2017年11月14日更新

【獣医師が解説】まだまだ多い寄生虫!猫の回虫症とは?

後藤大介



獣医師

 

猫にはさまざまな感染症がありますが、その予防や治療が普及し、室内飼いが増えてきたこともあり、感染症の多くはかなり減少しています。

実際に動物病院で感染症を診察する機会は少なくなっていますが、いまだによく遭遇する感染症の代表が「回虫症」です。

回虫症は野良猫だけでなく、飼い猫からもよく見つかる感染症として注意が必要です。

回虫はそれ自体が猫の命を奪うことは非常にまれではあるものの、子猫の下痢や栄養不良を起こすことは多く、その予防や治療をしておくことは重要です。

また非常にまれにではありますがヒトに感染することもあります。

今回は、そんな猫の回虫症の感染経路や症状、治療法などについて解説しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

回虫とは

回虫ってどんな虫?

回虫は猫の腸に住む線虫と言われる寄生虫の一種です。そうめんのように白く長い虫であり、3㎝~10㎝くらいの長さをしています。

犬にも犬回虫が寄生しますが、猫に寄生する猫回虫とは種類が異なり、猫回虫は基本的にネコ科の動物の体の中でしか成長できません。

回虫感染による猫の症状

回虫が寄生すると、感染した猫には以下のような症状が出て来ることが多いです。

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 栄養不良
  • 毛並みの悪化

成猫が回虫に感染した場合にはほとんど無症状であることが多いですが、子猫の場合には重篤な下痢や栄養不良を起こしてしまうこともあります。

また、まれに回虫が腸に詰まってしまい、腸閉塞を起こすことがあり、その場合には状態が急変して亡くなってしまうこともあります。

回虫の感染経路

猫が回虫に感染する最も一般的な経路は、母親からの経乳感染だと言われています。

回虫に感染した母親が出産した場合、その乳汁に回虫の幼虫が入り込み、それを飲んだ子猫に感染するのが経乳感染でになります。

ブリーダーやペットショップから来た猫でも時々回虫感染が見られるのは、母猫に潜伏感染をした回虫が母乳を介して子猫に感染するためだと考えられます。

他にも、感染猫の糞便中に排泄された回虫卵を口にして感染してしまったり、回虫卵を食べた小動物を食べて感染したりすることも多いと言われています。

人にも感染の可能性。「幼虫移行症」とは

感染性を持った回虫の成熟卵を口に入れてしまうと、人でもまれに回虫が感染することがあります。

人は回虫がしっかり成長できる終宿主ではないため、人が回虫の卵を口にしてしまっても成虫まで成長することはできません。

ただし、幼虫が体の中を移行する幼虫移行症を発生し、内臓にダメージを受けてしまうことがあります。

大人の人で幼虫移行症を発生するのは稀ですが、免疫力の弱い赤ちゃんや子供では時々発生報告があるため、猫を飼っている場合には回虫症の有無や糞便の処理には注意してください。

糞便の処理など気を付けることはこの記事の後半に書いておきますのでそちらも参考にしてみてください。

回虫の検査と治療

回虫は糞便検査で診断

回虫は糞便に卵を排泄するため、糞便中の卵の有無を調べることで回虫の検査ができます。通常、検温時に体温計についた便で検便を行うことが多いです。

ただし、体温計につく便の量は多くはありません。少量過ぎるとしっかりした検便ができず診断精度が低くなってしまうため、可能であればお家でした糞便を袋などに入れて動物病院に持参されることをおすすめします。

また、1回の糞便検査で回虫卵が発見されなくても、回虫の感染を100%否定できるものではありません。

心配な場合は何度か糞便検査をしてもらうか、以下にご説明する試験的治療をしてもらうといいでしょう。

もし、回虫を疑う虫が落ちていた場合は、その虫は捨てずに動物病院へ持参するようにしてください。

猫の体外に排泄されるとそれほど活発に動けませんので、袋か何かの容器に入れておけば逃げ出す心配はありませんし、その虫が感染することもないので怖がらなくても大丈夫です。

