2017年12月8日更新

愛犬の早食い。その危険性と早食い防止の対策とは?【獣医師が解説】

後藤大介



獣医師

 

犬は人のように食事を楽しむという習慣がないため、早食いになりがちです。

食欲旺盛の犬だと、ご飯の時間が待ちきれず、出てきた瞬間にあっという間に食べてしまうという子も少なくないでしょう。

でも早食いは人と同様、犬にもあまり良くはないのです。

今回は犬が早食いをしてしまう理由とそのデメリット、さらには早食いの防止策まで解説いたします。

愛犬の早食いが心配な人はぜひ参考にしてみてくださいね。

 

犬はなぜ早食いになるのか?

ほとんどの犬は、出てきてから2,3分でフードを平らげてしまいます。

犬がそれほど早食いになるのには以下のような理由があります。

犬は味音痴?

犬は人に比べ味を感じる能力が低いと考えられています。

味を感じる舌の組織「味蕾」の数は、ヒトの5分の1以下であると言われ、犬は塩味などもあまり強く感じないと言われています。

ヒトは食事を楽しむという一面がありますが、犬ではそういった意味合いはなく、食餌はあくまで栄養補給になります。

食餌を楽しむ必要のない犬は、自然と早食いになってしまうのです。

他の犬との競争

群れで生活をする犬にとって、できるだけ早く食べることは、限られた餌の中で自分がたくさん栄養を取るために必要な能力です。

ゆっくり食べていると自分の分のエサまで他の犬にとられてしまう可能性すらあります。

さらに、エサを食べているときは無防備になりやすいので、できるだけ早く食べきる必要があります。

単独飼育の犬でもその本能が残っていて早食いになってしまうことがありますが、多頭飼いの犬では同居の犬を意識して、自然と食べる速度が速くなります。

噛む必要がない

自然界でオオカミが食べる肉は、皮膚が付いている生の肉で、骨とくっついているため丸呑みすることはできません。

皮や骨から肉を噛み切り、奥歯で砕いて喉を通るサイズにして飲み込む必要がありました。

一方で、小さなドッグフードは丸呑みしても喉や食道を十分通り抜けられる大きさですので、犬はあまり噛む動作をしません。

噛む必要がないということも、犬がドッグフードを早食いする一つの原因になっています。

早食いのデメリット

自然界では、自分の食餌量を確保するなど、早食いのメリットはありますが、ペットとして飼われている犬では早食いのメリットはありません。

むしろ早食いにはいくつかのデメリットがあります。

消化に悪い

一気食いをする犬は、ほとんど噛まずに飲み込んでしまっているという子が少なくありません。

犬の唾液の中には消化酵素は含まれていないと言われていますが、噛まずに飲み込むことで、唾液分泌がほとんどなく、硬い粒のまま胃の中にドッグフードが流れ込むため、消化が悪くなります。

満腹感を感じにくく、食べ過ぎにつながる

早食いで一気に胃の中にフードを入れてしまう犬では、胃が膨ら無のに時間がかかるため、満腹感を感じるのが遅くなり、大量に食べすぎてしまうことがあります。

肥満気味の子では一気食いを防ぐことで、食べすぎの防止に役立つことがあります。

胃拡張・胃捻転のリスク

一気に大量に食べると、一気に入ってきたフードが胃の中で膨らみ、胃が拡張してしまいます。

胃拡張を起こすと、胃の内容がなかなか腸の方に流れて行かずに消化不良を起こしたり、嘔吐の原因となります。

また、大型犬では、胃拡張から死亡率の非常に高い胃捻転を引き起こしてしまうリスクもあります。

歯石が付きやすくなる

唾液は消化のためだけでなく、歯石の予防という役割も担っています。

唾液が多く分泌されることで、歯の表面の汚れを物理的に流してくれるだけでなく、唾液に含まれるリゾチームやラクトフェリンなどの抗菌作用のある物質が、歯周病菌の繁殖を防いでくれます。

