2017年9月21日更新

犬の臭いの原因、ケアを獣医師が解説!

ペット生活 獣医師



獣医師

ペット生活編集部の獣医師アカウント。ペットとの暮らしを豊かにするお役立ち情報をお届けします。

 

最近、暑くなったせいか、帰宅すると、家の中の臭いが以前と違ってきている、何か分からないけど臭いが気になる、という方はみえませんか?もしかしたら犬の臭いかもしれません。犬も動物です。私たち人とは汗の種類が違い、犬種や体質によっては皮脂の分泌も多い場合もあり、室内で飼っていると犬特有の臭いが気になることがあります。一緒に生活をしていると慣れてしまい、臭いを感じなったりもしますが、犬を飼っていない人にとっては不快に感じることもあります。
アポクリン腺からの分泌物、皮脂や口臭が臭いの主な原因になりますが、予防策はあるのでしょうか。今回は犬の臭いについて、原因、ケアなどについてお話を進めようと思います。

 

臭いの原因

体臭

犬の体臭の原因は、体表に分布するアポクリン腺という汗腺から分泌される分泌物が原因になっています。汗腺にはエックリン腺とアポクリン腺が存在しますが、エックリン腺は体温調節のための汗を分泌し、アポクリン腺では個体識別のための分泌物が分泌されます。一般的に汗というと、体温調節のための汗を指すので、犬は汗をかかないと言われますが、アポクリン腺からの分泌物は存在します。アポクリン腺の分泌物は分泌物直後は強い臭いはしませんが、皮膚の常在菌に分解されると強い腐敗臭を発するようになります。それが犬臭として、独特の臭いとなるのです。

肛門腺の臭い

肛門腺といって、肛門周囲には臭いの強い分泌物を分泌する特別なアポクリン腺が存在し、肛門嚢という袋に溜まります。肛門腺は臭嚢腺と呼ばれることもあり、個体識別のための分泌物を分泌します。言わば犬の名刺のようなもので、犬同士の挨拶ではお尻の臭いを嗅ぎ合います。この分泌物が袋に溜まり過ぎていると強い臭いを発します。

耳の臭い

外耳道には、耳垢腺という皮脂腺が分布しています。犬種や季節により、耳垢腺からの皮脂の分泌量が多いことがあります。その場合には、細菌が増殖し、臭いが強くなります。また、細菌が過剰に増殖すると外耳炎を起こしてしまいます。

口臭

最近はデンタルケアに対する関心が高まり、犬もデンタルケアをするお家が増えてきていると思います。とはいうものの、まだ犬が歯を磨く習慣は定着しておらず、実際にデンタルケアをしていても不十分であることが多いものです。犬の唾液は人とは異なり、虫歯にはなりにくいのですが、歯石が付着しやすい性状をしています。歯垢や歯石は犬の口臭の主な原因になります。また、被毛の長いわんちゃんは口周囲の被毛が汚れやすいです。食事をした後、お水を飲んだ後以外でも、ヨダレが付着して汚れてしまった場合には、清潔に保たないと臭いの原因になり得ます。

便臭、尿臭など排泄物の臭い

雄犬の場合、排尿後にペニスの前側の被毛に尿がかかって汚れてしまうことがあり、その汚れが臭いの原因になります。マーキング防止や、発情出血中の汚れを防止するためや、後肢麻痺などでオムツをはかせている場合には、オムツで蒸れた被毛も臭いの原因になり得ます。
また、下痢をしている時には、便が身体に付着しやすくなります。便の付着は皮膚のただれの原因になりますし、もちろん臭いの原因にもなります。

臭いを強く感じる時は?

