぶたや潰瘍、腫瘤、などの症状が出ます。耳介や外耳道では、腫瘤、耳の分泌物、痒み、痛みの他、旋回運動、斜頸、顔面神経麻痺など神経症状が出ます。

治療

転移率が低いので、原発部位を外科的に確実に切除することで完治が見込めます。しかし、発症部位によっては、広範囲に切除できないこともあり、その場合には放射線治療や化学療法を行います。

肥満細胞腫

症状

アレルギーに関与する肥満細胞が増殖して形成した腫瘍を肥満細胞腫といいます。

皮膚型と内臓型に分けられます。皮膚型では病変は頭部にできることが多く、5㎜ほどの円形の腫瘤が多発する傾向にあります。

皮膚型でも、肥満細胞が壊れると、肥満細胞の持つヒスタミンやヘパリンなどの化学物質により、胃潰瘍などの全身的な症状を示すことがあります。

治療

治療目標は、発生部位の腫瘍を制御し、再発や転移を防ぐことです。

皮膚型の肥満細胞腫では、自然に消退することはほとんどないので、手術が治療の第一選択になります。

完全切除が困難である場合には、放射線治療や化学療法も併用されます。

予後

通常は良好です。しかし、リンパ節への転移、または、内臓型に進展してしまう場合があります。

皮膚型リンパ腫

症状

猫の皮膚型のリンパ腫は、とても稀な疾患です。

病変は一般的には斑状の病変です。結節や発赤のこともあります。進行に伴い、潰瘍化し、痛みや感染を伴います。

治療

抗がん剤を使った化学療法を行います。病変が孤立性の場合には、手術や放射線治療によく反応します。

皮膚病を予防する

猫の多頭飼育の注意

多頭飼育をされる場合、新しく迎える猫が皮膚病に限らず、何らかの感染症に罹患していないことが分かってから、先住猫と接触させましょう。

直接の接触がなくても、私たちが運んでしまう場合もあります。新しい子と触れ合った後は手を洗い、先住猫と接触するようにしましょう。

人が持ち込まないための注意

猫の皮膚病の多くは感染症です。ダニ、ノミは罹患している猫から直接、または間接的に接触することで感染します。

従って、私たち人間が感染源を運ばないように気をつけなければなりません。野良猫はノミ、ダニだけに限らず、いろいろな感染症を持っていることが多いのが事実です。

接触を持った場合、野良猫の多い場所を通った場合には、ご自宅の愛猫に触る前によく手を洗いましょう。

また、環境中の卵やサナギからも感染することがありますので、靴や丈の長いズボンなどははたくなどしてから帰宅するとよいでしょう。

猫カフェにいる猫は基本的には健康な子ですが、経営者によっては管理が行き届いてない場合もありますし、思わぬ病気が潜んでいることもあり得ます。猫カフェに行かれた場合も、同様に気をつけてください。

アレルギーの予防

ノミ寄生は高率に猫にアレルギーを起こします。室内飼育であってもどんな経路で感染するかわかりません。ノミの予防をするようにしてください。

猫の皮膚病、正しい処置は?

「様子を見る」?

原因にもよりますが、自然治癒を期待できる皮膚病は少ないので、異常を感じた時点で早く動物病院へ行くことをお勧めします。

異常に気づいた段階では、もう、症状が進行している場合が多いものです。愛猫のストレスを考え、早期発見と早期治療を心がけてください。

「人用の薬を使う」?

猫を治療する場合には、動物薬だけではなく人体薬も使用します。しかし、どのような疾患であるのかを獣医師に診断してもらう前に自己判断でお薬を使用することはやめましょう。

特に人の薬を使用する場合には、投薬量が異なりますし、間違った判断で投薬することで、悪化する可能性もあります。

「シャンプーする」?

猫が嫌がらなければシャンプーはしていただいても構いません。

猫は被毛が柔らかく、毛玉ができやすいです。特に長毛種の猫の場合には、シャンプー前に毛玉の有無を確認し、毛玉がある場合には、取り除いてからシャンプーをしてあげてください。

毛玉は、大きなものであったり、皮膚に密着してできている場合もあります。また、毛玉を外すことは猫も嫌がることが多いものです。そのような時には皮膚を切ってしまうなど、怪我をさせてしまうこともあり得ますので、自宅で無理に取ろうとせず、専門家に任せましょう。

「服を着せる」?

洋服を着せると、長毛種では毛玉ができやすくなります。また、蒸れやすいので、皮膚病の種類によっては悪化の原因になることもあります。

一日中、洋服を着せるのはやめましょう。飼い主の外出時、就寝時など、目が届かない時の自傷を防ぐために、一時的に着せる、という使い方であれば悪影響はあまりないかもしれません。

自傷を防ぐには、爪を切る、エリザベスカラーを装着するなどの対応が良いでしょう。

皮膚病の専門医とは

皮膚病の専門医に行くのはどんな時?

動物でも最近は専門医制度が整いつつあります。皮膚科の専門病院も見かけるようになりました。それでは、専門病院にはどのような場合に行けばいいのでしょうか。

治療を開始して、何度か治療法を変えても一向に改善がない、または悪化している時。

また、診断や治療に対して納得がいかない場合には、皮膚病の専門医の診察を受けてみられてもよいかもしれません。

予約や紹介状が必要な場合もありますので、受診を希望される際には、確認していただくとよいですね。

まとめ

猫の皮膚病を、感染症を中心にご紹介しました。

猫の皮膚の感染症は人に移してしまうものも多く、決して軽視はできないものだとお分かりいただけましたか。

猫の行動に変化がみられる場合には、もう初期の症状ではないことが多く、二次感染を併発している場合、もうすでに他の猫や人にうつしてしまっている場合もあります。

症状が軽ければ早期の治癒も期待できます。ふだんから猫の皮膚の様子を注意深く観察し、症状が強く出る前に動物病院で診察を受けるようにしたいものです。

 
 

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