2017年11月12日更新

【獣医師が解説】犬の断尾ってどんなもの?断尾の実際とメリット・デメリットについて

後藤大介



獣医師

 

コーギー・プードル・ミニピン、この3犬種に共通することと言えば何かわかりますか?そうです、これらの犬種は短い尻尾を持っています。

でも尻尾が短いのは生まれつきではなく、生まれて間もなく断尾をしているからなんです。

そのため、飼い主さんのお家に来た時にはすでに短くなっており、もともと尻尾が短い犬種だと思っている人も多いようです。

では、なぜ断尾をするのかご存知でしょうか?どの犬種が断尾をしているのでしょうか?

最近では、このような犬種でも断尾をしないことも多く、長い尻尾を持ったプードルやコーギーも増えているんですよ。今回は犬の断尾についてお話いたします。

 

断尾とは


断尾とは、尻尾を根元から切って、尻尾を短くする行為のことです。コーギーやヨーキーで尻尾がほとんどない子を見ることは多いと思いますが、これは尻尾がもともと短いのではなく、断尾により尻尾を短くしているのです。

断尾の時期とその理由

断尾は産まれて間もない時期(通常生後1週間くらい)に行われます。この時期に断尾が行われる理由は以下の通りです。

  • 血管が少なくほとんど出血しない
  • 神経もそれほど発達していないため、無麻酔で行うことができる(ただし、痛みが全くないということはありません)
  • 傷の回復が早い

断尾の方法

断尾は無麻酔で行われます。切断する部位の毛を刈って、消毒し、その部位の皮膚を切開します。

その後骨をはさみで切断し、皮膚を1~数針縫合して終了です。断尾は通常、1~2分で行うことができます。

子犬の皮膚の再生能力は非常に強いため、通常数日できれいに皮膚がくっつきます。

断尾は完全に尻尾の根元で行うわけでなく、少し残して行うことが一般的です。

残す長さに関しては犬種によってある程度決まっていますが、飼い主さんやブリーダーさんの好みによって決まってくることが多いです。

断尾をすることの多い犬種

断尾はすべての犬で行うわけではありません。伝統的によく断尾を行う犬種は以下の通りですが、ここに挙げる以外にもかなり多くの犬種で断尾が行われることがあります。

  • ウェルシュ・コーギ・ペンブローク(ウェルシュ・コーギー・カーディガンは断尾しません)
  • プードル
  • ドーベルマン
  • ヨークシャーテリア
  • ミニチュアピンシャー
  • ミニチュアシュナウザー
  • アメリカンコッカースパニエルなど
 

断尾がされていた背景


断尾はかなり昔からされていた慣習です。では、なぜ断尾をされていたのでしょうか?

職業的な理由

断尾をする犬種には、昔はそれなりの事情がありました。特に、何かの役割を与えられて働いていた使役犬は以下のような理由により断尾をされていました。

牧羊犬

ウェルシュ・コーギー・ペンブロークはもともと牧羊犬として活躍していた犬種ですが、足が非常に短いため、尻尾が地面についてしまうことも多いです。

そうすると、時に牛や羊などに尻尾を踏まれてしまい、骨折したり怪我してしまったりすることがあります。

そういった事故が起きないように、牧羊犬では断尾をしていたと言われています。

狩猟犬

茂みや藪の中を走り回る狩猟犬にとって、とげや木の枝に引っかかってしまう尻尾は邪魔なものになります。

また獲物と格闘した際に尻尾を噛まれてけがをしてしまう可能性もあります。狩猟犬にも尻尾があるデメリットが高かったため断尾をされていたようです。

警備犬

警備犬は、侵入者に長い尻尾をつかまれたり攻撃されないように断尾されたと言われています。

昔の慣習や迷信

職業的な理由以外にも、昔断尾をされていた理由については以下のようにも考えられています。

  • 尻尾のある犬に課されていた税を、断尾をすることで逃れるため
  • 断尾をすると狂犬病を予防できるという迷信

これらの慣習がそのまま残って、断尾が継続されているという説もあります。

断尾のメリット・デメリット

断尾にはメリット・デメリットがそれぞれあります。

断尾のメリット

現在、家庭で飼われている家庭犬で、断尾をするメリットは多くはないと考えます。

尻尾の腫瘍や骨折、尾追い行動による自傷などがある場合には、「病気の治療」として断尾を行うことはありますが、その予防のために断尾をするというメリットは多くないように思えます。

