2017年11月22日更新

犬が泣いている理由は?涙を放おっておかないで!【獣医師が解説】

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私たち人が涙を流す場合、悲しい、悔しい、嬉しいなどの感情的なことが原因で泣いたり、目に物が入って痛い時などに涙が増えていることが多いですよね。

それでは犬ではどうでしょうか。愛犬の涙が多い、そんな様子を見かけたことはありませんか?

犬にも感情が無いわけではありませんが、犬の涙が増える場合、感情的なことが原因ではなく、病気が原因になっていることが多いものです。

今回は犬の流涙症についてです。

涙の産生機序から涙の原因や対策などを中心に、多くの方が悩む涙焼けにも触れながら、お話を進めていきたいと思います。

 

犬の目の仕組み


犬の目の構造や仕組みは私たち人とほとんど同じですが、犬には私たちにはない組織があります。

それが、第三眼瞼、瞬膜と言われるものです。

瞬膜は目頭の部分に位置して涙の分泌量の調整をするはたらきがあります。

通常の状態で瞬膜は見えませんが、チェリーアイと呼ばれる疾患では、この第三眼瞼が腫れて目頭の部分に出てきてしまいます。

第三眼瞼は涙の分泌に関して重要な役割がありますので、飛び出した瞬膜は切除するのではなく、整復します。

涙は、ムチン層、液体層、油層の三層構造をしています。

ムチンは眼の表面、角膜の最外層から突出した多糖類で、液体層が角膜に付着しやすくするはたらきがあります。涙の液体層は涙腺で作られます。

涙の98%は水分ですが、残りの2%にタンパク質が含まれます。

また、脂の層は瞼にあるマイボーム腺から分泌され、瞬きで眼全体に広がって液体層を覆います。

これにより、液体層の蒸発を防ぎ、涙を眼に保持するのに大きな役割を果たしています。

涙腺で作られた涙は眼を全体に広がり、鼻涙管から鼻に抜けます。

涙を流している時によくある原因


涙が目から溢れる原因はいろいろありますが、そのメカニズムは、涙の産生が増える、涙がうまく鼻に抜けていかない、涙が保持できない、の三種類に分かれます。

それぞれのメカニズムについて代表的な原因をご紹介します。

涙の産生が増える原因

まず、涙の産生が増える原因からです。

睫毛の異常がある

睫毛の生え方に異常がある、重なって生える、逆睫毛がある、などがあるとき、場合によっては目の表面に睫毛が接触してしまい、それが刺激となり涙が増えます。

目に痛みがある

目の表面の角膜に傷がある、緑内障、外傷などは目に痛みがでます。このような原因で目に痛みがある時にも涙の産生が増えます。

目に炎症がある

角膜炎、結膜炎、強膜炎など、眼に炎症がある時には、眼に違和感や痛みが伴う場合があり、涙が増えることがあります。

多くの場合、充血や眼脂が増えるなどの症状も伴います。

涙が鼻に抜けていかない原因

次に、涙が鼻に抜けていかない原因についてです。

涙囊炎がある

涙は目頭にある涙点から吸収され、涙囊という袋を経由して鼻涙管を通り鼻に抜けます。

この涙囊が感染により炎症を起こした状態が涙囊炎で、涙囊炎を起こすと鼻涙管の入り口が閉塞してしまい、涙が溢れて出てしまいます。

涙点が閉塞している

涙点は眼頭の内側、内眼角に位置しています。

下眼瞼が内側に向いていたり、炎症で腫れたりすることが原因で涙点からうまく流れていかないことがあります。

下眼瞼が内側に向く状態を内反と言いますが、眼瞼の内反は生まれつきのものであることが多いと言われています。

眼瞼炎がある場合、痒みを伴うことが多く、引っ掻くことで二次的に眼に傷をつけてしまうことがあるので注意が必要です。

鼻涙管が狭くなったり、閉塞したりしている

鼻涙管に汚れや眼脂などが詰まる、鼻炎などが原因で狭くなる場合があります。

涙が保持できない原因

最後に、涙が保持できない原因についてです。

マイボーム腺からの分泌物が目表面に広がらない

マイボーム腺は眼瞼にある脂を分泌する腺です。

この脂性の分泌物が瞬きをすると眼全体に広がり、眼の表面の涙の層を覆い、涙の液体層がある一定の厚さを保てます。

しかし、分泌腺が詰まるなどが原因で、脂分が分泌されず、油膜が形成されないと、液体層が目から溢れてしまいます。

 