臭いやすい時期

時期的に夏場は臭いが強くなり、気になる時期になります。気温が上がると皮脂の分泌も増えます。特に日本の高温多湿な気候は雑菌が繁殖しやすく、過剰な皮脂と反応して臭いが強くなり、気になるようになります。

犬の体調によって臭いやすい時期

皮膚病や外耳炎が悪化すると臭いが強くなります。皮膚病も外耳炎も気温が高くなると一気に悪くなる傾向があり、具体的にには春から秋にかけてがその時期にあたります。
アトピー体質の犬では、皮脂の分泌が多い傾向にあるため、もともと体の臭いが強いですが、そこに二次感染を起こすと、さらに臭いが強くなります。

 

臭いの原因はもしかして病気かも

考えられる病気

脂漏性皮膚炎(マラセチア性皮膚炎)

臭いがするから病気というわけではありませんが、皮脂の分泌物が多くベタついていて痒みが強い場合には、脂漏性皮膚炎が疑われます。

甲状腺機能低下症

高齢犬で疑われます。高齢になると甲状腺機能も衰え、甲状腺機能低下症になる犬もいます。甲状腺からは代謝に関わるホルモンが分泌されるため、ホルモンが不足すると、皮膚も代謝が落ち、脂っぽく、皮膚炎にもなります。その結果、強い臭いの原因になります。

歯周病

歯周病は初期の段階から口臭が気になることが多いです。歯周病は臭いや歯石だけの問題ではありません。歯の生えている骨が溶け、歯が抜けてしまう病気です。臭いが気になり出した早期から治療を開始することで、歯を失うことは防げます。臭いが気になったらもう、歯周病が始まっているサインですので、治療を開始されることをお勧めします。

肛門嚢破裂

肛門腺からの分泌物は、排便の際に肛門嚢から導管を通り、少しずつ分泌されます。しかし、肛門嚢からの導管が詰まってしまうとうまく分泌ができなくなります。分泌ができなければ、分泌物が袋の中に溜まります。袋には容量がありますので、容量オーバーになれば、風船が破れるように破裂してしまいます。
袋がいっぱいになると、犬も違和感を感じてお尻を気にして舐めたり、お尻を引きずって歩くなどの行動が見られます。お尻の付近での臭いも強くなります。そのような様子がみられましたら、早めに動物病院に連れて行ってあげてください。

外耳炎

外耳炎の原因は外耳道の感染です。耳の中には耳垢腺という皮脂腺が分布し、皮脂を分泌しますが、分泌物は細菌にとって格好の餌になります。分泌物と細菌のバランスが崩れると外耳炎を起こします。外耳炎が起きれば、炎症により耳垢が増え、臭いが強くなります。

耳垢腺腫・耳垢腺癌

耳垢腺の腫瘍です。良性の場合を耳垢腺腫、悪性の場合を耳垢腺癌といいます。耳垢腺からの分泌物が増え、臭いの原因になります。悪性の場合の方が症状もひどく、外耳道や耳介の皮膚がただれ、被毛にも付着し、強い臭いになります。

体表腫瘍の自潰(破裂)

皮膚に出来た腫瘍が破裂してしまい、体液が漏出し、感染を起こすと強い臭いの原因となります。

臭いが強くなりやすい犬種

臭いが強くなりやすい犬種

アトピー性皮膚炎の好発犬種で、アトピー性皮膚炎を発症していれば、臭いが強いかもしれません。もちろん好発犬種ではなくても、アトピー性皮膚炎に罹患していれば臭いが強くなります。アトピー性皮膚炎の好発代表的な犬種を紹介します。

  • シー・ズー
  • ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • ワイアー・フォックス・テリア
  • ダルメシアン
  • アイリッシュ・セッター
  • ミニチュア・シュナウザー
  • ゴールデン・レトリーバー
  • ラブラドール・レトリーバー

など

体臭の対策

ブラッシング

ブラッシングは毛並みを整えるだけでなく、様々な目的があります。
ブラッシングをすることで、毛玉や不要な被毛のほか、花粉やホコリなどの異物の除去ができます。また、血行促進作用により、皮膚の代謝を上げることができます。丁寧なブラッシングにより、皮膚の状態が目視で確認できるため、皮膚の異常を早期に発見できます。直接的に臭いに働きかけることはなくても、臭いの原因に早期にアプローチできる可能性があります。