早食いを防止することで歯石や歯周病などの口の中の病気を防ぎ、健康な歯を保つこともできるのです。

 

早食いを防ぐ方法

早食いにはさまざまなデメリットがあります。具体的に早食いを防ぐ方法を考えてみましょう。

食餌の回数を増やす

一般的に、1日のフードの量が同じであれば、回数を増やす方が空腹感が出にくいと言われています。

1回あたりのフード量を減らして、1日3~4回にフードの回数を増やしてあげると早食いが防げる可能性があります。

お仕事をしていてなかなかフードの回数を増やすことができない場合でも、朝、帰ってきてすぐ、夜寝る前など3回に分けて与えてもらうといいでしょう。

フードをふやかす

ドライフードは胃の中で水分を含んで膨らむため、早食いをしている間はほとんど満腹感は感じません。

ヒトのようにもともと水分の多い食事であったり、しっかり噛んで水分を含んだ食物を胃の中に流し込む動物と違い、ドライのドッグフードを早食いする犬では、満腹感を感じるのに時間がかかります。

胃の中で胃液によってドライフードが膨らむことで、犬は初めて満腹感を得ることができます。

そのため、最初からドライフードをふやかしてフードを膨張させておいてあげると、食べてすぐに満腹感を得られ、食べすぎを防げることが多いです。

ふやかしフードを与えることは、水分の摂取量を増やして腎臓の負担を減らしたり、尿路結石のリスクを減らすなど、早食い防止以外にもメリットもあるため、非常におすすめです。

早食い防止グッズを利用

早食い防止のためには、早食い防止に使えるグッズを利用するのもいいでしょう。

コングというおもちゃは、フードを中に入れて置き、転がすことで少しずつフードが出てきて食べられるように工夫されたものです。

ペットボトルに小さな穴をあけて、転がしたらフードが出て来るようなおもちゃを自作してもらうのもいいでしょう(噛む力の強い子では、ペットボトルの破片を食べてしまわないかどうか慎重に見てあげてください)。

これらのグッズは、早食い防止になるだけでなく、フードを自分で工夫して食べる知育玩具の側面もあります。

頭を使うことで日ごろの退屈を減らしてあげたり、本能を刺激してストレスを解消できるなどのメリットもあります。

フードハントをさせる

野生の狼は、起きている時間の大半を獲物探しに費やしていると言われています。

一方、黙っていてもフードが出て来る家庭犬では、その時間が全く必要ないため、運動の必要性が少なく時間も持て余してしまいます。

獲物探しの代わりにフード探しをさせることで、早食いの防止やストレス発散につなげてあげることができます。

フードハントをさせるためには、ドッグフードを部屋の何カ所かに隠して、探し出したら食べられるようにしてあげましょう。

ただし、フードハントはごみあさりにつながってしまう可能性があります。

フードハントを始める合図を決めておいたり、ごみあさりのリスクない部屋で行うようにしてくださいね。

多頭飼いの場合は専用の場所を確保

早食いを悪化させる原因の一つが、他の犬の存在です。他の犬がいると、その子に取られまいと急いで食べる癖が付いてしまいます。

そのため、2頭以上で飼っている多頭飼いの家では、食べるときは別々の場所で食べさせてあげるといいでしょう。

できれば、部屋を分けたり、クレートやサークルに入れるなど、他の犬が食べ終わっても自分のエサは安全だと感じられる場所で食べさせてあげてください。

まとめ

犬はもともと早食いの性質のある動物であり、早食いをしてしまうのはある程度は仕方がありません。

ただし、ペットとして飼われている犬には早食いをするメリットはなく、デメリットが問題になることもあります。

早食い防止のためには、フード自体の工夫や、食べさせ方や環境の変化など、取れる対策はいくつかあります。

愛犬に不必要な早食いをさせないよう、お家でできる工夫をしてあげてくださいね。