2017年10月6日更新

猫には生理がない!?その理由と猫の発情のシステムとは

後藤大介



獣医師

 

人や犬と違い、猫には生理出血がありません。時々、陰部からの出血を「生理かな」と思う飼い主さんがいるようですが、陰部からの出血は生理ではなく、何らかの病気の可能性が高いです。

今回は猫の生理がない理由を、猫の発情や排卵のシステムと一緒に解説します。また、陰部から生理のような出血があった場合に考えられる病気についてもお話いたします。猫の飼い主さんが知っておくべき知識ですので、ぜひ参考にしてみてくださいね!

 

猫に生理はない

犬とヒトの生理はどうして起こる?

生理とは、正式には生理出血(発情出血)を意味し、卵胞の発育周期(排卵周期)に伴って陰部から出て来る出血を指す言葉です。ただし、犬とヒトではその出血のメカニズムは異なり、出血するタイミングも変わってきます。

ヒトの生理出血は、卵巣が発育するとともに発達した子宮内膜が、排卵後しばらくしても受精(着床)しない場合に、出血とともにはがれ落ちてくる現象です。つまりヒトでは排卵の後に生理出血が起こります。

一方、犬の生理出血は、妊娠のために発達した子宮粘膜の血管からにじみ出てきた出血です。犬では排卵する少し前に出血が起き、その後妊娠可能な発情期に移行します。

猫に生理がない理由

猫には生理がありませんが、その理由は猫の排卵方式にあります。

犬やヒトはある一定間隔で自然に排卵する「自然排卵動物」ですが、猫は交尾の刺激があると排卵が起こる「交尾排卵動物」です。

子宮内膜の発達は基本的には、受精卵を受け入れるためのベッド作りだと言われています。排卵された卵子が精子と出会い受精した受精卵をしっかり受け止め栄養を与えるための土台が発達した子宮内膜です。

猫のような交尾排卵動物では、いつ排卵と受精が起こるかわからず、子宮内膜を準備しておくことができないため、生理が起こらないと考えられています。

猫の妊娠の仕組み

先ほど書いた通り、猫は交尾排卵という特徴的な排卵システムを持っています。猫は定期的に卵巣の卵胞が発達し、そこからホルモンが出て発情を起こします。

卵胞ホルモンによって発情を起こしたメス猫は、オス猫からの交尾を受け入れるようになります(発情していないメス猫は交尾は受け入れません)。

交尾をしたという刺激が卵巣に届くと、卵巣から卵子が排卵されます。交尾によってメス猫の子宮の中に入った精子は、排卵された卵子と卵管で受精し、受精卵となって子宮に着床します。着床した受精卵は、子宮内膜から栄養を得て徐々に成長し、交尾から63日前後で出産を迎えます。

猫は通常3~5頭くらいの子供を産む多産動物です。ただし、人の一卵性双生児のように1つの受精卵が分裂してたくさんの子供ができるではなく、複数排卵された卵子にそれぞれ精子が受精するため、遺伝子の異なる子猫がたくさん生まれてきます。同時に生まれてきた猫の毛の柄が違うのはそのためです。

また、メス猫は交尾をしてしばらくの間発情が続くため、一度の発情で多数のオス猫と交尾をすることがあります。その場合、同腹に複数の父親の子供を妊娠する「同期複妊娠」という現象も時々起こります。つまり、1度に生まれた子猫のうち、父親が違う子猫がいる可能性もあるんですね。

猫の発情期


メス猫は一定間隔で発情期を迎えます。発情期には、独特の鳴き声で鳴いたり、すりすり異常に甘えてきたり、外に行きたがったりするなど、明らかに行動が変わってきます。これらの行動は、自分が妊娠可能な発情期であるとオス猫に伝え、交尾を促すために行っていると考えられています。

交尾が終わる、もしくは卵胞が自然に排卵されたり吸収されたりすると発情は終了します。発情していない期間は卵巣に卵胞が発達していないため、交尾を受け入れることはありません。

一方で、オス猫には発情期というものはありませんが、メスに合わせていつでも交尾を行うことができます。

メス猫には発達した卵胞がなく妊娠できない時期がありますが、オスは常に精子を作っていつでも妊娠させることができるため、特に発情期というものが決まっていないと考えられます。

 

猫の生理かなと思ったら~陰部からの出血で考えられる病気

今まで解説した通り、猫には生理出血がなく、陰部からの出血がある場合は病気の可能性を考えておく必要があります。猫の外陰部は生殖器の出入り口ですが、尿道も開口しているため、陰部からの出血は生殖器もしくは泌尿器の病気で起こります。

陰部から出血する生殖器の病気

基本的に避妊手術をしている猫では、生殖器の病気による陰部の出血はほとんど起こりません。避妊手術をしていない場合には以下のような病気が考えられます。

  • 子宮蓄膿症:子宮に血や膿が溜まる病気です。中年以降に猫に時々見られます。
  • 膣・子宮の腫瘍:膣や子宮に腫瘍ができてもそこから出血してくることがあります。比較的まれです。
  • 交尾による膣の出血:外に行く子や家に未去勢のオスがいる場合には、交尾の後に陰部が荒れて出血することがあります。その場合は妊娠していて2か月後に出産する可能性もあるため、出産を望まない場合は早めに避妊手術をする必要があります。

陰部から出血する泌尿器の病気

陰部からの出血は、生殖器の病気よりも泌尿器の病気であることが多いです。泌尿器の病気は避妊手術の有無は関係なく出てきます。

  • 膀胱炎:陰部からの出血で最も多い原因になります。膀胱に炎症を起こして、出血していると、陰部に血が付くことがあります。膀胱炎の原因として、膀胱結石や膀胱腫瘍があることもあります。
  • 溶血性貧血:血液が壊される溶血でも尿が赤くなるため、陰部に血のような赤いものが付くことがあります。

まとめ

猫の繁殖メカニズムは犬やヒトとは大きく異なり、生理もありません。生理のような出血がある場合は生殖器や泌尿器の病気の可能性があるので、早めに動物病院で診てもらいましょう。

また、メス猫を飼っていて妊娠させることを考えていないのであれば、早めに避妊手術を受けられることをおすすめします。

避妊手術は子宮や卵巣の病気の予防だけでなく、乳腺腫瘍を予防してくれたり、発情に伴うメス猫や家族のストレスを大幅に軽減してくれます。

猫の繁殖生理について正しい知識を持ち、愛猫の病気の予防ができるよう、今回の記事を参考にしてみてくださいね!