シャンプー

シャンプーは汚れを洗い流すという点で、臭いに対して最も直接的な効果を示します。シャンプーは犬では外用薬としても使用しますので、皮膚病の管理にはとても向いています。しかし、一方で、間違ったシャンプー剤を選んでも、思ったように効果が出なかったり、病気が原因の場合には、かえって悪化させてしまうこともあるかもしれません。

耳や肛門腺の手入れ

耳や肛門腺は日々のお手入れによって、臭いが強くなる前に手を打つことができるものです。イヤークリーナーや洗浄綿などを用い、お耳のケアをする癖をつけましょう。お手入れは、指の届く範囲内を清拭していただくだけで大丈夫です。耳の奥に取れない汚れがある場合には、外耳炎の初期かもしれません。綿棒を使うと汚れを奥に押しやってしまいますので、無理に取ろうとはせず、動物病院へ行きましょう。
肛門腺の処置は、臭いが強く、犬も嫌がることが多いので、ご自宅での処置は難しいかもしれません。お尻を気にする、お尻歩きをするなどの様子が見られましたら動物病院での処置をお勧めします。

食生活を変える

アトピー体質の場合、何らかのアレルギーを併発している確率も高く、原因が食物アレルゲンであることもあります。その場合には、フード変更をすることで病状が改善する可能性があり、その結果、臭いに対しての改善も期待できるかもしれません。また、アレルギー体質ではなくても、フードの原材料が体質と合わなければ強い体臭になる可能性もありますので、特に皮脂の分泌が多く感じられるようでしたら、フード変更をしてみてもよいでしょう。
フード変更を考える場合には、まずフード管理が必要な基礎疾患がないことが前提になりますので、主治医にご相談いただき、アドバイスを受けると良いですね。

排泄物対策

排泄物対策として最も効果的なのは、排泄したらすぐに片付けることです。
もし、オス犬を飼われていて、去勢手術をされていない場合には、マーキングを行う可能性もあります。マーキングの尿は特に臭いも強く取れにくいので、気になることと思います。去勢手術を考えることも1つの選択肢であると思います。

消臭剤

ペット用の消臭剤もたくさん発売されていますね。
消臭剤の使用は臭いの根本的な解決ではありませんので、消臭剤だけは難しいかもしれません。臭いの種類や原因に応じた消臭剤を使用し、並行して対策も行ってください。また、消臭剤の成分によっては、犬が摂取してしまうことが好ましくないこともあります。犬が舐めてしまう場所の消臭剤の使用には注意しましょう。

口臭の対策

歯磨き

歯磨き最大のメリットは、歯石予防です。歯石の予防は口臭予防につながります。もう、付いてしまった歯石に対しては、残念ながら歯磨きではあまり効果を期待できません。しかし、毎日ブラッシングをすることで、歯茎の血行を促進し、これ以上悪化をしないようしていくという点では意味があると思います。歯磨きをされる際には、犬用のデンタルペーストを用いると歯石予防効果が高まり、なお良いでしょう。
また、歯石の付いてしまった犬でも、歯石除去処置を受けた後は歯磨きにより歯石の再付着を防止していかなければ、すぐに歯石は付着します。歯磨きの習慣がない犬では、習慣づけて、歯石も口臭予防も行ないましょう。

獣医師による歯石取り

動物病院で処置を行う場合には、がっちり付いた歯石を除去すると同時にしっかりと歯周ポケットまでケアを行うため、全身麻酔が必要になります。全身麻酔の際には、事前に血液検査やレントゲン検査などを行い、安全に処置ができるよう準備が必要になります。そのため時間もお金もかかってしまうのが難点です。しかし、麻酔をかけて専門の器具を使用しての処置になりますので、効果はてきめんです。
診察室で表面的な歯石を鉗子などで砕く場合がありますが、その場合には見た目上の歯石の除去はできても、歯周ポケットまでは行き届きません。そのため、歯周ポケットからどんどんと歯周病は進行しています。いずれ歯槽骨が溶けて歯が抜けてしまいますので、きちんと麻酔をかけた処置をお勧めします。

