2017年11月10日更新

【獣医師が解説】犬の皮膚にできたイボ、放置していても大丈夫?

後藤大介



獣医師

 

犬の皮膚にはよく出来物ができます。皮膚の出来物には、特に害のないものから悪性のものまでさまざまありますが、一般的に「イボ」と呼ばれるものは良性のものであることがほとんどです。

では犬のイボとはどのようなものなのでしょうか?また、イボと悪性の腫瘍ではどのような違いがあるのでしょうか?今回は犬のイボについて考えてみましょう。

 

 

犬のイボとは

イボの定義

イボにはいくつかの意味がありますが、広い意味では皮膚にできた突起物のことを指します。

皮膚にできる出来物(腫瘤)にはいくつか形のタイプがありますが、皮膚から隆起する有茎状(根元がそれほど太くない)のものを(広義の)イボと呼ぶことが多いです。

広義のイボには「皮脂腺腫」などの良性腫瘍が幅広く含まれ、イボのように見えて悪性の腫瘍(いわゆるがん)であるというケースも時々あります。

一方、本当の意味(狭義)のイボは、「皮膚乳頭腫(パピローマ)」と呼ばれる皮膚の良性の腫瘍です。

ただし、皮膚乳頭腫と皮脂腺腫などを見た目で100%見極めることはできないため、皮膚乳頭腫のような見た目をした出来物をイボと呼ぶことが多いです。

イボの特徴

イボとほくろの違い

イボとほくろの最大の違いはその色です。ほくろは皮膚にできた色素細胞(メラニン細胞)の塊ですので、犬のほくろもヒトのほくろと同様、黒色をしています。

また、ほくろはドーム状に少し隆起してきますが、イボのように有茎状にできて来ることはありません。色と形がほくろとイボを見分けるポイントになり、比較的簡単に鑑別することができます。

イボの大きさ:1㎝を超えることは稀

イボ(皮膚乳頭腫)は通常数㎜程度の小さなものです。1㎝を超えるようなことはめったになく、1㎝を超えるものは皮脂腺腫など他の腫瘍の可能性があります。

イボの色:肌色~ピンク

皮膚乳頭腫の色は皮膚とほとんど変わりなく、肌色からピンク色になります。毛が黒くても黒いイボが出て来るということはありません。そのため、毛の色が濃い犬ではイボができると目立ってきます。

イボの硬さ:弾力がある

イボはそれほど硬くなく、触ると少し弾力のあるぷよぷよした感触があります。

イボができる部位

イボは皮膚であればどこにでもできます。特に顔や背中、手足に多く、1つできるとだんだん増えてくるケースが多いです。

イボができやすい年齢

イボは基本的には高齢の動物にできやすい傾向があります。高齢の子で体表に小さなイボが徐々に増えてきた場合には皮膚乳頭腫である可能性が高いでしょう。

ただし、高齢の犬には皮膚の悪性腫瘍もできやすいため、高齢になって皮膚に何かできた場合は動物病院で診ておいてもらうことをおすすめします。

また、若齢の子にイボができることもあります。

若齢の犬の場合には口腔内に乳頭腫が発生する場合があり、その場合には痛みを伴って食欲が落ちるなど問題になるケースがあります。

イボができやすい犬種

イボは基本的にはどの犬種にもできますが、シーズーには非常に多く発生します。他にも、バセットハウンドやラブラドールレトリーバー、コッカースパニエルやキャバリアなども比較的多く発生する傾向にあります。

イボは肌色~ピンク色をしていますので、毛の色が黒っぽい犬では比較的発見が早くなります。

また、短毛の犬も、イボが毛に隠れることが少ないため見つけやすくなります。白など薄い色のふさふさした毛を持つ犬では、見ただけではわからず、触って初めて気づくということも少なくありません。

イボの原因と治療

若いころに出て来るイボ(皮膚乳頭腫)

若いころに出て来るイボ(皮膚乳頭腫)はパピローマウイルスと言われるウイルスが原因だと言われています。

その場合は大人になって免疫力が付いてくれば自然に消失することが多いです。若いころに乳頭腫を疑わせるものを見つけたときは様子を見てもいいでしょう。

ただし、イボに見える乳頭腫以外の出来物もあるため、わからない場合は動物病院で診察を受けるようにしましょう。

高齢になってから出て来るイボ(皮膚乳頭腫)

高齢になってから出て来るイボは、ウイルスが関係のない皮膚乳頭腫が多いと言われています。

皮膚乳頭腫であれば特に体に害はないので無治療で様子を見ることが多いです。皮膚乳頭腫は基本的に薬で治るものではありません。

ただし、イボがあって気にして掻いたり噛んだりすることで、出血したり化膿してしまうことがあります。

その場合には、外科的に切除をしてしまわないといけないことがあります。イボの切除の方法には以下のような方法があります。

  • レーザーによる焼き取り
  • 凍結療法
  • メスや鋏を使う手術による切除

犬が大人しく、小さなイボであれば、無麻酔もしくは局所麻酔のみで切除することができます。

大きなイボや大人しくできない犬の場合は出血などの危険性があるため、全身麻酔をかけて切除することもあります。

皮膚乳頭腫以外の原因が考えられるイボ

見た目だけで皮膚乳頭腫かどうかわからない場合、悪性の腫瘍が疑われる場合は、出来物に針を刺して細胞を取る「細胞診」の検査や全身麻酔をかけてしっかり切除することがあります。