コーギーなどふさふさの尻尾を持つ犬では、尻尾を短くすることで、排泄物や外の泥などで汚れにくいというメリットはあります。

インターネット上などでミニピンは尻尾が長いと骨折しやすいという情報があるようですが、実際に通常の生活を送っていてミニピンだから尻尾が骨折してしまったということは見たことがありません。

もちろん、ドアに挟んだり、事故、踏み付けなどがあれば尻尾は骨折してしまうことがありますが、そのリスクは他の犬種とほとんど変わらないと考えられます。

断尾のデメリット

断尾にはいくつかのデメリットがあります。

断尾時の痛み・感染のリスク

生後数日の子犬でも断尾時には痛みを伴います。

ほとんどの子では、その痛みの記憶はないようですが、断尾をしている犬の中には、尻尾付近を触られることを極端に嫌がる子もおり、その痛みの記憶が残っている可能性があります。

また、断尾の切断面が感染するリスクもゼロではありません。

会陰ヘルニアのリスク

会陰ヘルニアとは、肛門周囲の筋肉が弱ってしまい、腸を支えきれなくなって脱腸してしまう病気です。

この病気を引き起こす要因の一つとして、断尾がリスクになっている可能性が指摘されています。

断尾をすることで尻尾しを振らなくなるため、肛門周囲の筋肉が発達しなくなり、高齢になってから会陰ヘルニアが発生しやすくなってしまうのではないかと考えられています。

感情表現がしずらくなる

犬にとって、尻尾の動きは、コミュニケーションをとるための一つの大切なツールです。

尻尾の動きで喜びや警戒などの感情を伝えることができますが、尻尾が無くなるとそのコミュニケーションができなくなってしまいます。

今も断尾する理由は?

犬種のスタンダード

日本で犬種を公認しているジャパンケンネル倶楽部(JKC)では、犬種のスタンダードというものを決めています。

犬種標準という規定の中には、その犬種のスタンダードな体型などが定められており、断尾を行うことのあるいくつかの犬種に関しては尾の長さなどの規定があるのです。

ただし、これらの規定は徐々に改訂され、断尾をしなくても犬種として認められるようになってきています。

またドッグショーでも、断尾をする犬種は断尾をしていないと参加できなかったり、賞が取れなかったりしていましたが、この傾向も徐々に無くなってきています。

飼い主やブリーダーの好み

プードルやコーギーなど、尻尾の長い子を見る機会が少ない犬種の場合、尻尾が長いと売れなかったり、純血ではないと思われてしまうこともあります。

そういったリスクを無くすために、断尾をするという習慣もあるようです。

断尾に関する最近の変化

ヨーロッパでは断尾禁止の国も

ヨーロッパでは、動物愛護の観点から犬の断尾を禁止する国が増えてきています。

それに伴い犬種のスタンダードも変化してきており、徐々に断尾をしない犬が増えてきています。

日本でも断尾をしない犬が増えている

日本では、現在のところ、動物愛護法はあるものの、断尾の禁止などの規定はありません。

ただし、犬種のスタンダードの変化と、動物愛護の観点から、徐々に断尾をしない犬も少しずつ増えてきているのが現状です。

日本でも長い尻尾を持ったプードルやヨーキー、コーギーなどを見る機会も徐々に増えてきていますね。

まとめ


断尾は職業犬にとっては怪我の予防のために必要なものではありますが、家庭犬に断尾を行うメリットは多くはありません。

ヨーロッパでの断尾禁止の影響や、飼い主さんの知識量の向上、動物愛護の観点などから、今後日本でも断尾をしない犬が増えてくる可能性も高いでしょう。

また、断尾や断耳など、美容面のための処置に関しては、今後法律によって禁止になる可能性があるかもしれませんね。

 
 

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