2017年9月13日更新

イカを食べると猫は腰を抜かすってどういうこと?【獣医師が解説】

後藤大介



獣医師

 

「イカを食べると猫は腰を抜かす」――そんな話を都市伝説のように聞いたことはありませんか?でも、この話、都市伝説なんかではなく、猫がイカを食べすぎるのは危険なんです。

今回はそんな猫とイカの関係をお話しします。イカを食べさせる場合には何を気をつけたらいいかや、イカ以上に危険な食材についても一緒に知っておいてくださいね。

 

猫にとってイカってどんな食べ物?

イカは猫には危険な食べ物

イカは猫にとって危険な食べ物です。少量であれば食べても問題が起きることはほとんどありませんが、大量に食べると危険です。その原因はイカに含まれている「チアミナーゼ」です。このチアミナーゼによって、イカをたくさん食べると中毒症状が起きてしまうのです。

チアミナーゼ酵素とは?

チアミナーゼはチアミン(ビタミンB1)を壊す酵素です。チアミンは神経伝達のために重要なビタミンであり、チアミナーゼによってチアミンが壊されてしまうと、チアミン欠乏の症状が出てきます。

猫は犬と比べてチアミンの必要量が多いため、イカによるチアミン欠乏が起こりやすいのです。

通常のキャットフードにはチアミンが多く含まれていますので、チアミン欠乏を起こすことはありませんが、そのチアミンを壊してしまうチアミナーゼを大量に取ってしまうとチアミン欠乏を起こしてしまいます。

ちなみに、人の「脚気(かっけ)」もチアミン欠乏により引き起こされます。

イカより怖い!チアミナーゼがたくさん含まれる魚介類

チアミナーゼはイカだけに入っているわけではありません。

魚介類全般にはチアミナーゼが比較的多く含まれていますが、特に注意が必要なのが、ハマグリやカツオ、マグロです。これらの魚介類にはイカより多くのチアミナーゼが入っているため、イカ以外にもこれらの魚介類を食べると、チアミン欠乏を起こすことがあります。

イカを食べてしまったら注意すること

イカを食べるとどんな症状が出るの?

イカを食べて起こるチアミン欠乏症の主な症状は「神経症状」です。神経症状とは、脳神経の異常からくる神経伝達の異常です。チアミン欠乏症では、イカを食べてから数時間以内に症状が出て来ることが多いです。

まず始めによく出て来る症状は、沈鬱状態や唾液分泌の増加などです。

この時点で早く気付き、適切な治療を行えば重症化することなく治癒することも多いです。チアミン欠乏が進行すると、体の硬直やけいれん、眼振、起立不能などの症状が起きてしまいます。

イカを食べた量が多く、治療が遅れると命に関わることもあるため、注意が必要です。

これらの症状はチアミン欠乏に共通しますので、イカ以外にチアミナーゼ尾を多く含むハマグリやカツオなどを大量に食べても同じです。

イカを大量に食べてしまった場合は早く動物病院へ

イカなどをたくさん食べてしまった場合は動物病院へ連絡をして、できるだけ早めに受診するようにしましょう。

食べて間もなければ催吐処置ができることもあり、その場合はチアミン欠乏および、消化不良の予防ができます。

すでに食べて数時間たっている場合や、イカによるチアミン欠乏症の発症が疑われる猫には、チアミンを注射で補充します。

チアミンの注射により、比較的素早く症状が改善してくれることが多いです。

ただし、一般的な動物病院でチアミン欠乏なのかどうかの検査を行うことはできませんので、イカなどのチアミナーゼをたくさん含む食材の摂取の有無を、飼い主さんが確認して、しっかり獣医さんに伝えることが大切です。

 

中毒を起こさないイカの食べ方はあるの?

加熱していたりスルメにしているのは食べていい?

チアミナーゼは酵素の一種ですので、過熱すると失活(活性が無くなること)してその働きは失われます。

そのため、加熱処理(ゆでる、いためるなど)したイカであれば食べても問題ありません。スルメも乾燥の過程で熱が加わり、チアミナーゼは失活していると考えれているため、スルメを食べてチアミン欠乏を起こす可能性は低いでしょう。

ただし、イカはあまり消化のいい食材ではなく、消化不良を起こす可能性があります。

与える必要のないものですので、たとえ過熱していても積極的に与えないようにしましょう。

また、スルメは胃の中で膨らみますので、食べ過ぎると胃拡張を起こしてお腹が苦しくなってしまいます。

スルメをどうしても与えたい場合にはほんの少量にし、下痢やおう吐に注意しましょう。

生のイカの中毒量は?

猫が生のイカを食べたときの中毒量は定かではありません。

それは、イカに含まれるチアミナーゼはチアミンを壊しますが、猫の体が蓄えているチアミンの量がその子によって異なるためです。

もともとチアミンが少ないフードを食べている猫では、少量のイカでもチアミン欠乏の症状が出てしまうことがありますので、注意してください。

キャットフードに入ってるけど大丈夫?

キャットフードにイカが入っていても、製造過程で加熱処理をされていることが多く、チアミナーゼによる中毒の心配は少ないです。

ただし、外国産の安いキャットフードは、イカだけではなく、他の成分の安全性が怪しいものがありますので、できるだけ避けるようにしてください。

まとめ


なぜ「猫がイカを食べると腰を抜かす」と言われるのか、理解できましたか?

もし生のイカをたくさん食べてしまった場合は、重篤な症状が出る前に治療を始めることで回復できる可能性が高くなりますので、早めに病院で診てもらうことが大切です。

イカ以外にも、ハマグリなど猫に生で食べさせると危険な魚介類もあるため、消化不良を含めて、魚介類を生で食べさせるときは注意しておいてくださいね!