涙が多い犬種

眼の露出が多い短頭種

  • シー・ズー
  • パグ
  • ペキニーズ
  • フレンチ・ブルドッグ
  • ボストン・テリア
  • チワワ

など

涙が多くなりやすいです。

また、被毛が伸びてトリミングが必要な犬種

  • トイ・プードル
  • マルチーズ
  • ポメラニアン
  • ヨークシャー・テリア

など

眼の周りの被毛が眼に入りやすく、眼の表面を刺激するため、涙の量が増えることが多いです。

涙を流してる時の対処方法

動物病院へかかる

涙がいつもより多く感じる時、病気が背後に隠れている可能性もありますので、動物病院で診察をしてもらうと安心です。

では、診察の際に必要な情報をいくつか挙げておきます。

いつから涙が気になるのか

急性か慢性かによっても原因が異なります。

もし、慢性化(症状が2週間以上続く)している場合には、良化しているのか、変化がないのか、悪化しているのか、についても覚えていてもらうと参考になることがあります。

きっかけになった出来事があるか

トリミングに出した、ドッグランへ行ったなど、普段と異なる出来事で眼を傷めてしまうこともあります。

その他、散歩コースの変更、自宅以外のお宅へお邪魔した、などの環境の変化や、季節なども参考になります。

涙以外の症状の有無

目の症状

  • 目脂の有無
  • 充血の有無
  • 痛みのサイン(痛い方の眼をつぶっている、あまり開かないため左右の眼の大きさが違う)の有無

など

眼以外の体の部位に症状

  • 皮膚も痒くなっている
  • 食欲が落ちている

など

知っておくと説明しやすい涙の種類

細菌の感染がある場合には、膿性の目脂となります。膿性の目脂は、黄色〜黄緑色をしています。

寝起きなどにみられるグレー〜黒色の目脂は生理的なものと考えて大丈夫です。

涙を流している時の対処方法


急に涙の量が増え、充血や痛みが伴う場合には、眼の傷や緑内障などが原因として考えられます。

特に角膜の傷は気にしてさらに傷をつけてしまうと最悪な場合、失明の恐れもあります。エリザベスカラーがあれば装着して、安静にさせましょう。

角膜の傷以外でも、眼を気にする様子が見られれば、眼に新たに傷を作る恐れもありますので、エリザベスカラーの装着が望ましいですね。

慢性的に涙の量が多く、涙やけを起こしている犬を飼われている方が中にはおられると思いますが、その場合には、涙で濡れた部分をできればこまめに拭き取り、清潔に保ってあげるようにしてください。

どの場合にも控えていただきたいのが、獣医師の指示を仰がずに点眼薬を使うことです。市販の人体薬は絶対に使わないでください。

また、たとえ動物薬でも使用するのは控えておきましょう。

放置してしまったら

特に慢性的に涙が多い時には、もう少し様子を見てみよう、などと思いがちです。

しかし、原因によっては、視野や視覚にダメージを与えてしまうことも考えないといけません。

たとえば、逆まつげを放置してしまえば、慢性の角膜炎に移行してしまい、角膜の変性により視野が狭小化してしまう可能性もあるということです。

急性の場合には、何らかの疾患や外傷が原因となっていることが考えられ、最悪の場合、失明をしたり、眼を摘出しなければならなくなることもあります。

涙やけ

涙やけの原因

涙の構造と成分は先に述べましたが、この液体層に含まれるタンパク質のことを少し詳しくお話しします。

水分以外の成分、タンパク質のなかには、ラクトフェリンやライソゾーム、免疫グロブリンなどが含まれ、細菌増殖や感染を防ぐはたらきがあります。

この中の、ラクトフェリンは乳汁や唾液などの分泌液にも含まれる、鉄結合性の糖化タンパク質です。

涙がこぼれると、被毛や皮膚に存在する常在菌や紫外線に反応する他、ラクトフェリンが酸化し、独特の赤い色素となり被毛を染めてしまうのです。

鉄の酸化とはつまり、錆びです。原因の一つに「錆び」が挙げられるのです。被毛の色が変色し、元どおりにならないのも納得ですね。

動物病院での涙やけの対処方法

動物病院で、涙やけの相談があった場合、さまざまな疾患を除外します。疾患が原因となった流涙症でなければ、涙やけだけの対応になります。

とはいうものの、涙やけを起こしている部位の皮膚が炎症を起こしていなければ、投薬などを行わないことが多いです。皮膚炎があれば、皮膚の治療を行います。

自宅での対処方法

涙を流してしまう原因が物理的なものであれば、ご自宅でのケアが大切なものになります。

涙で濡れた部分の被毛や皮膚は優しく拭いてあげてください。

濡れたままですと、細菌が繁殖してしまい、変色や臭いの原因となります。また、皮膚炎を起こしてしまう可能性があります。

細菌、と聞いて消毒しなくてもよいの?と思われる方がおられるかもしれませんが、眼に近い部分ですわ消毒薬は使用しないでください。

蒸しタオルや綿花で拭いていただければ十分です。

環境改善方法

原因別改善方法

原因1 : 睫毛の異常がある

対処方法 : 異常な生え方をしている睫毛を抜くなど、処置ができるようであれば定期的に動物病院で処置をしてもらいましょう。

原因2 : 眼の周りの被毛が眼に入っている

対処方法 : 定期的にトリミングを行う、または、眼の周りだけ短めにカットするなどの対策をする

原因3 : 布団の中などに潜り込むクセがある

対処方法 : 布団やコタツなどに潜り込むクセがある犬では細かな埃などが眼に入り、涙の原因となることもあります。また、角膜を傷つけてしまうこともありますので、できれば潜らせないようにしたいものです。

原因4 : 散歩コースが埃っぽい、散歩中に草むらに入る

対処方法 : 犬は体高が低く、私たちの足元を歩きます。そのため、思った以上に砂埃の影響を受けるものです。交通量の多い道路を通ったり、草むらに元気よく入って行ったりすると、眼に異物が入ったり、草の先が刺さったりして眼を傷つけてしまうこともありますので、気をつけてあげましょう。

まとめ

いかがでしたか?

涙も奥が深いものですね。

愛犬の流涙が気になっている方や、涙やけの対策をしたい方、愛犬の涙の原因は何なのか参考になりましたか?

動物病院へ行かないと!と思われた方もおられるかもしれません。

流涙の原因はいろいろありますが、疾患が原因となっていないことも多いものです。

しかし、万が一、病気が隠れていた場合に手遅れにならないよう、獣医師の診察を受けることをお勧めしたいです。

そして、急に症状が出た時こそ心配です。慌てて自己判断で点眼薬を使用することだけは避けていただき、主治医に相談しましょう。