動物病院での回虫治療

回虫は猫の寄生虫症として最も一般的なものですが、比較的簡単に駆虫することができます。

回虫の治療には、注射薬、飲み薬、背中に垂らす「スポットオン製剤」がありますが、最近最もよく使われるのがスポットオン製剤です。

スポットオン製剤は、フロントラインなどのノミダニ予防薬として有名なタイプの薬です。

最近出てきたスポットオン製剤の「レボリューション」や「ブロードライン」は、ノミダニ予防だけでなく、回虫の予防及び駆虫効果を持っています。

これらスポットオン製剤は、薬を飲ませる苦労なく背中に付けるだけという手軽さが魅力で、耳ダニや他の寄生虫に効果があるというメリットがあります。

そのため、最近では、回虫が見つかったり回虫感染が疑わしい場合には、スポットオン製剤を使うことが多くなっています。

スポットオン製剤は、1度の塗布で回虫の駆除をすることができます。

それでも虫が出てしまう場合や、背中に垂らす薬を極端に嫌がったり滴下部位の皮膚が荒れてしまう場合には、回虫に効く飲み薬や注射薬を使うこともあります。

多頭飼いの家の場合は、1頭の猫に回虫が見られたらその兄弟や同居の猫にも回虫がいる可能性が高く、同時に駆虫することも多いです。

基本的に薬自体はそれほど副作用の強いものではないため、試験的な駆虫は比較的安全に行えますし、予防として使うことも多いです。

回虫症の予防のために家でできること

環境を清潔に

猫回虫の感染経路としては、母子感染以外であれば、基本的に便の中に排泄された卵が感染源となります。

そのため、普通にお家を清潔に保っていれば、糞便以外から猫回虫に感染するリスクは非常に低く、それほど神経質になる必要はありません。

また、まれに虫がお尻から出てきてその辺に落ちているということがありますが、虫自体には感染能力はありませんので、ティッシュでつまんでごみとして捨ててしまって問題ありません。

通常、猫の体外に排泄された回虫は、乾燥して数時間で死んでしまいます。

猫トイレを清潔に保つ方法

便の中に排泄されたばかりの回虫卵には感染力はありません。便に排泄された回虫卵は約2週間で成熟卵になってはじめて感染性を持ちます。

そのため、便をしたらその日にトイレをきれいにしていれば感染する心配はほとんどないため、とにかく猫の便を放置しないことが大切です。

それから、回虫を含めた一般的な寄生虫の卵は、通常の消毒薬では消毒できません。

もしトイレを消毒したい場合には、熱湯を使うと回虫卵も死滅しますので、必ず熱湯で消毒するようにしてください。

猫のお尻も清潔に

下痢をしていない場合は、猫のお尻に便が付くことは通常ありませんが、下痢をしている場合にはお尻を清潔に保つことも大切です。

先ほど書いた通り、回虫の卵は排泄されて2週間程度で感染性を持つようになるので、2週間以上お尻が汚れた状態が続くとそこから回虫が感染する可能性があります。

下痢でお尻が汚れていることに気付いたら、早めにぬるま湯などで洗ってきれいにしておきましょう。

これは回虫症の予防だけでなく、皮膚の感染や多々連の予防のためにも大切です。

やってはいけないこと

「回虫がいたから感染が怖い」という理由から、猫のお世話を怠るとどんどん回虫が体内で増えてしまうことがあります。

説明した通り、早く清潔に保ってあげれば、他の猫やヒトへの感染のリスクはほとんどありません。

回虫がいる猫のまわりはしっかり清潔に保ってあげましょう。もちろん猫のお尻に熱湯をかけることはしないでください。

また、必要はありませんので、回虫を見つけてもバルサンを炊いたり、猫に殺虫剤をかけないようにしてください。

回虫はそれほど怖いものではなく、しっかり便を清潔に保つことで問題はほとんど起こりません。

回虫がいる猫は、しっかりお世話をして清潔に保つことを心がけることが大切ですね。

 

回虫から猫を守る方法

外に出さない

外には感染性のある回虫卵を含む野良猫の糞や、回虫の幼虫を持った小動物がたくさんいます。

また、回虫だけでなく、それ以外の寄生虫やウイルスなどの感染リスクも、外に行けば出てきてしまいます。回虫であれば駆虫できますが、猫エイズや白血病は一度感染してしまうと基本的に治すことはできません。

もちろん外に行けば事故のリスクもあります。回虫の予防だけでなく、愛猫の健康のために室内飼育をおすすめいたします。

駆虫薬で予防する

先ほど挙げたレボリューションやブロードラインは、回虫の治療薬であるとともに、予防にもなります。

また、ノミやダニの予防にもなるため、定期的にこれらの薬を背中に垂らしておくといいでしょう。

トイレを清潔に保ち、家の中に原因を断つ

回虫は放置された便の中で感染性を持ちます。とにかく便を放置せず、トイレを常に保っておきましょう。

まとめ


猫の消化管内寄生虫である回虫は、いまだに猫に非常に多い寄生虫であり、特に子猫や外飼いの猫では注意が必要になります。

また、むやみに怖がる必要はありませんが、まれにヒトに感染することもある病気であるためしっかりした知識を持っておくことも大切です。

猫回虫の駆虫や予防は非常に発達してきており、比較的簡単に行うことができます。

回虫症に感染してしまうリスクが高い子では、しっかり検査をして、その駆虫や予防をしておいてくださいね!