歯石対策グッズ

デンタルケアのグッズやおやつもうまく取り入れていかれると良いでしょう。ここで、気をつけたいのが、あまりにも硬すぎるグッズを使わないことです。たとえ犬用のおやつとして売られていても、骨のように硬い物は与えないようにしましょう。犬の奥歯は、裂肉歯といい、柔らかい肉を引き裂くためのものです。硬いものを噛むと歯を傷め、折れてしまうことがあり、それが原因となり歯を失うこともあります。

便臭、尿臭など排泄物の臭いの対策

食生活を変える

犬は元々は肉食でしたが、人との距離が縮まるに伴って雑食へと変化していきました。
食べ物により、排泄物の状態が変わるため、その臭いにも変化が起きます。一般的に動物性食品を摂取しなければ、排泄物の臭いも強くないと言われています。しかし、排泄物の臭い対策のためだけに、犬の体調を考えずにフードを変えるのは好ましくありません。

サプリメント

動物の排泄物の臭い対策用のサプリメントも見かけますね。犬が嫌がらなければトライしてみるのも良いと思います。しかし、あくまでサプリメントです。効果には個体差が大きいと思います。効果がないからと過剰な摂取をしないよう注意をしてください。

臭いの予防

犬に合った手入れをする

犬によってどこに臭いが出やすいのか異なりますので、その子に合ったお手入れが必要になります。実際にどのようなお手入れがあるのか紹介していきます。

  • ブラッシング
  • シャンプー
  • 被毛のカット(トリミング)
  • 耳掃除
  • 歯磨き
  • 肛門腺処置

清潔に保ちやすい環境を考える

  • 愛犬の寝る場所にはタオルなど洗えるものを敷き、こまめに洗濯をする
  • 布製のおもちゃでは臭いが取れにくいので、こまめに洗う
  • プラスチック製、陶器など、洗いやすい素材のものを使う
  • 洗えないものに臭いがつかないように物を減らす、犬の周りに必要以上に物を置かない

こまめな掃除

特に、排泄物は排泄後すぐに片付けることで臭いの強さが違ってきます。

  • トイレシートの交換回数を増やす
  • 犬の使用しているタオル、グッズの洗濯回数を増やす
  • こまめに掃除機をかける、水拭きをする

消臭グッズを活用

これまで、様々な対策を挙げてきましたが、対策をしていてもどうしても臭いが気になるということもあると思います。そういった場合には、市販されている空気清浄機や消臭剤もうまく活用するようにするとよいですね。
また、消臭剤は手作りも可能です。体臭や便には、重曹。尿には、クエン酸、酢、コーヒーやお茶が効果を示すと言われています。
重曹は食用の物を用いると舐めても安全ですが、舐めすぎは厳禁です。
クエン酸は酢やレモン果汁でも代用可能です。コーヒーやお茶にはカフェインが含まれているので、舐める癖のあると犬では要注意です。

健康診断をする

臭いの元は病気が原因かもしれません。定期的に健康チェックに行かれるのも対策になります。特に、耳や肛門腺の処置をご家庭ではできないこともありますので、動物病院での診察をお勧めします。

まとめ

犬の臭いについてお話してきましたが、いかがでしたか。犬と私たちとでは体質も大きく異なり、その違いが臭いの原因になっていることがお分かりいただけたでしょうか。しかし、強い臭いは生活する上でストレスにもなります。犬から発せられる臭いの原因と性質を知り、正しい対策をすることで、臭いを減らすことはできそうです。こまめな掃除や洗濯など、手間をかけ、愛犬との生活を一層楽しいものにしたいですね。