特に

  • 急速に大きくなってきている
  • ドーム状の腫瘤で境界がはっきりしない
  • 皮膚の下までつながっている

などの特徴を持つイボは皮膚乳頭腫ではなく悪性腫瘍の可能性も高いので、細胞診や切除をして病理検査をしてもらった方がいいでしょう。

皮膚にできる悪性腫瘍は肥満細胞腫、扁平上皮癌、皮脂腺癌、繊維肉腫などがあり、命に関わることも珍しくはありません。

イボの原因を家庭で判断するのは危険

本当の意味(狭義)のイボは皮膚乳頭腫であり、基本的に犬の体にはほとんど害はありません。

ただし、皮膚にできる悪性腫瘍は非常に多く、本当の意味でのイボなのか、イボに見える悪性腫瘍なのかを家庭で判断するのは危険です。

肥満細胞腫や扁平上皮癌など皮膚にできる悪性腫瘍は、皮膚の盛り上がり(腫瘤)として見つかりますが、それをイボだと勘違いしている飼い主さんは多く、放置しておくと転移などを起こして手遅れになってしまうこともあります。

イボができたと思ったらまずは動物病院で診てもらうことが大切です。

また、動物病院で診てもらって、「イボだから大丈夫」とか逆に「悪性腫瘍だから切除するべき」などと言われ、本当にそうなのか悩まれる飼い主さんも多いと思います。

その場合は、他の動物病院でセカンドオピニオンを受けられることもおすすめです。

不安がある場合は1つの動物病院の見立てだけで決めてしまわないようにし、複数の動物病院で診察してもらうといいでしょう。

家庭でできること

イボは皮膚乳頭腫であれば特に害のあるものではありません。

ただし、掻いたり噛んだりすると出血や化膿をしてしまうことがあるので、その場合はエリザベスカラーなどをして噛まないようにしないといけないこともあります。

また、イボに気付かずひっかけて出血させてしまうということもあるので、シャンプーやブラッシングをするときには十分な注意が必要です。

あまりに何度も出血したりする場合には、例え悪性のものでなくても、切除するかどうかを動物病院で相談した方がいいかもしれませんね。

 

イボの予防


イボは基本的には予防が難しいですが、以下のような対策が有効である可能性があります。

若い犬のイボはつぶさない

若い犬の皮膚乳頭腫は、パピローマウイルスが原因で起こっていることが多いです。

このウイルスは命に関わるようなものではありませんが、感染が広がるとイボが多くなる可能性があります。

イヌパピローマウイルスがどのように体に入るのかは不明ですが、近い種類のヒトパピローマウイルスは皮膚の傷から入ると言われています。

そのため、イヌパピローマウイルスによるイボをつぶすと、そこからウイルスが出て他の皮膚にもイボができる可能性があります(ヒトにはうつりません)。

イボを見つけた場合はつぶさずに自然に退縮するのを待つようにしてください。

高齢の犬のイボにはサプリメントを

高齢の犬の皮膚乳頭腫は、免疫力の低下が原因で起こると言われています。つまり、免疫力を高めるようなサプリメントが効果がある可能性があります。

免疫力をあげるためには、乳酸菌など腸内環境を整えるサプリメントや、βグルカンなどが効果的だと言われています。

サプリメントは薬とは違い劇的な効果はないため、イボが消えることはないですが、増えて来るのを予防できる可能性はあります。

早期発見のためにできること

イボ(皮膚乳頭腫)自体は早期発見の重要性は低いですが、イボのようにできる皮膚の出来物は例え悪性のもの(がん)でも早期発見ができれば完治させることが可能です。

皮膚の出来物を早期発見するためには、毎日のスキンシップが大切です。

全身の皮膚が毛に覆われている犬では、毛に隠れて出来物がわからないことも多く、触って初めてわかるケースが非常に多いです。

そのため、普段からスキンシップの一環として体の隅々まで触る癖をつけておきましょう。

頭や背中は触ることが多くても、お腹や手足はあまり触らないことが多いため、その辺りの部位は意識して触るようにしましょう。

まとめ


皮膚のイボは良性のものがほとんどですので、イボができたからと言って不安になる必要はありません。

ただし、本当のイボなのか、イボのように見える皮膚の腫瘍なのかは、お家で判断することはなかなか難しいです。

イボのように見える出来物の中には放置しておくと危険なものもありますので、不安な気持ちを解消するためにも、イボを見つけたら一度動物病院で診察を受けるようにしてくださいね!